80話 帰ってきた!
帰国…帰界?
異世界転移装置で、私とネロは、帰還した。
ミシュティをお昼に出て、コスモスでもお昼。
世界は違っても、コスモスとミシュティは時間の流れが一緒だったみたい。
異世界転移装置を出て、大きく息を吸う。
ミシュティのかわいいお菓子の雰囲気や、甘い匂いは、もうない。
本当に、コスモスに帰ってきたんだ。
異世界転移装置だと、あまりに一瞬過ぎて余韻に浸るどころじゃないな。
旅行っていうのは、帰るときに景色を眺めながら、心を整理するものだ。
あまり旅行に行ったことないけど、修学旅行とかそうだった気がする。
……そうだったかな。
寝てたかもしれない。
まずは、宣伝企画課のオフィスに向かおう。
ネロいわく、報告までが仕事らしいし。
オフィスの方へ向かって歩くと、見知った顔を発見した。
「オーロックさん」
私の呼びかけに、オーロックさんは振り返り、私たちを見て微笑んだ。
「帰って来たのか。」
「はい。ただいま、帰ってまいりました」
「初旅行は、どうだった?」
「いい思い出になりました」
ミシュティを思い出し、にっこりと笑う。
思い出すも何も、帰ってきたのは、たった今だけど。
「このまま帰りか?」
「いえ、オフィスに寄ろうかと。」
「あの人たちも、喜ぶんじゃないか?」
「そうだといいんですけどね。」
オフィスに寄ったら、仕事が待っている…
でも、久しぶりに企画宣伝課の人たちに会えるのは嬉しい。
そのために行くと思うことにしよう。
仕事はついで、仕事はついでだ。
「また、改めてご挨拶に来ます。」
「お、おう?頑張れよ。」
オーロックさんと別れ、転送装置を使い、企画宣伝課のオフィス前へ。
なんだか、オフィスに入るの、緊張するんだけど。
「なに、やってるんだ?行くぞ?」
緊張を落ち着けることもさせてくれないの?
オニ猫!
心の声は、届くわけもなく、ネロはふよふよとオフィスに入っていった。
私もネロに続き、オフィスにそっと入る。
手前の部屋には、誰もおらず、奥の部屋の方へ向かう。
通称、修羅場部屋。
ネロがそのまま入っていこうとするので、私はネロを捕まえて抱きしめる。
ネロは、いきなり抱かれたことに驚いたのか、睨んできたけど、気にしない。
ひょっこりと部屋の入り口から顔を出すと、そこには仕事を終えた企画宣伝課の人たちの姿があった。
フェリシアさんは、私に気が付くと、手招きをしてくれる。
「おつかれ様です。有間千紘、ただいま帰りました。」
私の声に、アンジュ君、アンヘル君も気が付き、勢いよく抱き着いてきた。
おおう…
この感じも久しぶりだな。
「チヒロ、おかえり」
「チヒロ、楽しかった?」
アンジュ君とアンヘル君が、抱き着きながら見上げてくる。
かわっ…。
「ただいま。楽しかったよ。ありがとう。」
かわいい二人に、私はにっこりと笑いかける。
「おかえりなさい、チヒロ、ネロ。」
「帰ってきたね、おかえり。」
フェリシアさんも、お帰りと言ってくれて、アルバートさんも課長室から出て来てくれた。
「ただいまです。」
ミシュティも楽しかったけど、この場所は、なんだか安心する。
「わざわざ、オフィスに寄ってくれて、ありがとう。」
ん?
「旅行から、帰ってきたら報告の仕事が必須なんじゃ?」
「そうだけど、今回は初旅行だし、ネロには直帰でいいって伝えてあったんだけど」
え?
ちょっと。
私は、ムッとしてネロの方を見る。
「そう言わないと、いつまでも動き出しそうになかったからな。」
ネロは、悪びれもなく、そう言った。
確かに、準備せずに、ゴロゴロしてたけど。
残業しなくちゃいけないって、思っちゃったじゃん。
くそぉ…
騙された。
ネロに、してやられてたことは不本意だけど、どっちにしろ、企画宣伝課の人たちが恋しくて、オフィスには寄ったんだろうなと思った。
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