77話 シフォンケーキに、ニコリ、ペコリ
私からグラースさんへの反撃に、ビスクートさんは、思い切り噴き出す。
「言われてるよ、兄さん。」
「仕方ないだろ。誰も聞いていないと思って、気が抜けていたんだ。王をやっているときでさえ、敬語を崩したことなかったのに。すべては、ビスクートが悪い。」
恥ずかしがるグラースさん、なんかレアかも。
「いやいや、他の人が近くにいる場所で、自分のキャラを守り切れなかった兄さんの落ち度でしょ。」
「そうねぇ。今回はグラースが、ばらしたみたいなものじゃない?」
「ジェリまでいうか。」
グラースさんって、こんなに慌てることもあるんだな。
再びレア。
「だいたい、義兄と姉に振り回される俺の身にもなってほしい。少しぐらい、俺が振り回してもいいだろ。」
「ちょっと、急に私にまで牙をむいてきたわね。」
3人は、それぞれの主張を繰り広げ、言い合いを始めた。
驚きつつも、ケンカするほど仲がいいと、よく言うし、仲のいい家族なんだろうなと思った。
「ビスクート、お前が」
「姉さんが悪い」
「グラースでしょ」
初めは、そう思って聞いていたんだけど…
長いって。
これ、いつ収束するの?
朝食に招かれて、緊張してたら、まさかの言い合いに巻き込まれた。
何が救いだったかというと、言い合いの最中に、朝食が運ばれてきたこと。
この光景に、使用人の方は慣れているのか、まったく気にしない様子で、朝食を配膳していく。
運ばれてきたのは、種類豊富なシフォンケーキ。
ちらりと、使用人の方を見ると、笑ってお辞儀をしてきた。
それは、どういうアクションですか?
食べていいかな。
このシフォンケーキ、絶対に出来立てだよ。
言い合いが終わるのを待ってたら、冷めちゃうよ。
再び、使用人の方をちらり。
ニコリ、ペコリ
……。
よし、食べよう。
ネロは、ギクリとしたが、言い合いをしている3人を見て、私の手をペチペチと叩いて来た。
ネロも食べる気になったらしい。
中央に穴が開いたふんわりとしたケーキ。
台形に切り分けられたシフォンケーキは、外にしっかり焼き色が付き、中は味によって、マーブルになっているものもあった。
食べやすいように、一口サイズに切り分け、口に運ぶ。
ふわっふわなんだけど。
見た目からも、ふわふわ加減は伺えたが、食べてみると、思っていた以上にふわふわ。
付け合わせにクリームやジャムを用意してくれていて、いろんな味にいろんなトッピングが楽しめる。
ネロの口に運ぶと、ネロの目もキラキラ光っている。
美味しかったんだね。
すぐに、いつものごとく、パシパシと腕をたたかれた。
もぐもぐ
もぐもぐ
まだ、言い合いしてる。
ここまで、話が収束しないことあるんだ。
私は、シフォンケーキを頬張りながら、言い合いの様子を眺めた。
ネロは、全く気にせず、シフォンケーキを食べているし。
しかもさ、そろそろ、お腹いっぱいになってきたんだよな。
どうやって、収束させるのがいいのかな。
むしろ、使用人の方に伝言を頼んで、お暇しようかな。
結局、いつ帰れそうなのかという問題になるんだけど。
すると、食堂のドアが勢いよく開いた。
「私を置いてくなんてひどい」
なんか、暴風みたいな子がきたけど?
すると、3人の言い合いがぴたりと止まった。
他の人が、怒っていると、途端に冷静になるやつじゃない?
メルはビスクートさんの席の隣に座り、プンプンと怒っている。
冷静になった3人がテーブルを見て、私たちのお皿の上を見た。
やば…
ばれた。
すると、それぞれがばつの悪そうな顔をして、目を逸らした。
「えっと…、シフォンケーキ美味しかったですよ。」
すると今までが嘘だったかのように、もくもくとシフォンケーキを食べ進めている。
そして、食べ終わった後に、なぜか3人から謝罪をされた。
確かに、何もお話しできなかっなぁ。
逆に申し訳なくなって、私も謝罪したのだった。
読んでいただき、ありがとうございました!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです。
よろしくお願いします!




