75話 一生をかけても楽しみ切ることができない「世界」
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「チヒロってコスモス出身の人じゃないんだ。」
「そう。別の世界から来て、今はコスモスにお世話になってるの。」
「そうなんだ。どんな所だったの?」
どんな所かぁ。
「私の住んでいたところは、東の都。高い建物と、人がたくさんいて、夜も光が消えないにぎやかなところだったよ。」
「へぇ、じゃあ世界の重要な場所の一つだったってわけね。」
えっと…。
東京って、「世界」の重要拠点ではないでしょ。
日本の中心地ではあるけど。
しかも、メルの言ってる「世界」と、私が思っている「世界」ってなんか違うよね。
メルの言っている世界って、星そのものというか。
日本は、あくまで国であって世界ではないし、それに地球には、ほかの国もある。
かといって、地球が「世界」かというと、地球の人たちは宇宙にまで視野を広げているわけだし。
待って。
そう思うと、私が住んでいた世界は思ったよりも進んでいて、広かったのかもしれない。
地球の人たちの、知的好奇心は馬鹿にならないな。
メルの問いに関して、結構難しい。
「私のところはね、国という集合体がいくつかあって、それぞれの文化を作っていたの。
住む場所、食べ物、芸術、言語、国によって全然違ったんだ。そして、私が住んでいた国は、さらに細かく分かれていて、そこでも、文化が違うんだよね。食べ物の好みも全然違ったり。」
「すごい世界ね。世界の中に異世界があるみたい。一生かけても、楽しみがなくなることのない世界ね。」
おぉ、なんかおしゃれな言い方。
確かに、世界旅行で名所を回ったとしても、隠れた場所は回りきることができない。
一生かけても、楽しみがなくなることはないということはさ。
一生かけても、楽しみ切ることができないってことでしょ。
そう思うと、人生短いなと思ってしまう。
長生きしたいわけではないけどね。
そして、楽しみ切ることがないまま、宇宙というさらに未知な場所を開拓しに行ってるわけでしょ。
ほんとすごいな。
「行ってみたいな。チヒロの世界。」
「コスモスとのゲートがまだ開いていないみたいで、行く手段が今はないんだよね。」
「でも、チヒロは。」
私の言葉に、メルは首をかしげる。
だよね。
「ちょっとイレギュラーで、コスモスに来たというか。」
そういうと、ネロはジト目でこっちを見てくる。
あれ?そういえば、私の話ってどこまで解禁できる話なんだっけ。
イブの話は、なんかダメそう。
ということは、私の話ほぼダメでは…。
ごめん、ネロ。
「何か事情がありそうね。チヒロの世界、いつか行ってみたいな」
「うん、いつか案内するよ。」
私たちの雰囲気を察して、メルはにっこり笑って話を収めてくれた。
「コスモスって、異世界のゲートが繋がっているし、いろんな世界出身の人がいそうね。」
「そうだな。コスモス出身の人たちもいるが、今は、異世界出身の奴らの方が多いんじゃないか?」
「じゃあ、ネロも異世界出身なの?」
「そうだな。俺も異世界出身だ。」
へぇ。
そうなんだ。
知らなかった。
そう思うと、聞いてみたいことあるんだけど、聞いていいかな。
だって、ネロって、なんか自分のプライベートを聞かれるのが嫌なタイプそうじゃない?
知らないけど。
私が、そわそわしたのに気が付き、ネロはあきれ顔で私を見てきた。
「なんだ?」
「ネロが住んでたところってどんな所かなぁって。」
「大きい樹がたっている、自然豊かな場所だった。」
ネロは、大切な思い出を話すかのように、穏やかに、でもどこか寂しそうな顔をした。
それは、いつも月を眺めているネロのような。
私は、ネロを抱っこして、ネロを撫でまわした。
ネロは、答えてやったのにと、ふくれっ面ですが。
「異世界って、楽しい?私、ミシュティを出たことないからさ。今後必要かと思って。」
「私は、前に言ったように異世界初心者だけど、ミシュティは楽しかったし、コスモスもいいところだよ。」
「前に、ビスクートにも言ったが、今回ミシュティは、新たな文化を取り入れた。新しい物というのは目を引くが、その反面受け入れにくい物だ。今回、成功だと思ったのであれば、ほかの世界のことを知るために、異世界に出ればいいんだよ。もともと、外部交流をあまりしてないんだ。焦ってすべてを変える必要はない。」
「異世界に行きたいって思ったときに、行けばいいって。ゲートならあるんだからさ。」
外交を閉じたことによって、独自の文化を発達させることだってあるしね。
「そうね。ゆっくり、挑戦していくわ。」
「もし、異世界に行くことになったら、コスモスへ来てよ。」
「そうするわ。」
自分たちの故郷のこと、それからお互いのこと、いろんなことを私たちは話した。
お互いのことを知るには、一夜じゃ足りない。
そう思いながら、私は眠気に逆らえず、寝落ちるのだった。
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