877話 来ちゃいけない時に来ちゃった?
ユオに会いに来たんだけど、そこには、元々の探し人であるネロがいて…
二人で親しげに話していたみたいだったけど、邪魔したか?
ユオも、私がここにいることに驚いたのか、目をパチクリとさせている。
「チヒロ、どうかしたのか?」
ネロだけは、いつも通り、私の方へふわりと寄って来て、そのまま私の肩に乗った。
「いや、ユオに会いに行こうと思って、ここに来たんだ?」
「へぇ?ユオに?」
「え?あー…うん。私、もうすぐ地球に帰るでしょ?だから、帰る前に、挨拶をしようかなって。」
なんだ?
仲が良い訳じゃないのかな?
仲が良いふりをして、もしかして、まだ怪しい人物だと、疑っているのかな?
「ネロは、どうしてここに?ユオに会いに来たの?」
「いや?外の空気を吸いに来たら、たまたま声を掛けられたんだ。」
「えぇ?」
すると、ユオの方から、何とも言えない声が上がる。
違うのかな?
「でも、ネロに会えて良かったよ。」
「俺に?ユオを探していたんじゃないのか?」
「うん。そうなんだけど、前回、ネロとユオが、仲がよさそうに見えたから、一緒にユオの話を聞きに行けたらなと思って。」
そうしたら、ネロはオフィスにはいなくて、ここにいたわけだけど。
「ユオに会うなら、誘ってよ。」
「だから、俺が外に出たら、たまたまユオと会ったんだよ。」
「へぇー。」
またもやユオの声がカットイン。
だから、それはどういう反応なの?
「なぁ、お二人さん?俺を放置して、会話しないでくれよ。」
「ユオも、話の途中にお邪魔しちゃってごめん。もしかして、ネロに新しい物語でも話していたの?」
「いいや。たまたま会ったから、共通の話をしていただけさ。」
「おい。」
共通の話?
知り合って間もないというのに、もう共通の話があるの?
それに、ネロが若干、ムッとしている。
もしかして、男の子ならではの話でもしていたんだろうか?
ならば、なおさらお邪魔しちゃいけなかったんじゃ…
「あー…そうなんだ。」
「おい、ユオ。チヒロが引いている。何か盛大な誤解をさせていないか?」
「俺も何か誤解をされている気がする。」
いや、誤解なんてしてないよね。
「隠さなくても大丈夫。でも、そういう話をするなら、場所を選んだ方がいいと思うけど。」
「おい、ユオ。どうするんだ。絶対に誤解しているだろ。」
あ、そうか。
こういう気の使われ方も、微妙なのか。
触れないのが正解なのか?
分からん。
「チヒロ?俺たちが話をしていたのは、チヒロの話だよ。ほら、俺もチヒロと知り合いで、ネロさんもチヒロと知り合い。共通の話だろ?」
確かに。
そう言われると、共通だけど。
私のいないところで、私の話?
それで、本人が登場してしまったから、若干、気まずいというか、驚いたような空気感があったのか。
「なんの話をしていたの?」
「チヒロに紹介してもらって、良かったなぁ…みたいな事だよ。なぁ、ネロさん。」
「あぁ、そうだな。」
…うーん。
それならいいけどさぁ。
私の記憶上、紹介したての時は、割と気まずげな空気が流れていたよね。
その後、仲良くなっていったから、驚いたけれど。
「それで、ネロは、もう、ユオから物語を聞いたの?」
「いや、聞いてない。そんなに長い間、ここにいる訳じゃないからな。」
「そっか。」
まだ聞いていないのであれば、一緒に聞けるんじゃない?
ユオは、一日一物語と言っているし。
「あのさ、チヒロはどうしてここに?いつも、異世界旅行帰りに、お土産を渡すついでに俺の話を聞きに来るだろ?」
「ちょっと待って。確かに、お土産を渡しに来るけど、ユオの話がついでという訳じゃないからね?お土産もメインだし、ユオの話もメインなの。」
たまたま、ユオの話を聞きに行けるタイミングが、異世界旅行帰りのお土産を渡すタイミングというだけだから。
…うん、そうだ。
「じゃあ、今日は、俺の話を聞きに来たのか?」
「うん。そのついでに、挨拶しておこうと思って。」
「挨拶?」
「そう。私、しばらく、話を聞きに来られなくなるからさ。」
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