883話 プラシーボ効果?付喪神?
「魔法石に願いを込めると、それは魔法石じゃなくなるという事ですか?」
魔法石は、空の錬金術の結晶の中に、魔法を込めるから、魔法石。
じゃあ、空の錬金術の結晶の中に、願いを込めたら、魔法石じゃなくなるのか?
「いや、この結晶自体が、魔法を込めるように作られているから、認識的には、魔法石だね。」
ほう。
じゃあ、やっぱりこの結晶自体は、魔法を込めるために作られて、他の用途ではあまり使われないという事かな?
「もしかして、ヘルメスさんが考えた新しい錬金術ですか?」
錬金術の権威から、新しい錬金術を見せて貰えるという事?
なにそれ、めっちゃ、豪華じゃん。
「あぁ、今回、異世界に旅に出た時にね。思いの力というのは、相当強い力になるという事を、知ってね。」
「思いの力と言うと、それこそ、願いとか、希望とか、そういう類の?」
「そうそう。思いは時に、気を強くさせ、身体能力の向上も見える。確か、その土地の人たちは、病をも気持ちの持ちようで、何とかなると可能性があると言っていた。」
病は気から…という言葉もある。
それに、プラシーボ効果という効果もある。
薬として効果がなくても、飲む人が薬を飲んでいると錯覚していると、その効果が出てしまう…みたいな、あれ。
一種の暗示みたいなものだと思う。
だから、風邪のような症状も、いいことがあった時、楽しいことがあった時、あまりひいていないような気がしている。
まぁ、だからと言って、気持ちが弱いから、病にかかるとは、言えないけどね。
私が思うに、気持ちの在り方で、病状が変化することもあるかもしれないんだよ…くらいの認識だ。
「それに、思いが強いと、そこに魂が宿るとも言われているらしいんだ。」
おっと?
「ちなみに、それは、物に宿る系の?」
「あぁ。チヒロは知っているのかい?」
私の世界では、付喪神と言いますね。
宿るのは、魂というよりも、神様です。
「知っているなら、話は早い。ちょっと試してみたいことがあってね。」
…あれ?
もしかして、私のお土産は、この方の実験のサンプルになるのかな?
面白そうだから、黙っているけれど。
「俺が行った世界では、思いの力を視認する、または活用する事が出来る技術を作っていた。それで何をするかは、俺には興味がないけれど、この技術は、俺の錬金術の技術の向上につながるかもしれないと思った訳だ。」
サラッと凄い事を言った気がする。
技術がどこに行きつくかは、割と重要な事ではないでしょうか?
話を聞く限り、使い方によっては、ギリギリの技術だと思うんだけど。
「もしかして、気にしているかい?」
「まぁ、どう使われているのか、気にはなりますね。」
「技術なんて、そんなものだよ?誰がどのように使うか、それだけで、善にも悪にも変わるものだ。魔法だって、人を傷つけることも出来る技術だよ?」
それもそうだ。
というか、どれもそうだ。
毒も薬になるし、魔法も害になる。
技術もまた、しかり。
「どう?不安なら、別の物を考えよう。」
「もう少し詳しく聞いてもいいですか?」
それから、そのお土産にするか決めよう。
さすがに、何か微妙な技術だった場合、お父さんとお母さんに、渡したいと思えないし。
自分でしっかり確認して、決めたい。
「もちろん。とはいっても、俺が考えている物は、シンプルだよ。」
そうなのかな?
話を聞く限り、結構大変そうな気がするんだけど。
だって、思いを力に…って、一朝一夕で出来るものじゃない。
それに、物に魂が宿ることだって、一日二日で、宿る訳じゃないと私は知っているぞ?
「いや、シンプルだよ。この空の魔法石に、印を刻む。それは、思いを形にしやすくするものだ。ちなみに、その技術が、俺が異世界に行った時に、目で見て盗んできた知識を改良した物ね。」
…だから、サラッと凄いことを言わないでください。
「チヒロさん。師匠は、錬金術師と共に、学術の人だから。新たな知識に対してどん欲だし、それが自分の研究にどう効果をもたらすか…そういう所に興味を持つ人なのよ。」
うん。
話を聞いている限り、そんな感じがしてきているよ?
もっと、温和でふんわりとした人かと思いきや、結構サバサバとしていて、バッサリとしている。
「さぁ、やろうか。」
そして、興味がある事に関しては、ギラギラとしている。
最近、会う人たちは、こういう人が多いなぁ…と思うが、こういう人こそ、案外、好感が持てたりもするんだよねと思うのだった。
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