903話 新しい恋が人を変える?
会長との話を終え、会長と一緒に学食を食べる事になった。
相変わらずボリューミーな事。
私が頼んだものは、チキン南蛮。
ここの学食の、チキン南蛮のタレとタルタルソースが、めちゃくちゃうまいです。
「あの、奢って貰ってもいいんですか?」
「後輩なんだから、それくらい良いんじゃないかな?」
「私、今日、後輩を卒業したんですけど。」
今日、サークルをやめると言ったばかりでは?
「はぁ。やめると言っても、サークルの後輩には変わりないだろ?それとも、なにか?もう、後輩ではないのか?」
「先輩がそう言ってくれるなら、嬉しいですね。」
この先輩は、モテるんだろうなぁ。
「じゃあ、お言葉に甘えて、いただきます。」
「どうぞ、どうぞ。」
ナイフとフォークを使い、チキンを一口サイズに切っていく。
タルタルソースと、甘酸っぱいタレを絡めて、口の中に運んだ。
サクッと噛んだ後に、ジュワっと広がるお肉の感覚。
そして、甘酸っぱいタレが、タルタルソースをさっぱりとさせる。
「はぁ…久しぶりの学食はいいですね。」
「そうだろ?」
先輩の自信ありげな表情は、よく分からないけれど、でもうまいです。
感謝します。
自分で食べても美味しいけど、人に奢ってもらう食事もやっぱり悪くない。
「あのさぁ。聞きたかったことがあるんだけど。」
聞きたかったこと?
先ほどまで、結構色々話したと思うけど、あれとは、別の話題?
「新しい恋でもした?」
「んぐっ。ごほっ。」
突然なんだ?
私は、吹き出しそうになったのを手で押さえ、グラスに入ったコップを飲んだ。
「あの、食べている最中にそういう話は、どうかと。」
「こういう無防備な時じゃないと、有間は、話してくれないだろう?」
「セクハラで訴えますか?」
「いやいや。いい顔をしていたから、もしかしたらと思って、ついな。訴えるのは勘弁してくれ。」
いや、だからって、唐突に聞かないで欲しい。
「なんですか?会長。私と恋愛トークでもするつもりですか?」
「ほら、それ。」
この学食は、賄賂かい。
だから、あんな気前よく、奢ってくれた訳ね。
「なぜ、そんなことに興味が?」
「いや、あれだけ、サークルまっしぐら、あいつまっしぐらだったのが、しばらく会わない間に、人が変わったような雰囲気になって帰って来たからさぁ。そりゃ、気になるよね。」
「なんで、さっき聞かなかったんです?」
「いや、さっきは、真面目な話だろう?今は、私的な話だから。」
なるほどねぇ。
「誰かに頼まれて、探りを…とかじゃないですよね?」
「違う、違う。単純な好奇心だよ。ほら、俺、心理学科だから。それに、有間が大学に復帰することも、誰にも言っていないから、探りようがないだろ?有間が連絡を入れていなければ、復帰することも知られていないよ。」
それもそうか。
会長からも、サークルに復帰するのか、どうか、聞かれていたんだもんね。
それで私は、話す場所に大学を指定しただけ。
大学を指定した時点で、復帰の事は、分かるだろうけど、確定はしていないし。
そもそも、私の事を聞いて、誰が得するんだという所だな。
「楽しそうに、こちらを見ないで貰っても?」
「恋愛相談に乗っていた身としては、次の恋愛がどう変えたのか…も気になる所なんだよね。」
人の事だと思って、この人楽しんでいるなぁ。
そうだな。
恋愛相談は、ともかくとして、恋愛トークなら、私だけじゃ、不公平だろう。
「じゃあ、もちろん。先輩も教えてくれるんですよね。私も知っていますよ。先輩がひそかに片思いをしている、同期の先輩の事。」
「なっ…なんで知っているのかな?」
「見ていれば何となく。そうなのかなぁって思いましたけど。」
会長は皆に優しいけど、明らかに、高校生男子のような、チラッとしては、目を逸らし、というのを目撃したことがある。
「もちろん話してくれますよね?」
「…いや。ほら、早く食べないと、冷めてしまうよ。」
ふふふ。
勝ちました。
何とか、恋愛トークを回避して、ご飯を食べる事を再開する。
「あれ、会長?それから、千紘…」
なぜ、ここに?
「いや、なんで?」
会長がよんだわけでもなさそう。
じゃあ、たまたまって事か。
「お久しぶりですね、先輩。」
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