74話 お菓子のパーティの次は、パジャマパーティ
メルの本当の名前は、メルーレ・ドゥ・ミシュティ。
お菓子の国、ミシュティの名前をしっかり背負った王女様。
そして、私の友達。
メルの名前を知って、その後に、グラースさんの名前も教えてもらった。
グラース・ドゥ・ミシュティ。
こんなこと言っていいのか分からないけど、グラースさんのことを兄さんみたいって思ってたんだよね。
二人から、改めて挨拶をしてもらい、より二人と近づけた気がする。
身分ではなく、心にだけど。
バルコニーから部屋に戻ると、そろそろお開きの雰囲気。
楽しい時間というものは、永遠に続くわけではなく、ちゃんと終わりが来るものだな。
私は、テーブルの上の空になったお皿を見ながら、そんなことを思う。
メルもその空気を察したのか、私の手を握ってきた。
「メル?」
「あのさ…」
メルは、俯きながら、何かを言いにくそうにしている。
「どうしたの?」
「あのさ、今日はお城でお泊り会をすればいいと思うの」
はい?
「だから、チヒロもネロも今日はお城に泊まりなよ。そしたら、私たちも、明日、お見送りできるし。ね、そうしよ。」
あまりにもメルの押しが強すぎる。
そういえば、メルって押しが強かったような。
いた…いたたたたた。
私の返事に緊張しているのか、握った手がゴリゴリと嫌な音をたてて、悲鳴を上げている。
「メ、メル。落ち着いて。」
「今日で最後でしょ?一緒にいよ」
彼女か。
美少女にそんなこと言われたら、普通に照れるから勘弁してほしい。
私だけじゃないし、ネロにも聞かないとな。
あっさり陥落しそうになったけど、私はまだ冷静だったみたい。
「ネロ、どうする」
「俺は、かえ」
「ネロもお城に泊まりたいよね。」
「……。」
ネロの答えを全く聞かず、笑顔で圧をかけてきた。
あぁ…、ネロの顔もひきつってるよ。
「ね、ネロ。」
「……あ、あぁ。」
「チヒロ!」
ネロが負けた…。
フェリシアさんの時もそうだったけど、ネロって押しに弱いの?
そして、メルはネロの了承を得たことで、目をキラキラさせながら、私の方を見てきた。
「えっと…、迷惑じゃなければ、お世話になろうかな。ねえ、ネロ?」
「あぁ、そうだな…」
私たちの言葉に、メルの顔は、ぱぁっと花が咲いた。
「ほんとに?やったぁ。」
うーん。
まぁ、いっか。
私も、メルともっと話がしたい。
一緒にいたけど、お互いのことを話す機会があまりなかったから、よく知らないかも。
好きな食べ物とか。
そういう些細な事。
そうと決まり、案内してもらったのは、お城のゲストルーム。
まず目に留まったのは大きいベッド。
こんな大きいベッドに寝る機会なんてない。
倒れこんでみると、柔らかいマシュマロベッド。
なにこれ。
体へのフィット感が素晴らしいじゃないか。
私がベッドと戯れている様子をネロはじっと見ていた。
「気持ちいいよ。ネロもおいでよ」
そういうと、ネロはふよふよと飛んで、マシュマロベッドにうつ伏せにポスっと下りた。
下りてから、動かなくなったんだけど…
生きてる?
「ネロ?」
「にゃんだ…」
マシュマロベッドにハマってるし。
人をダメにするほど気持ちがいいみたいな、うたい文句が地球にあったけど、まさにそれ。
「なんでも」
「なんだ」
「だから、なんでもないって言ってるでしょ」
ネロの分かりやすさに、ニヤケを我慢してるんだけど、言葉にまったく説得力ないだろうな。
「明日、帰るんだね。」
「そうだな。」
二人並んで、ベッドにあおむけに横になって天井を眺める。
ガチャ
ゲストルームの扉が開いて、ひょっこりとメルが顔を出す。
「私も一緒に寝てもいい?」
そういうメルは、しっかり寝間着姿で枕まで持参している。
寝る準備万端じゃん。
そんなメルを見て、私は思わず笑ってしまった。
もちろんネロは、そっぽ向いたけども。
「チヒロ?」
そこまで準備万端で訪ねてきたのに、不安そうに眺めてくるメルになんだかおかしくなってしまった。
「いいよ、一緒に寝よう。」
私の言葉に、メルが安心したように、笑った。
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