73話 見た目に騙されちゃいけない
「どうかした?」
「不敬罪に当たらないのかと、不安で。」
私の言葉に、ビスクートさんが、キョトンとしてフフッと笑った。
「まさか、俺らの事情に巻き込んでそれはないって。ねぇ、兄さん。」
「当たり前だな。」
二人の言葉を聞き、一安心。
異世界は、何が起こるか分からないからね。
私が読んでた本は、割と理不尽なものが多かった。
「それにしても、驚きました。お若いのに王様なんて。」
……。
え、なに?
なぜ黙る?
「じゃあ、これを言ったらもっと驚くかもね。」
「なんでしょう…?」
面白いものを見つけたかのように、ビスクートさんがニコニコしている。
この顔はなんだ。
「お菓子の国ミシュティは、グラース兄さんが建てたんだよ。」
え?
えぇぇ?
「お菓子の国の初代王様ってことですか。」
「そうそう。」
ミシュティ新情報じゃん。
「ということは、お菓子の国って、結構新しい国ということですか?」
「ビスクート…。」
??
「誤解させる言い方で悪いんだけど、ミシュティは、お菓子の国ができる前は、自然の多い世界だったんだ。世界自体はそんなに新しくない。」
「でも、お菓子の国の初代王様って。」
「今は、お菓子のエリアが出来て、体制が変わったんだ。城もお菓子の城に建て直したということで、お菓子の国の初代王になったってだけ。」
なるほど。
「それになんだけど、お菓子の国自体もあまり新しいわけじゃないんだよ。」
ん?
「魔力操作だな。変な感じがするとは思ったが、そこまで行くと、変人の域に達してないか?」
「小さいころから、魔力操作は、研究しているからね。」
ネロは何か気が付いたみたいだけど。
どういうこと?
きっと、私の頭の上にはてなマークが浮かんでるよ。
それを見たネロは、ため息をついた。
「ミシュティの人たちは、自分の体内で持つ魔力を操り、活性化させて長寿を保っているんだ。」
え…
今日は、何度、驚けばいいの?
じゃあ、見た目は若くても、思ったより年を取ってるということ?
「ミシュティの人たちは、基本、人族だから、不死というわけではないんだけど、魔力を体内で練って、操ることによって寿命を延ばすことは可能なんだよ。」
「チヒロが思っているより10倍以上は年を取ってると思う。」
グラースさんの説明と、ビスクートさんの言葉にあんぐりである。
え、なに?
私から見て、グラースさんは30代くらいに見えているから…
実際は、300以上ってこと…?
うそでしょ?
それは、ミシュティの皆さん、童顔すぎでは?
というか、魔力の操作を極めると、そんなこともできるの?
確か地球では、仙人は年を取らないとか言われていたような。
仙人って、気を極めた人たちだよね。
それと似たような感じということかな。
魔力=気。
ということは、ミシュティの人たちは、仙人ってことね。
そういうことにしよう。
私は考えることを放棄した。
いやぁ、驚いた。
ミシュティの新事実にも。
魔力の万能さにも。
何事も極めるところまで極めると、理解の範囲を超えてくるよね。
あまりに驚きすぎて、私は疲れたよ。
「あ、みんないた。こんなところで何をやってるの?」
バルコニーの方に、探しに来たメル。
メルも王女様なんだもんな。
不思議な感じ。
「メル。お前も自己紹介しなおしな」
「ん?」
「グラース兄さんが王様だって、話したから。」
「えぇぇ。」
「メル、お前も今の生活が気に入って、そのままでもいいって思い始めた口か」
ビスクートさんの言葉に、メルはばつの悪そうな反応をする。
メルもかい。
グラースさんと反応が似すぎだって。
さすが親子。
「チヒロ。騙そうと思ったわけじゃないからね。チヒロとは、今の関係が好きで、どうしても言い出せなかったというか。」
「気にしてないよ。」
「チヒロォ…」
メルは、思いっきり私に抱き着いてきたので、私は安心してもらえるように、背中をポンポンとたたいた。
「…メルーレ。メルーレ・ドゥ・ミシュティです。」
「メルーレ…じゃあ、メルだね。改めて、有間千紘です。よろしく。」
私は、メルに向かって、手を出し握手をした。
読んでいただき、ありがとうございました!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!




