891話 おまもりがネロを守ってくれるように
ネロと話をする時間を貰った。
ただ、ネロの様子がやはりいつもと違うような気がして、その様子を黙って伺っている状態なんだけど。
このままでは、らちが明かない。
「ネロ?」
「なんだ?」
普通かな?
「いや、ずっと何かを考えこんでいるように見えたからさ。」
邪魔しちゃいけないと思って…という言葉は、飲み込んでおこう。
「それで、話とは何だ?」
ちょっと待って。
随分、クールな物言いじゃない?
確かにネロにとっては、二年半…
でも、私が地球に帰ることに関して、ネロも寂しいと言ってくれたじゃん。
それは、もう整理が付いたって事?
「いや、だから…」
はぁ、うん。
特に話もないか。
私が決意していて、ネロがこのことに関して、心の整理が付いているのであれば、私から言えることなんてないわ。
「いや、ううん。話したいと事というか、渡したいものがあって。」
「渡したいもの?」
私は、ヘルメスさん達と一緒に作った、魔法石のおまもりをネロへと差し出す。
「魔法石か?」
「魔法石に見えるけど、魔法石じゃないんだよね。」
「じゃあ、なんだ?」
「おまもり。」
ネロの事を守ってくれるようにお願いしたおまもり。
「おまもり?」
「そう。だから、ちゃんと持っていて欲しいな。私がいない間、もしかしたら、ネロの事を守ってくれるかもしれないでしょ?」
軽口をたたくように、笑って言う。
ネロに守ってもらった事はあれど、ネロを守ったことは、記憶にないからねぇ。
「チヒロが俺を守ったことなんてあったか?」
ネロも、フッと吹き出して、軽口をたたく。
私が自分で言うのと、ネロに言われるのでは、ちょっと違うんだよなぁ。
「あったかもしれないじゃん。」
「チヒロも思い出せないなら、ないのと一緒だろ。」
「いや、探せばあるって。」
というか、あってくれ。
「とにかく、おまもり。ちゃんと渡したからね。私が次に会う時に、怪我なんてしていたら、怒るからね?」
「お前、俺の事を何だと思っているんだ?むしろ、お前の方が心配だろ?一人で寂しくて、泣くんじゃないのか?」
「な、泣かないし。私には、ネロ人形がいますからね。」
プティテーラで貰ったネロ人形をカバンから出す。
机に飾ってあったものを、持ち帰ることにした。
「はぁ?こんな所で出すな。」
「ネロも私が恋しくなったら、私の人形に話しかけてくれればいいからね?」
「返事が返ってこないんだから、より寂しくなるだろ?」
…あぁ、そういうこと言っちゃう?
そりゃ、寂しくはなるけど、取り急ぎの処置でしょ。
あれ、でも。
「私が帰る事、まだ寂しいって思ってくれているの?」
「はぁ?何を言っているんだ。」
あぁ…はい。
ネロは、もう大丈…
「前にもそう言っただろ?一緒に居るのが当たり前になっているやつが、隣から消えたら、違和感しかないだろ?」
「え?あぁ、うん。」
「帰ることが確定しているのに、そんな事を言わせるなよ。」
ムスッとしたネロを見て、私は笑ってしまいそうだ。
いや、笑っているんだろうな。
寂しいけれど、嬉しくて。
「何、笑っているんだよ。」
「いやぁ、ネロの隣にいることが、私にとっては当たり前だったけど、ネロにもそう言って貰えると、嬉しいというか、なんというか。」
「だから、前にも、ちゃんと伝えたよな?ちゃんと伝わっているよな?」
私に会えなくて、寂しいって事?
ちゃんと伝わっているつもりだったけど、今、もっと伝わったよ。
「ネロは、私と会えない事を、私が想像している以上に、寂しがってくれていること?」
「いちいち、言わなくていい。」
「でも言わないと、伝わらないじゃん。」
「そうはいっても、チヒロも、全然、俺に言わないだろ?」
うぐ…
痛い所を付いてくるなぁ。
でも私は、言わない訳じゃなくて、言うタイミングを逃していただけだから。
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