85話 お土産に込めた感謝の気持ち
まずは、企画宣伝課へのお土産、花飴のシロップ漬け。
「きれいね」
「お花が瓶の中で浮いてる」
「かわいい」
アンジュ君とアンヘル君は、瓶に顔を近づけ覗き込んでいる。
「花飴のシロップ漬けです。ミシュティで採れる、飴細工のバラをシロップで漬けたらしいです。スイーツや飲み物に入れて楽しむみたいなので、お茶の時に使ってみてください。」
「せっかくだし、今、お茶をみんなの分入れてくるわ。これは、普通のお茶でいいのかしら。」
「ミシュティでは、甘いミルクや、炭酸に入れてたんですけど、お茶でも楽しめると思います。」
「わかったわ。」
フェリシアさんは、返事をして、お茶を選びに部屋を出ていった。
「これがミシュティのお菓子の技術かい?」
「そうですね。生きた飴細工。目の前で飴の花が咲いたときは驚きました。そういえば、このままでも食べられるみたいだけど、食べてみる?」
私は、アンジュ君とアンヘル君に問いかけると、勢い良く頷いた。
部屋の中にあった、お茶くみセットの中から、スプーンを取る。
瓶の中から、花びらをそれぞれ一枚とって、口の中に入れてあげた。
私も食べたことないんだような。
どうなんだろう?
「甘い!」
「おいしい!」
口の中で、花びらをコロコロと転がしながら、にぱぁと笑った。
うん、いい笑顔。
隣から視線を感じたので、ネロの口にも一つ放り込んだ。
黙っているけど、おいしいんだろうな。
もくもくと口の中で花びらを転がしている。
そうこうしているうちに、フェリシアさんがお茶を選んで帰ってきた。
「お待たせ。入れてきたわよ」
牛乳の香り…
ミルクティーだ。
ミルクティーに花びらを一つ落とす。
すると、温かいミルクティーの中で、花びらは少し溶けた。
フェリシアさんが、人数分作ってくれたので、私は、そのミルクティーに花びらを一枚ずつ落としていった。
「できたわね。」
「飲んでみてください。」
「チヒロも、飲んだことないんでしょ?一緒に飲みましょう?」
んー
お言葉に甘えよう。
私は、フェリシアさんの言葉に頷き、ティーカップを一つ取って、口をつける。
ん…ほっとするような自然の甘味。
それに、ミルクティーから花の香りがする。
これは、ミシュティの花の庭園を思い出すなぁ。
「おいしい…」
しばらく経ってから飲むと、ミシュティを思い出して泣いちゃうかもしれない。
「温かいわね」
「はい。」
やばい、やばい。
もう一つあったんだった。
「あと、これを。」
渡したのは、宝飴の石のドロップが三つずつ入った袋詰め。
それぞれのイメージを独断と偏見で選んだドロップ。
「これは?」
「宝飴の石のドロップです。魔力が宿ったドロップらしいですよ。」
渡すときに、ちゃんと思いを込めて。
健康でいられますように。
楽しく過ごせますように。
…守ってくれますように。
私の思いを込めたことは、わざわざ言わなくてもいいかな。
ちゃんと、宝飴の石のドロップが、私の願いを守ってくれればいい。
ネロが私の方を見てきたが、私は、右手の人差し指を一本立てて、シッっとジェスチャーをした。
よく考えたら両方とも、飴関係。
もしかして、私、センスなかったか?とも思ったけど、その時、ピンと来てしまったのだ。
こういうのは、直感に限ると思う。
「チヒロ、ありがと」
「チヒロ、嬉しい」
双子ちゃんがギュッと抱き着いてくる。
アルバートさんには、頭を撫でてもらって、フェリシアさんは手をぎゅっと握ってくれた。
こんな些細なことだけど、この暖かい場所に少しでも感謝を伝えていければと思う。
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