895話 ネロとの約束は破ったことがありません
「チヒロ、準備は出来た。いつでもティエラに向かえるようになっているぞ。」
「オーロックさん、ありがとうございます。」
さっきから、準備は出来ていただろうに。
ありがたい限りだ。
「さて…」
「チヒロ、もう行くの?」
「チヒロ。」
あぁぁぁ。
アンジュ君、アンヘル君、可愛いですね。
でも、私がここにいると、いつまでも、この人たちが仕事に戻らないからさ。
「うん。もう行くよ。二人とも、お土産を期待していてね。」
チヒロをあげることは出来ないので、地球で、アンジュ君とアンヘル君が好きそうな物をいっぱい買ってくるから。
「お土産…」
「チヒロ?」
チヒロはあげることが出来ません。
それになんだろう。
私をあげることは出来ません…って、自分で言っていて、とても恥ずかしいんだけど。
「チヒロはないけど、私がこっちに帰ってきたら、二人といっぱい遊ぶよ。それでどう?」
「遊んでくれるの?」
「いっぱい?」
「うん。いっぱい。」
そして、チヒロをあげることが出来ない代わりに、私の時間をあげる…というのも、なかなか恥ずかしいけれど。
アンジュ君とアンヘル君が喜んでくれているのであれば、それでいいか。
恥ずかしさなんて、関係ないよ。
二人の、澄んだ瞳を見ることが出来るなら、多少の羞恥には、目を瞑ろう。
…私の地球での知り合いがいたら、おそらく…絶対に言わなかっただろうけど。
「私は、お土産でいいわよ。」
「俺もお土産でいいよ。」
「私も、お土産を楽しみにしているわね。」
はい。
私よりもお土産の方を楽しみにされているみたいで、それはそれで嫌です。
「俺は、チヒロの成長かな。」
はーい。
ちゃんと、コツコツ毎日、アルバートさんから貰ったトレーニングをやりたいと思います。
「二年半もあれば、上達しているはずだしね。」
そして、ものすごいプレッシャーをかけ始めたよ。
プレッシャーに弱いタイプなので、止めて貰いたい。
「…頑張ります。」
笑顔の圧が凄いのよ…
もし、大した成長もしていなかったら、どうなるんだろう…
いや、そんなことを考えていてはダメだ。
私は、出来る子。
成長して帰ってきますから。
「俺は。」
ネロは?
「俺との約束は守れよ。」
ネロとの約束?
今まで、ネロとの約束は、いろいろとして来たと思うけど。
「どれの事?」
「あぁ?全部に決まっているだろ?」
「分かったよ。全部。ネロとの約束は、全部守るよ。」
というか、私。
「ネロとの約束を破った事なんてないけど?」
「これからも、ずっとだ。」
「これからも破るつもりなんてないよ。」
そもそも、破るつもりで、約束なんてしてないから。
「取りあえず、二年半で絶対に戻ってこいよ?」
「え?あの、二年半は、あくまで最低ラインなんだけど…」
ちゃんと単位を取り続けたら、卒業は、二年半だけど。
少し踏み外すと、半年か、一年延びるんですが…
「なんだよ。俺たちに会いたくないのか?」
「いやいや。会いたいに決まっているって。」
そもそも、役に立つ人間になるために、一旦向こうに戻るんだよ?
目標は、企画宣伝課にあるんだから。
「じゃあ、最低ラインじゃなくて、それで帰ってこいよ。」
「いや、そのつもりでは、いるけど。」
「そのつもりじゃなくて、そうなんだろ?」
凄くグイグイ来るじゃん…
「そ、そうだね。」
「約束だからな。」
え?
二年半で戻ることが?
何のミスも出来なくなった?
「そもそもミスすることを、念頭に入れて、帰っていたら、ダメだろ?」
「念には念を…というでしょ?」
「チヒロが頑張れば、二年半で戻って来られるなら、何とか頑張って、最短で戻ってこいよ。」
「はぁい。頑張ります。」
ここで納得しないと、ネロが、逃がしてくれそうにない。
でも、そうだよね。
失敗することを考えて、戻っていたら、いつまでたっても、企画宣伝課で一人前になれないよね。
「あぁ…それから。」
「なに?」
まだ何かあるのかな?
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