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76話 私、マナーに詳しくありません


気持ちいい朝。

私は、ぱっちりと目を開く。

空は晴れているし、空気はとても澄んではいないけど、甘い匂いが今日も絶好調。

そして、両隣には、癒しの猫と美人が寝ている。

両手に花?

サイコーかよ。

ちなみに、ここまで理解するのに、きっちり30分かかっています。


帰る日の当日だというのに、全く焦る気持ちが出てこないんだけど。

なんでかなって思ったんだけど、そもそも異世界転送装置デゥールを使うと一瞬で帰れちゃうわけじゃん。

焦る必要がないんだよね。

飛行機のフライト時間や船の運航時間に追われる必要もないし。


もう一回、寝ようかな。

そう思っていたところで、ネロが起きる。


「おはよう、ネロ。」

「ん」


寝ぼけてますね。

ネロは、眠たそうな目をクシクシこすって、目を開けようとしている。


「ネロ、まだ寝るの?」

「起きる。帰るんだろ?」


まぁ、そうなんだけどね。


「コスモスに帰って、資料提出するまでが仕事だぞ。遅くに帰って、職場で寝たいのか?」


早く帰る準備をしよう。

それに、一回宿舎に行かないといけないし。

旅行帰りに残業なんて絶対にイヤ。


「メル、起きて。そろそろ、帰ろうと思うんだけど。」


私は、メルを優しく揺すり、起こすことを試みる。


「あぁ?」


えぇぇ…。

寝起き悪すぎだよ。

私も、寝起きいい方じゃないけど、メルは不機嫌になるタイプだったか。

メルが起きるのを待つという案もあるけど、それだと私とネロは、何してればいいの?って感じになっちゃうし、置手紙を残して、いったんお暇しようかな。

すると、ゲストルームの扉がノックされた。


「入って大丈夫?」


扉の向こうから聞こえてきたのは、ビスクートさんの声。


「どうぞ」


私の声にゲストルームの扉が開いた。


「おはよう、二人とも。やっぱり、メルはまだ寝ていたか。」

「おはようございます」

「おはよう」


ビスクートさんは、メルの方を向いて思わず苦笑といった感じ。


「メルが起きないために、二人が困っているだろうなと思ってね。帰る支度もあるでしょ?」

「あはは、メルって案外、寝起きが良くないんですね。」

「すごい目つきだったな」


寝起きが良くないのは、家族内の周知の事実だったか。

あの顔やばかったな。


「あぁ、寝起きの悪さ体験済みだったか。ちょっと来るのが、遅かったね。」

「いやいや、助かりました。置手紙でもしようかと。」

「朝食の準備もあるんだけど、どう?二人が来てくれたら、グラース兄さんや、姉さんも喜ぶと思う。もちろん俺も。」


泊まらせてもらって、朝食までは、さすがに申し訳ないと思ったんだけど、ビスクートさんの相手に気を遣わせない配慮100パーセントの言葉。

というか、むしろ、これで断った方が罪悪感で今後引きずりそう。

ミシュティでは、最後のご飯ということになるのか。


「お前、大丈夫か?お前がいいなら、俺はいいと思う。」


ネロが、不審そうな目で私を見てきた。

え?なにが?

せっかくだし、そんなのお世話になるしかないでしょ。


「お世話になってもいいですか?」

「もちろん。昨日は、二人をメルに取られてしまって。俺らも、異世界の話を聞きたかったのに。」


案内されたのは、食堂。

長い机の上に、テーブルクロスが引かれており、燭台が置いてある。

壁には、絵が飾られていたり、ステンドグラスの窓になっていたり。

うわぁ、こういうの、見たことある。

まさにお城の食堂という感じ。


「おはよう、二人とも。」

「来てくれてありがとね」


既に、グラースさんとジェリさんは、席についている。

しまった。

こういう席順って、マナーがあるんじゃないの?

私は、椅子とにらめっこ状態である。

ビスクートさんが、それに気づき、席まで案内してくれた。

私が案内された席は、右を向くと、グラースさんで、正面にジェリさん。

そして、私の左隣にネロ。


えぇぇ。

ここなの?

グラースさんとは、箸休め料理で一緒にご飯を食べたことがあるが、王様となると話は別じゃない?

この場の雰囲気も相まって、めちゃくちゃ、緊張しますけど。

……やっぱり断ればよかったかもと、失礼な考えが頭の中でぐるぐるしている。

ネロは、やっぱりなという目で見てきた。

分かっていたなら、先に言っておいてほしい。


「ごめんなさいね。緊張させちゃってるわよね。」


いや、うーん。

そうです、なんて言えないでしょうが。


ネロは、私を見て笑いをこらえるのに必死だし。

おい、そこの猫ちゃん。

失礼だぞ。


「こういう場所で、食事したことなくて、それで少し緊張してるのかもしれません。」


そういいつつ、顔は引きつりまくりだと思う。

それを見て、グラースさんは、笑いを耐えながら、会話に入ってきてくれた。


「箸休め料理の時みたいに、気軽に食べてくれ。素手で食べた時みたいに」

「その節は、ほんとにすみませんでした」

「いや、そのくらい気軽で大丈夫。王として関わった時間より、友人として関わった時間の方が長い。むしろ、そうしてほしいくらいだ。」


……確かに、そうだな。

ならば、これだけは言っておきたい。


「グラースさんが、急に口調が変わったので驚いただけです。」


私は、グラースさんに、反撃の意を込めて、にこりと笑って答えた。

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