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892話 ネロとの言い合いで…


「私の場合は、違うでしょ。言うタイミングを悩んでいただけでしょ。」

「でも、アルバートや俺が、聞きに行かないと、言わなかったんだから同罪…いや、俺より罪深いだろ。」


そんな事ないよね?

いや、そんな事ない。


「大体、チヒロは、気を使う所がおかしい。今日も、全員の見送りを断るしな。」


お見送りしてもらうことは、嬉しいけどさ。

仕事の途中でお見送りされると、申し訳なくなるじゃん。


「あいつらも、きっと見送りたがっていただろうな。」

「なんで、そういうこと言うかな?」

「だって、そうだろ?チヒロが待つ側だったら、絶対に見送りに行くだろ?」


…そりゃ、行くけどさ。

だって、寂しいし。


「チヒロは、勝手だ。」


えぇ?

その事を、ここで掘り返す?

ネロって、クールそうに見えて、ねちっこいな。


「俺の事、ねちっこいとか、思っているだろ?」

「思っていませんけど?」

「声が上ずっているけどな。」


指摘が細かい。


「チヒロが言いたいことを言えと言ったから、言っただけだ。」


そして、憎たらしいぞ?

この猫ちゃん、鼻で笑いやがった。

それを言うなら、ネロだって、私に内緒ごとしているくせに。

ネロが…


「なんだよ。」


あ、やばい。

これは、言ってはいけないやつだ。

口から出そうになった言葉を、グッと堪える。


「とにかく、私はネロに言うべきことは、ちゃんと伝えたから。ちゃんと寂しいって言ったもの。」

「だから、俺だって、寂しいって言っているだろ?」

「私は、ネロともっと一緒に居たいし。」

「俺は、隣にいるのが当たり前だって言った。」

「私だって、ネロが隣にいることが当たり前になっているし。」


…二人で、ゼーゼーしながらの言い合い。

これ、何の言い合いをしているの?


「なぁ、チヒロ。ティエラには、前に言っていた奴もいるんだろ?」


前に言っていた奴?

どいつだ?


「チヒロがティエラに帰る時に、ずっと気にしていた。」


あぁ、元カレ?

そりゃ、あの人も地球の人だし、いるね。


「いるけど、それが、どうかしたの?」


また、関わることがあるか、分からないけど。

サークルに行けば、会う事になるのかな?


「あ、チヒロ。まだいた。間に合った。」

「チヒロー。」


アンジュ君、アンヘル君?

後ろには、他の企画宣伝課の皆が見える。

結局、お見送りに来てくれたのか…

うん。


「チヒロ。」

「ネロが言った通り、結局、皆がお見送りに来てくれたみ…」


私がネロの方を向くと、ネロはグッと私と距離を詰めていた。

そして、一瞬私の顔を見た後、ネロは私の首元にすり寄った。


「あ、え?ネロ?」


何も言わずに、首元にすり寄る様子に、私は、戸惑いを隠せない。

そして、私の目線には、驚いたり、楽しそうにしたりしている、お見送りに来てくれた人たちの顔が見える。


「ね、ネロさん?」

「俺は、チヒロにとって、猫なんだろ?」


いや、猫に見えるね…というだけであって、ネロは虎なんでしょ?


「だから可愛く、じゃれておいてやろうと思ってな。」


いや、うん。

可愛いけど、みんな見ていますが?

いつもと様子が違うネロに、きっとみんなが驚いているよ。


「なんだよ?不満か?」

「不満というか、もう、何…?」

「いや別に。」


こういう事をするから、私が期待するんですよ?

ネロは猫と、言い聞かせている意味がないじゃないか。

いや、今回は、猫による行動か?


「なんだよ。不満そうだな。」

「だから、不満ではないって…」


過剰摂取なだけで。

さっきまで、バチバチと言い合いをしていたのに、急にデレるじゃん。


「チヒロ。」

「な、なに?」


すり寄っていた体を、私の首元から離し、ネロは私を見る。

そして、私に顔を近づけて…

カプッ…

カプッ??


「これならいいか?」

「なに?」


は、鼻をかまれたぁぁぁ。

へ?

あ?

なに?


「いいか、ちゃんと帰ってこいよ?それは約束の印だからな。」


だから、ちゃんと帰ってくるって言っているでしょ。

それに、約束するのが、苦手なくせに。

約束の印まで付けて、何を考えているんだ、この子は。


「えーゴホン。そろそろいいかな?」

「楽しそうな所、ごめんなぁ。見守っていたかったんだけど、いつまでも終わりそうになかったからな。」


そして、このタイミングで、楽しそうに声をかけてきたアスガルさんと、苦笑いのオーロックさん。


「なんだよ。まだ話し中だろ?」

「その話はいつ終わるんだよ。いつまでも待たせやがって。」

「す、すみませんでした。少し話すつもりが、結構話し込んでいましたよね。」


待たせて、すみません。


「せっかくみんながお見送りに来たタイミングで、まったく、なにをやっているんだか。」


いや、本当にすみません…

こんな事になるとは…

というか、改めて、ネロに鼻をかまれたよね?

私は、ネロの方を見る。

すると、お小言を食らっているネロが、ちらりと私の方を見て、ニヤリと笑った。

…この、猫ちゃんめ。

読んでいただき、ありがとうございます!


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