900話 お久しぶりです、会長
「会長、お久しぶりです。遅くなってしまいすみません。」
私が大学の食堂に来ると、会長は既に来ていた。
久しぶりの大学に、久しぶりの食堂。
そして、久しぶりの知り合いだ。
「あぁ、久しぶりだね。まだ時間よりも早いよ。」
会長は、半そでジーパンというシンプルな服装だったが、細身のため、スラっとしており、よく似合っている。
顔に関しては、顔面SSRを見過ぎてしまったため、何と言っていいか分からないけれど、爽やかな部類だと思う。
そして、入学したて、サークル入りたての時の私は、先輩補正も相まって、とてもかっこよく見えていました。
髪の毛の色は黒で、目の色も黒。
しっかり、きっちり、かっちりした、先輩だ。
かといって、真面目過ぎる訳もなく、面白い先輩で、先輩として後輩に大人気の先輩だったと思う。
私の相談も、よく乗ってくれた先輩だった。
「元気そうだな。」
「はい、元気ですよ。」
「そうか。」
そりゃそうだ。
別れたとたんに、急に学校にもサークルにも来なくなるなんて、不穏の塊だろ。
微妙な顔をされて当然だ。
「たくさん相談にものってもらったにも関わらず、ご迷惑をおかけしました。すぐに連絡できなかったこと、申し訳なく思っています。」
私の異世界転生中の音信不通は、家庭の事情という事で、親の方から連絡をしたらしいが、それもそれで、どうなのだ?という感じだよね。
「そのさ、家庭の事情という事だったけど、本当は違うとかない?」
「あー…いえ、家庭の事情でした。なにより、大学も三カ月くらい、休む羽目になりましたし。タイミングが重なりすぎて、より迷惑をかけてしまいましたよね。」
「いや、迷惑というか、心配はした。俺は、有間から話を聞いていたし、それにあいつの事も知っているから。」
そうなのだ。
この会長、先輩Aとも仲が良く、さらに私の相談にも乗ってくれていたため、私と先輩Aの間で板挟みになっていた、とても申し訳ないことをした先輩の一人なのである。
「いえ、関係はないです。それに、別れた時点で、終わった話ですし。」
関係なくはないし、異世界に行っても、ネロにハッキリと言われるまで、心のどこかでズルズルと引きずっていたみたいですが…
今日、私がここに来たのは、既に終わった話をしに来たのではない。
「あの、サークル内は、どうなりましたか?」
私がサークルにおいて、気になっていた事の一つ。
サークルの空気。
恋愛のごたごたに巻き込まれた、組織活動は、どうしても、空気が悪くなる。
まさにそれだったから、どうなったのだろうと。
これでも、サークルは、私のすべてだったから、大切な居場所だったのだ。
「あー…うん。あいつは、相変わらずだし、あの子も相変わらずだけど、まぁまぁ、落ち着いたんじゃないかな。」
相変わらずなら、落ち着いていないだろうけど。
あいつが、先輩Aとして、相変わらずのあの子は、後輩Aだろうな。
じゃあ、サークル内が落ち着いた理由は、表向きで揉めていた私がいなくなった事と、元カノ先輩が落ち着いたからだろうか?
「それで、なんだけど、サークル活動は、今後どうする?」
来た。
「そうですね。サークル活動は、止めようと思っています。」
「えぇ?やめるの?」
「はい。やめます。」
「ちなみに、理由は?あいつかな?」
いや、どんだけ、私の生活があの人中心に回っていると思われているんだ?
まぁ、異世界に行く前までの、恋愛に振り回されっぱなしの私を見ていれば、そういう反応にもなるのか。
ただ、私の中に、いまだあの人がいると思われているのも、どうかと思うので、ここではっきりさせよう。
「いえ、違いますよ。私とあの人のことは、もう終わった話です。それは目に見えたものだけではなくて、心理的にも、終わった事です。先輩たちに散々迷惑をかけて、勝手に終わらせるのもどうかと思いますが、それが本当です。」
「じゃあ、もう気にしていないと?」
「はい。」
いまなら、はっきり言える。
申し訳ないが、私の頭の中は、もうすでに別の事でいっぱいだったりするので。
「じゃあ、なんで?しばらく休むという連絡はあった。大学も同時で休んでいただろう?でも、大学も復帰するんだよね?なのに、サークルはやめるのか?」
この人は、本当にいい先輩だと思う。
私をまだ、サークルに置いてくれようとするんだから。
私が戻ったら、もしかしたら、また面倒なことになるかもしれないのに。
こういう先輩と、もっと仲良くなれればよかったなぁ…なんて思ってしまったり。
全て本当の事は言えないけれど、でも、ちゃんと伝えたいと思った。
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