893話 結局、大集合
「ごめんなぁ。」
「いえ、止めて貰って、助かりました。」
アスガルさんはともかく、オーロックさんには、マジで感謝だ。
これ以上、皆の前で、ネロのデレを体験してしまったら、私が正気を保てなかったと思うので。
「ネロは、物足りなさそうだったけどな。」
「なんてことを言うんですか…」
「甘噛みで良かったな。本気で嚙まれていたら、流血沙汰だっただろ?」
オーロックさんは、笑いながら言うけれど、私は、それを想像して、ゾッとしました。
血を流しながら、地球にたどり着いたら、間違いなく、驚かれてしまう。
「虎の本気の噛みも、体験してみたら、案外面白いかもしれないぞ?」
いえ、私は、ただの人なので、虎に本気で嚙み抜かれたら、おそらく死にますね。
その体験は、一生に一度しか出来ないし、さらにいうと、その体験をするために、私は人生のやり残しを、すべて清算しなくてはならないです。
「まぁ、あいつが小さいサイズでよかったな。」
「いや、はは。」
ホントだよ。
猫ちゃんサイズだから、鼻をカプっとされる程度で済んだけど、虎ちゃんサイズだったら、たとえ、カプっとしただけでも、顔の半分くらいは無くなったかもしれない。
ドキドキするどころか、ドクドクと血が流れていただろう。
「それにしても、企画宣伝課の人たちの仕事を中断しないために、この時間にしたのに、結局、全員大集合だな。」
本当にね。
こんな事なら、仕事が終わって、夜に帰ることにすればよかったよ。
そうしたら、仕事中に抜け出してきてもらうこともなかったのに。
「まぁ、せっかく見送りに来たんだし、あいつらの所に行って来いよ。」
私が地球に帰るために、わざわざ時間を空けてくれたというのに、いつまでもお待たせして申し訳ないんだけど。
「ここで、時間だから早くしろ…なんて、言ってみろ?俺が、企画宣伝課の人たちに睨まれるからな。それに、アルバートがここに来ると分かっていた時点で、こうなるかもしれないと、思っていたから、大丈夫だ。」
本当に、たびたび、ご迷惑おかけします。
「じゃあ、ちょっとだけ、行ってきます。」
「あぁ、行ってらっしゃい。」
オーロックさんと一旦分かれて、企画宣伝課の皆の所へと駆け寄る。
すると、ネロを中心に、ワチャワチャしていた。
「ネロ、なにチヒロの事、噛んでいるのよ。」
「見てたぞ?俺らがここに来たタイミングで噛みやがって。」
「ネロ、ズルい。」
「ズルい、ネロ。」
随分と盛り上がっているみたいで…
話題がとても気になるんだけど。
その話題は、私が恥ずかしくなるので、止めていただけると。
「なんだよ。俺はチヒロにとって、猫なんだから、普通だろ?」
「ちょっとネロ?何を開き直っているのよ。」
「素直になったと思ったら、とんでもなく大胆になったよな。」
「悪いな。俺は、もとから素直だった。」
いや、どこがよ。
ツンとデレの比重で言えば、圧倒的、ツン属性だったでしょうが。
「だいたい、チヒロにとっては猫って言ったってさぁ…」
「あ、チヒロがこっちに来たぞ。良かったな。お前たちも挨拶出来るみたいだな。」
カイン君の言葉を遮り、私が皆の傍に来たことに気が付いたネロが、笑っている。
「あの、皆さん、ちなみに仕事は…?」
「そこは大丈夫。休憩中だから。」
全員?
全員休憩中なの?
仕事が回らなくなるでしょうが。
全員で有休をとったり、全員で休憩を取ったり、かと思ったら、全員で、仕事に追われたり…
この人たち、本当に極端なんだよなぁ。
「あの、えっと…お見送りに来てくれたんですか?」
「あたり前でしょー。」
「そうだよなぁ。」
ホントか?
いや、ちょっと疑わしくなったぞ?
「チヒロにまた会えたよ」
「チヒロのお見送りが出来て嬉しい。」
こっちの天使二人は、本当だ。
癒しだ。
「課長だけ、お見送りなんて、ズルいですからね。」
「皆、来たいなら、皆で見送るしかないよな。」
アルバートさんがいると、全員集合してしまうのかぁ。
でも。
「やっぱり、お見送りは嬉しい物ですね。ありがとうございます。」
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