表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
934/953

901話 やりたいことがあるんです


「私が長期で休んでいた理由は、仕事の手伝いをしていたからなんです。」

「仕事?家庭の事情じゃないの?」

「家庭の事情による、仕事の手伝いです。」


…無理があるかな?

でも、仕事をしていたのは、本当だから。

それから、この後、話を進めるために、仕事をしていた事は、絶対に伝えないといけない。


「なるほど。事情があるのかな?わかった。それで?」


違和感満載の話の導入には、何とか納得してくれたみたいだ。

本当に、線引きの上手い会長だ。

これを会長に言うのは、忍びないんだけど。


「その仕事の最中にいろんな人に出会いました。」

「出会い?」

「はい。それから、いろんな場所に行きました。」

「場所?手伝いのために、いろんな場所に…」


異世界でいろんな人に出会い、いろんな場所に行った。


「私が大学に復帰したのは、その仕事に戻るためです。」

「えっと?」

「大学を卒業したら、また、その職場で働かせてもらうつもりでいるんです。」

「なるほど。バイトから正社員という感じかな?」


職員から、異世界留学でお休みを貰い、職員に戻らせてもらうんだけど。

分かりやすいのは、そんな感じだよね。


「はい。ただ、職場の中で、私がまだまだ未熟だという事が分かりました。なので、私は大学に戻って来たんです。」


心残りの清算と、自分への成長。

心残りの清算は、大学が始まったら、すぐ行うつもりでいた。

だから、大学のすべてを使って、自分の成長に投資するつもりなのだ。


「そして、やらなきゃいけないことが多くあることが分かりました。」


人とのコミュニケーションのために、サークル活動を続けることも考えたけど、日々入れ替わるお客さんや、旅行先の人達と関わるのに、サークル内の狭い人間関係では、ダメだと感じた。

だって、一緒に居るメンバーは安心できるけど、安心できるメンバーだけではダメだと思って、わざわざこっちに帰って来たのだ。

固定された人間関係だけでは、ダメだろう。


「例えば?」

「資格を取ったり、取っていない授業も聞くだけなら受けられるので、それを聞きに行ったり、あとは、就職活動ですね。」

「就職する場所は、決めているのに?」

「はい。いち早く社会にもまれるために、インターン制度を使おうかと。」


二年生から参加できるインターンがあるみたいだし、そういう所を活用しつつ、初対面の人たちとの関わり方を学ぶ。

そして、お客さんの捌き方を学ぶ。

バイトも新しい所を探すつもりだし、正直、いくら時間があっても足りないと思っている。


「私は、時間が足りないくらいです。」

「そこにサークル活動へ割く時間はない…という事かな?」


ハッキリ聞いてくるなぁ。

まぁ、遠回しに言い続けても、この人なら分かるだろう。


「はい。もう決めたことなので。」

「サークル内の人間関係に悩んでやめる訳ではないんだな?」


もう、悩んではいない。

そこにいて、辛いとかもない。

ただ、サークルよりも、もっとやりたいことが出来ただけ。


「はい。」

「そうか。分かったよ。じゃあ、これ。」


会長から手渡されたのは、サークルの退会届。


「あれ?もしかして、今日、私が辞めることを話すって、分かっていたんですか?」

「いや?ちゃんと、休会届も持って来ているけど?」


そういって、カバンからもう一枚の紙を出す。


「それから、この二枚を出さなくてもいいように、とも願ってはいた。」

「あははは…」


期待を裏切る形になり、すみません。


「はぁ…貴重な戦力だったのに。」

「結局のところ、二年生になって、浮かれていたので、あまりお手伝いできていた記憶はないんですけど。」

「それでも、あれだけ、サークルに来ていたんだから、今後の中心になると思うだろ?」


あぁー。

役職持ち?

絶対に嫌なのだが?


「私には、そういうのは向きません。それに、サークル内の空気を悪くしていた人間に、そういうことを任せようとしないでください。」

「いやいや。向いていたし、当初は、興味もあっただろ?先輩たちにベッタリして、役職持ちの仕事をしていたじゃないか。」

「それは、あくまで手伝いだからいいんですって。」


自分のやるべきことになったら、プレッシャーで、気持ち悪くなり、吐いちゃいそう。

それに、好きだったから、サークル活動に夢中になっていただけで、なにかを頼まれてやっていたわけでもない。

好きじゃなかったら、出来ないって。

私は、書類に必要事項を書きながらそう思った。

読んでいただき、ありがとうございます!


よろしければ、

評価、ブックマーク、感想等いただけると

嬉しいです!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ