889話 帰りの前日
帰ると皆に告げてから、一日一日、過ぎるのがとても早く感じる。
地球に帰る準備を進めるために、毎日、お世話になった人たちに、挨拶回りをしていたからかなぁ。
仕事を終えて、今日の挨拶回りをし終えて、そして、オフィスに戻って来た。
忘れ物をするとは。
「ティエラに帰る準備は万端かな?」
「あれ?アルバートさん。」
もう終業時間だというのに、まだいたんだ。
「はい。挨拶回りは、完璧です。」
「お土産も買えたかい?」
「はい。買えましたよ。」
明日だ。
皆に地球に帰ると告げて、一週間。
私は、明日、地球に帰る。
「帰るのは、明日の仕事終わりでいいのか?コスモス滞在、最後の日くらい、コスモスを満喫すればいいのに。」
「いやいや。十分満喫しましたって。それに、しばらくお休みをいただくので、最後の日くらい、仕事をしたいと思います。」
それに、仕事場にいた方が、皆と一緒に居られるし。
「それに、いつもより少し早く上がらせて貰っちゃいますしね。」
「それは、いいんじゃないかい?」
ただ、私の仕事終わりは、皆の仕事中になる。
だから、置き土産を渡している時間は、ないか。
「あの、アルバートさん。」
「なんだい?」
いつ渡そうかと、タイミングを伺いながら持ち歩いていた、二つの土産。
それを今、渡してしまおう。
「これ、受け取ってくれますか?」
「これは何だい?魔法石…のようにも見えるけど。」
「はい、魔法石です。中に込められている物は、魔法ではないんですけど。」
中に込められている物は、私のお願い事だから。
「魔法石ではない?」
「はい。おまもりみたいな物です。ヘルメスさんの所で、作ったんですよ。」
「あぁ、ヘルメスと随分仲良くなったんだな?」
「そりゃ、どなたかに紹介してもらいましたから。」
もちろん、あなたにですけど?
「ははは。そうだね。それで、このおまもりをどうすればいいんだい?」
「企画宣伝課の皆がいる時に、皆宛として、渡したかったんですけど、明日、仕事の最中に渡す訳にもいかないので、先にアルバートさんにと。」
「はは。なんだ。仕事中でも渡せばいいのに。」
そんなこと、出来ませんって。
いつも、仕事がストップしてしまうんだから。
「いいえ。これは、ここに置いておいてください。置いておけば、おまもりとして発揮できるようになっていますので。」
やはり、おまもりであっても、実用性があった方がいいでしょ。
ご利益は、私の願いの範囲だから、どれくらいあるか分からないけれど。
多少は、あると思う。
多少は。
「じゃあ、ありがたく、貰っておくよ。」
「はい。皆、いつ気が付きますかね?」
「すぐに気が付くんじゃないか?」
そうだったら、嬉しいね。
「見送りには、企画宣伝課からは、俺とネロが行く予定だ。」
「アルバートさんも来てくれるんですか?」
嬉しい反面、仕事、置いておいていいのか?と思わなくもない。
「おいおい、ネロは当然という反応なのに、俺に意外そうな反応をするのは、ひどくないか?」
「あ、いえ…」
そう言えば、ネロが見送るに来ることを当然かのように…
「いえ、あの、来てもらえるのは、嬉しいんですよ?でも、仕事大丈夫かなって、思っただけです。来ていただけるなら、喜んでその好意、受け取らせてもらいますって。」
だって嬉しいし。
「そうか?」
「はい、もちろん。」
「本当に?」
「はい、嘘じゃありません。」
「じゃあ、いいね。」
はい。
おそらく、私が帰った後に、フェリシアさんが怒るイベントが発生するだろうけど、それは、もちろん、アルバートさんがしっかりと受けてくださいね。
「じゃあ、そろそろ帰ります。」
「あぁ。おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
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