882話 観光職員でも悩みます
異世界留学と言っても、やはり、やることは地球に帰ることと一緒なので、結局、アリスさんとヘルメスさんにも、どういう感じで帰るのか…というのを、説明することになった。
「へぇ、二年半か。」
「二年半ねぇ。」
二年半です…
「それで、お二人に挨拶に伺おうと思っていたんですが、会えてしまい、ちょっと驚いています。」
「挨拶?お土産探しをしていたんじゃないの?」
「おや、お土産探しのついでに、俺たちに挨拶かい?」
いえ、どちらかと言うと、逆です。
お二人に挨拶をすることがメインであり、お土産探しはついでです。
だって、コスモスのお土産を渡せるのは、両親だけなんだよ?
ついでは、両親の方です。
「誤解ですよ?お土産を探しながら、二人のお店の方に向かっていたんですから。」
「でも、随分、熱心にお土産探しをしていたよね?」
いつから見ていたんだ?
なぜ、そのことを知っている?
「いえ、確かに、お土産選びを真剣にやっていました。」
途中で、諦めようと思ったけれど。
「ほら、やっぱり。」
「ただ、お土産選びに熱中していたというより、悩んでいたんです。」
この二人に、相談に乗ってもらおうか。
もう、一人で考えていたら、おそらく、両親へのお土産は、地球産の野菜か、地球には、技術が全くない魔法道具になるだろう。
それに、両親二人が使えるかも謎だし。
「お土産を悩むの?ピンときたものを買えばいいんじゃない?」
「観光職員でも、お土産選びに苦戦するのか。なるほどね。」
ピンとこないから、悩んでいるのであって、ピンときたら、悩んではいませんよ。
すみません。
観光職員でも、お土産選びに、しっかり苦戦しております。
「ティエラにない物を買って帰ればいいんじゃないの?それとも、ティエラにない物なんてないの?」
「いえいえ。たくさんあるんですけど…持って帰れる物じゃないとダメだというか。」
おそらくなんだけど、地球に影響を及ぼす可能性のある物の持ち込みは、転送される時に、一緒に持って行ってくれないのではないかと思っている。
「確かに、あまりにもかけ離れたものだと、物自体が転移できない可能性はあるな。」
「ですよね。だから、コスモスっぽい物で、なおかつ、地球にも持って帰れそうな物を探していて。」
…さすがに、コスモスの売りが分からなくて…とは、口が裂けても言えないな。
「んー。そもそも、ティエラがどんな所か知らないから、お土産も、紹介しにくいかも。魔法はないんだよね?」
「おそらく。」
ないと証明することは出来ないけど、見たことがないから、取りあえず、そういう事で。
「魔法は、創作物によく出てくるよ。だから、魔法に憧れみたいなものはあるのかもしれないです。」
「魔法はダメだけど、魔法に憧れはある。難しいわね。」
そうなんです。
だから、悩んでいるんです。
私の知識不足も相まって、おそらく二人が想像している以上に、悩んでいます。
「そうだな。じゃあ、錬金術の道具でも、持って帰ってみる?」
え?
錬金術の道具?
…それは一体なんだ?
実験道具みたいな物かな?
実験道具は、おそらく、お土産として持って帰っても、喜んでもらえないと思うんだけど。
「錬金術道具というか、魔法石なんだけど。」
「魔法石?」
あぁ、アルバートさんがよく買うやつだ。
魔法を込めた石。
魔法石の中に、いろんな魔法を詰めて、いろんな人が使うことが出来る、画期的な石。
アルバートさんは、空の魔法石を大量に買って、自分専用に、魔法を詰めているらしい。
「魔法石って、魔法道具の扱いなんじゃ?」
「魔法を詰めれば、魔法道具だけど、空のままだったら、錬金術で作られたものさ。」
そう言えばそうか。
「じゃあ、今回、私は、中になにも詰まっていない、空の魔法石を買えばいいんですね。」
「いや、そのままだと面白くない。」
面白いだと?
魔法石が、面白いことになるの?
なにそれ、気になるんだけど。
「魔法石に、願いを込めてみるのは、どうだい?」
願いを込める…?
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