902話 サクッと説明させてもらいます
「書けました。」
先輩は書類に目を通し、それをカバンにしまう。
「オッケイかな。きっちり受け取りました。」
「ありがとうございます。」
「それで、サークルには、もう顔を出さないのか?」
「あの、私、今やめませんでしたっけ?」
やめた人間が顔を出せる訳ないだろう。
「有間の事を心配している人たちは、いると思うけどなぁ。」
「近しい人たちには、きちんと自分から説明するつもりです。」
「そうか。それがいいかもな。」
全員が、今回の話題に興味がある訳でもないし。
わざわざ、私が謝罪と説明をしに行っても、また、被害を大きくしてしまうだけだから。
分かってほしい人たちに、ちゃんと分かってもらえるように。
「それでさ。」
「はい?」
なんだ?
ちょっと言い出しにくそうに。
「あいつには、会うのか?」
「あぁー。」
先輩A?
「いや、別にどっちでも、いいかなと。私とあの人って、もう終わっているじゃないですか。それに、次の人がいるでしょ?いまさら、私が会って言うことはないというか。」
だからと言って、別に会いたくないという訳でもない。
まじで、どっちでもいい。
けど、会って話すこともないだろうから、それならば、会わなくてもいいかな…くらいの気持ちですね。
「もし、あいつが会いたがっていたら?」
ん?
会いたがっている?
なぜ?
あー…
以前、地球に帰って来て、イケブクロにネロと遊びに行った時に、ばったり会った、桜と夏芽が何か言っていたっけ?
「なにか、ご迷惑をおかけしていますか?」
「いや、有間がサークルに来なくなって、しばらくは、平気だったんだけど、しばらくしておかしくなり始めて、今は、相変わらずだけど、落ち着いているかな。」
「じゃあ、会いたがっている訳ではないですよね?」
今、落ち着いているなら、別に何でもなくない?
「有間が家の用事でしばらく休むという話を、な?だから、有間が大学に復帰したけど、サークルをやめるとなったら、もしかしたら何かあるかもしれないと思ってさ。」
「えぇ…?」
いや、そうは言っても、私、きれいさっぱり振られていますけど?
「いや、今更私にできることはないんじゃ…振られていますし。」
「有間が振られたのか?」
「はい。私がいろいろ、もろもろの説明を求めたら、いろいろ、もろもろを問い詰められるのが嫌だ、疲れたとなりまして。じゃあ、どうする?別れよう…みたいな流れで、別れました。」
私も、疲れて、正直限界だったので、別れを切り出されたことに、ほっとした部分はあったけれど。
「そうだったのか。そうか。」
「あの、なにか?」
「いや、あいつか振られたのかと思って。」
「いえ、私が振られました。」
「え?あぁ、そうなんだ。」
そうですね。
私がいない間に、一体何が合ったんだ?
先輩Aが荒れているという話を聞いたが、それは、本当だったのかな。
「なんか、すみません。」
「いや、まぁ、うん。」
「なにか?」
「なんで振られたんだろうと。」
いや、私に聞くな?
おそらく、振られた本人に聞いてはいけない事でしょ。
まぁ、別にいいけどね?
「いや、だから、私がしつこく聞いた事に、疲れちゃったんだと思います。それに、サークル内で、ごたっとしていた事は、あの人も気づいていたみたいですし、面倒事を避けたかったんじゃないですかね?私と別れれば、それで解決ですし。」
ただ、先輩の誤算は、そのあと私と連絡が取れなくなり、長期間、姿を見せなくなったところにあるじゃないかな。
「まぁ、別れてすぐ、連絡が取れなくなったので、おそらく、あの人は怖かったんでしょうね。」
「まぁ、その気持ちは分かる。」
「ですよね。私も分かります。」
じゃあ、なぜしたとなるけど、異世界に飛んでいて、連絡が取れる状況じゃなかったんで。
でも、その日のうちに、両親と一度だけ連絡が取れたし、その連絡で、両親が動いてくれたことは大きいな。
そう思うと、連絡が途切れたのだって、おそらく一日くらいだよね?
サークルにしばらく行くことが出来ません…という連絡をしたのが、もう少し遅かったとしても、ちゃんと連絡がいっているという事は、そんなに日にちが空いた訳でもないだろう。
一日、連絡がつかないことくらい、普通にあるでしょ。
「ただ、振った相手に、何事もなかったかのように連絡を入れる、あいつもどうかと思う。」
それは、本当にそう。
なんて、連絡が来ていたか分からないけれど。
というか、連絡なんて来ていたかな?
確認した時、分からなかったけど。
あまりにも多くの連絡が来ていたから、流れてしまっていたのかなぁ。
「あいつに、有間の事を聞かれたら、普通に答えていいんだな?」
「聞かれることなんて、ありますかね?」
「もし聞かれたら。」
「うーん。もしあったなら、普通に答えて貰って大丈夫ですよ。」
そんな機会があるのか…?
正直、謎は深まるけれど、それなら、それで別に言って貰っても構わないかなと、思った。
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!




