881話 お土産探しが難航中
深掘りをされない様に、ネロとユオから、そそくさと逃げてきて、商業地区へやって来た。
せっかくここまで来たんだし、地球へ帰る旨をお世話になった人たちに伝えに行こう。
そして、ついでに両親へのお土産を買おう。
それにしても、商業地区に一人で来るのは、久しぶりなんじゃないかな?
大体、誰かしらが一緒に来てくれていた。
やっぱり、いつ来ても賑わっているなぁ。
食べ物が並べられている店を覗き込んでみる。
色とりどりの野菜が並んでいて、美味しそうだ。
ただ、野菜をここで買うとして、実家に宅配してもらえるか疑問だが。
食べ物は諦めるとして、他に何かいい物はないだろうか?
ここで、ふと疑問が頭に浮かぶ。
コスモスの売りってなんだ?
私が、お土産を選ぶ基本として、その世界と関わりがある物を買うようにしているんだけど、コスモスって、何を売りにしているんだろう。
コスモスの売りとしては、異世界旅行。
いろんな世界に道を繋ぎ、異世界旅行を可能にしている。
さらに、異世界旅行に肯定的なコスモスでは、異世界の文化を取り入れる事も肯定的なイメージである。
よって、異世界の物が多く売られている商業地区みたいな場所があるわけだもんね。
たださぁ、異世界旅行がお土産になるかと言われたら、ならないじゃん?
異世界行きのチケットをあげるから、異世界の旅行をしよう…って、どうなんだ?
まぁ、そもそもの場合、地球とコスモスのゲートは、しっかりと確立していない。
いまだに、私の部屋の横に、入口が出るのだろう。
調査という名の、不法侵入は、止めていただきたい。
それに、一般の人が異世界旅行をするのも、難しいだろう。
ライセンスがないからね。
地球では、異世界旅行のライセンスは、発行されていないしね。
それに、うちの両親に異世界行のチケットをあげると言っても、おそらく、家にいるのが好きだとか言って、絶対に外に出ようとしないだろうな。
普段忙しい分、休みの時は、どこにも行かず、家に籠っている人たちだから。
という訳で、いろんな意味で異世界旅行は無理と。
じゃあ他に、何か用意したいわけだけど…
何がいいんだ?
魔法道具を渡す訳には、いかないよなぁ。
地球にどんな影響が出るか分からないし…
持ちこんだ時点でアウトなんだとしたら、もうアウトなんだけど。
分からん。
コスモスにある物と、地球にある物が若干被っている所もあるから、最悪、地球でトマトを買って、異世界で買ったトマトだよ…と言って、渡すのもありかもしれないな。
心が痛いけど。
私は、お店の中を覗き込んでは、コスモスっぽい物を探し、めぼしい物を発見できずに、お店を出るという作業を繰り返している。
「やっぱり、魔法道具でも渡しておこうかな。」
異世界っぽいし、それが一番良くない?
考えるのが、ちょっと面倒くさくなってきたぞ?
うん。
それもいい気がする。
「チヒロさーん。」
うん?
どこからか、私を呼ぶ声が聞こえる。
キョロキョロと見回していると、私の方へ走ってくる人がいる。
あれは…
元気に私の方へ走って来てくれているのがアリスさんで、その後ろで、その様子を見ているのがヘルメスさんかな。
「アリスさんにヘルメスさん。」
「チヒロさん、こんにちは。今日はお買い物?おつかいの仕事にしては、早すぎだよね?」
「はい。今日は、おつかい担当の仕事ではなく、個人的にお土産探しをしていて。」
「お土産?なんの?」
そりゃもちろんと、思ったけど、全然もちろんじゃなかった。
すごい説明不足だ。
すみません。
「あ、私、地球に戻る予定なんですけど。」
「戻る?」
「あ、えっと、異世界留学です。」
こう言えば、良かった。
「え?異世界留学?」
アリスさんの驚いた声と同じようなタイミングで、ヘルメスさんが私たちの傍へとたどり着いたみたい。
「おや?チヒロは、異世界留学をするのかい?」
腰まである髪の毛が揺れる。
この人、相変わらず、ふんわりとした人だなぁ。
でも、錬金術の権威なんだよなぁ。
思いがけず、今日、会いに行く予定だった二人に、私は会えてしまった。
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