886話 守ってくれますように
お世話になったと言ったら、ネロもそうだ。
でも、ネロには、個人的にも渡しておきたかった。
何を願うかは決めていないけれど、ネロには、何か渡しておきたい気がするのだ。
だって、二年半も離れてしまったら、私の事、記憶から薄れてくると思うんだよね。
だからこそ、地球に帰る前に渡す、今回の置き土産が結構重要になってくるわけだ。
「師匠、お待たせしました。持ってきましたよ。」
「おつかれ、アリス。」
アリスさんが奥から戻ってくると、片手の手の平サイズ…占い師が使うような水晶より、少し小さいくらいの丸い結晶と、片手で握れるくらいの小石サイズの結晶を持って、戻って来た。
「企画宣伝課、皆用は、これくらいあった方がいいと思って。」
うん。
想像していたよりは、デカかった。
机の上に飾って貰えばいいのかな?
「いいんじゃない?その分、ちゃんとお願い事を込めないと、物足りなさを覚えるだろうけど。」
あぁ、その丸い結晶が埋まるくらい、願いを込めないと、透明の部分が目立ち、カスカスした魔法石が出来上がるという事ですね。
アリスさんから、二つの魔法石を受け取る。
…何を願おうかな。
おまもりと言えば、健康運、仕事運、金運、恋愛運…
いろんなおまもりがあるけれど。
何を願っておくのが、いいんだろうか?
仕事運は、考えなくても、繁盛しているんだよね。
これ以上、繁盛したら、誰か倒れてしまいそうなくらい、忙しい気がする。
却下だなぁ。
金運。
これもまたしかり。
皆、仕事を持っているし、コスモスにおいて花形の観光部に所属しているから、おそらく困っていないと思う。
圧倒的に働いた日数が少ない私ですら、ゆとりを持った生活と、娯楽に使うお金があるくらいだ。
私以上に働いている、企画宣伝課の皆が、困っていることはないんじゃないかな?
そんな話も聞いた事がないし。
これも却下。
健康運。
魔物の皆の健康を私が祈ることが可能なのか疑問である。
私のイメージが大事だと言っていたから、皆の健康な姿をイメージしないといけない訳だけど、正直、企画宣伝課の人たちが、体を壊したシーンを私は見たことがない気がする。
なので、健康を願うのも難しい。
これも却下だな。
恋愛運。
皆の恋愛を祈るなんて、余計なお世話だよね?
却下で。
…あ、おまもりは、悪い物から守ってくれる効果もあったんだっけ?
なら、決めた。
具体的なイメージはしにくいけれど、願いはスッキリとした願いのはず。
「決まったかい?」
「はい。」
「よし。じゃあ、大きい方から、願いを込めてみようか。」
私は、手のひらサイズの丸い結晶に、触れる。
企画宣伝課の皆を、守ってくれますように。
そして、皆が企画宣伝課のオフィスに、無事に帰って来られますように。
いろんな世界に行く皆を、守ってほしい。
持ち歩くことは出来ないサイズだけど、あのオフィスに帰ってくると、どっしりと構えた、魔法石があるように。
皆が、異世界に旅行をしても、企画宣伝課に帰って来られるように、道しるべになってほしい。
そういう願いを込めて。
すると、大きい魔法石の色が、光を放つように色づきだした。
白…?
いや、黄色かなぁ?
とにかく、光を連想できそんな色。
導きの光のように、中央に向かってどんどん明るくなっていく。
…おぉ。
両親のよりも、いい出来じゃないか?
じゃあ、次は、ネロだけど。
ネロには、個人的に凄いお世話になった。
そして、ネロのおかげで、地球に帰る決心が付き、またネロのおかげで、忘れかけていた好きになる気持ちをも、あふれ出した。
ネロへの願い。
やっぱりこれだろう。
ネロの事を守ってくれますように。
ネロの願いが叶いますように。
二年半後、またネロと、ちゃんと巡り会って、二人で笑い合えますように。
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