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89話 語り部、それは「契約無効」です


私は、山になった書類を無事片づけることができ、一日お休みをもらった。


企画宣伝課の人たちと、アスガルさん達には、お土産を渡せた。

あとは、ユオだけなんだけど。

そもそも、会えるのか?

とりあえず、前回ユオに会った広場に行ってみることにした。

センタービルから、広場に出る。

私は、広場を端から端まで歩き、それを三往復くらいしてみた。


探して居なかったため、ひとまず休憩。


前は、この辺りにいたんだけどな。

今日はいないのか。

不定期なのかな。


両手を上で組んで、体を伸ばす。


「おい」


ん?


「お前、めちゃくちゃ怪しかったぞ」


この声は。

私は、後ろを振り返る。


「ユオ!」

「な、なんだよ。」

「探してたんだよね、ユオのこと。」

「俺を?」


怪訝そうなユオを無視し、私はお土産を渡す。


「これは…」

「初仕事でミシュティに行ってきたんだけど、その時のお土産。」

魔力マナの石だな。」

宝飴ほういの石っていうらしいけど」


ユオは、宝飴ほういの石のドロップをじっと見つめた後、にっこりと私に向かってほほ笑んだ。


「ありがとな」

「いえいえ。」

「お礼に、そうだな。また何か話でもする?」


それは、魅力的な提案だよ。

私は、ユオに向かって大きく頷いた。


「前回は、原初の樹について話したんだっけ?」

「そう」

「じゃあ、今回は竜についてもっと詳しく話そうか。自分の体を光と闇に分け、さらに五体の小さい竜を創ったという話はしたよな。」


原初の竜。

光と闇は、五体の竜を、炎、水、風、地、雷に分けた。

原初の樹、魔力マナの源泉、光と闇による時の関わり、さらに自然の恩恵をその身に宿した竜たちにより、始まりの世界は、さらに繁栄していく。

ある日、原初の樹は一つの大きい果実をつけた。

光は、果実の種を、闇は果実の皮を食べた。

すると原初の樹は、白の果実を十個、黒の果実を十個つけた。

その果実からは、種が飛び、その種がまた不思議な力を持っていた。

原初の樹は、最初の実を食べた代わりとして、原初の樹とその果実を未来永劫守ることを約束させた。

未来永劫。

竜は長寿ではあるが、不死ではない。

いずれ死ぬことになる。

竜たちは寿命を感じ、原初の樹との約束を守るために考えた。

そして考え出されたのが、竜を神と崇めた人族により、捧げられた子供たち。

竜は、子供たちに問うた。

力が欲しいかと。

子供たちは、竜たちに「自分たちを守る力」が欲しいといった。

竜たちは、力を欲した子供たちに原初の樹のことを話した。

子供たちは力を手に入れる代わりに、竜の遺志を継ぎ、原初の樹を未来永劫守ることを誓った。

原初の竜たちは、すべての力を子供たちに分け与え、消えていった。

子供たちは、自分たちを守る手段を得た。

そして竜たちとの約束を守るため、竜の力を持つ子供たちは、世代を繋げ、今も約束を守るため、原初の樹を守ろうとしている。


「終わりだ。」

「これも?」

「ほんとか、嘘かは言われていない。その方が、ロマンがあるだろ?」


はいはい。


「原初の樹と竜の約束を、人が叶えていくのかぁ」

「なんか、思うところでもあるのか?」

「竜たちが、原初の樹の実を食べて約束を果たすことになったのに、それを人族の子孫が守り続けるのって嫌じゃないのかなって。」

「は?」


私の言葉に、ユオは首をかしげる。

なんでそんな反応?


「いや、だって、うんと昔の世代の約束をなんで、今の人たちが引き継がないといけないのかなって。約束っていわば、縛りじゃない。それで納得できるのかなって。」


ユオは、しばらく黙った後、噴き出して大きく笑った。


「そんな考えしたこともなかった。確かに、原初の樹との約束を、今の奴らが守る必要はないよな。」

「別に守らなくてもいいなんて言ってないよ?ただ、納得できるのかなって思っただけだし。」

「まぁ、原初の樹はその場にあり、魔力マナの恩恵も受けてたんじゃないか?それに、竜の恩恵も受けてただろうし。」


それなら、約束を守るのも…


「でも、恩恵を受けてたとしても、本人の約束じゃないでしょ?約束って当人同士で完結させるものじゃない?」


ユオは、私の言葉を聞き、ずっと笑っている。


「なら、原初の樹に文句言えって。」

「わかった」

「は?おい。」


「これは契約無効です!!」


私は、空に向かって叫んだ。


「な、なにやってるんだ?」

「ほんとにあるか分からないものに、文句なんてつけようないでしょ。だから、イメージで何となく、空かなって。」

「そーかよ」


ユオは、にやりと笑った。


「それより、お前、古代の本は読んだか?」

「…読んでない。というか、古代の辞書を見ても、ユオが以前話してくれたところしか読めなかったけど。」

「あっそ。頑張ってみれば?」


くそぉ、馬鹿にして。


「お前に渡して良かったわ。読めるもんなら読んでみろ。じゃあ、またな。」

「あ、ちょっと。次は…ってもういないし。」


古代の本は、ユオのあの調子から見るに、図書館にある辞書では読めないんだろうな。

まったく、嘘教えやがって、時間かけて読んだんだぞ。


でも、お土産も渡せたし、今日の話も面白かった。

また、時間を見つけてユオに会いに来よう。

会えるかわからないけど。

読んでいただき、おめでとうございます!


よろしければ、

評価、ブックマーク、感想等いただけると

嬉しいです!


よろしくお願いします!

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