907話 掴みたい未来のために【第一部完結】
ついに、大学が始まる。
授業も始まって、本格的に、大学後期のスタートだ。
化粧もしっかりして、髪型も整える。
大学入学式ぶりの気合の入れようである。
忘れ物もないはず。
何度も確認したから、大丈夫。
大学がスタートするまでに、いろいろあったけど、アルバートさんやネロのメッセージを見て、元気を貰った。
メッセージを返したら、また朝に新しく、連絡が来ていた。
アルバートさんの気遣いだろうけど、連絡は決まった時間に送るという事らしい。
その方が、連絡が来るか来ないか、ソワソワする必要もなくて、こっちに集中できるし、連絡を取れることで、私の気持ちも沈まない。
こっちに来るときは、皆との繋がりを切って、自分の事に集中するつもりだったけど…
いやぁ、やっぱり無理だわ。
好きな物は好きだし、寂しいと感じる時は、やっぱり寂しい。
無理に、企画宣伝課の皆の事を絶つ方が体に悪いし、精神的にも良くないということだ。
無理は良くないし、ため込むのも良くない。
こっちに来て、大学が始まる前に、コスモスで宣言したことから、だいぶ逸れてしまったけれど、ここは、アルバートさん達の好意に、甘えさせてもらおう。
実際に、体験してみないと分からないことだった訳よ。
会長からも連絡が来ていた。
先輩と会ったことを心配してくれたみたいだけど、今はもう、心も晴れやかである。
これもすべて、企画宣伝課メッセージのおかげだな。
鏡の前にもう一度立って、自分の姿を確認する。
「髪型よし、メイクよし、服装よし。」
髪型もメイクも服装もしっかり整えて、戦闘準備オッケイ。
朝、家を出る前に、鏡を見て、今日も可愛いと自分に言うと良いんだっけ?
…大学に遊びに行くわけではないけれど。
しっかり、自分を守るためのオシャレはしていかないと。
「よし。」
戸締り確認をして、家を出る。
はぁ、今日もいい天気。
私の久しぶりの登校を祝福している様だ。
学校に向かう電車も、遅延なしで時間ぴったり。
しかも、空いているため、椅子に座れちゃうラッキー。
大学に着くまで、混むこともなく、優雅な登校。
そのまま、教室へと向かい、大教室の真ん中辺りの席を確保する。
「よし。」
授業が始まるまで、少し時間があるかな。
背筋を伸ばして、授業が始まるのを待つ。
…なんて。
体の力を抜き、机の上に、体を倒して、うずくまる。
きっちり、かっちり、しっかりは、あまりにも私のキャラじゃないな。
大学に来た段階で、どっと疲れた。
久しぶりの学校でテンションがおかしくなっているんだろう。
やっぱり自分のペースで頑張ろう。
頑張りすぎは良くないわ。
意識しすぎも良くないよ。
うんうん。
どっちにしろ、焦って、いろいろやっても、コスモスに帰れるのは、二年半後だし、早く戻れるわけでもない。
二年半後に戻る事は、絶対に守るとして、二年半をどうやって使うかって事でしょ。
あれもこれもやりたいだと、どれも中途半端になってしまう。
どうやって自分の二年半を使うか、考えていくのが重要だ。
ここで一つ深呼吸。
ちょっと落ち着いただけで、何かしなきゃいけないという気持ちから、何かしたいという気持ちに変わる。
そう思うだけで、今後が楽しくなってくる。
そして、なんか、何でもできそうな気持になってくるんだ。
携帯を開き、アルバートさんとネロのメッセージを見る。
きつくなったら、帰って来てくれていいんだよ。
応援して貰えるというのは、本当に心強い事だ。
アルバートさん、お父さんみたい。
第二のお父さんだな。
そして、ネロ。
「待っている…だって。」
待っていて。
ちゃんと成長して、帰るから。
そうしたら、もっといろんな世界を一緒に周ろう。
そして、世界を周って、いろんなことを一緒に体験しよう。
もっと君と、いろんなことを共有できるようになりたい。
もっともっと、楽しいことをしよう。
スルリと鼻を撫でる。
もう跡は、消えているけれど、約束の証として噛まれたことは、忘れない。
大教室の正面の入り口が開き、教授が入ってくる。
ネロ、大好きだよ。
この想いが、いつ溢れてしまうか分からないけれど。
いつか君に思いを伝える日が来るだろうか。
なんてね。
さて、掴みたい未来のために。
いっちょ、張り切っていこうか。
私は携帯の画面を閉じて、カバンの中にしまい、前を見据えた。
【第一部 END】
読んでいただき、ありがとうございます!
これにて、【第一部】完結になります。
番外編は、不定期になりますが、投稿していこうと思いますので、お付き合いいただければと思います。
【第二部】は、企画進行中です。
もうしばらく、お待ち下さい。
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