679話 今日初めて会い、推しになりました
いや、まさかさ。
ワンちゃんの上に、探し犬であるワンちゃんが乗っていると誰が思うよ。
しかも、さっきまで私の上に乗っていたワンちゃんのさらに上に、私の求めていたワンちゃんがいるなんて。
ゴールデンレトリバーが、ティーカッププードルにスリスリと頭を寄せている様子を見て、私はため息をつく。
まさに、灯台もと暗し…だったなぁ。
『まさか、このワンちゃんの上に、ずっと乗っていたって事?』
『乗っていたんじゃないか?大型犬の上に小型犬が乗り込んでいる所を見ていないからな。』
『それって、実質、間接的にティーカッププードルにも、押し倒されていたって事になる?』
『大丈夫か…?』
今まで見たことがなく、写真を見て、推しだと言っていたが、実際の破壊力は、写真の比ではなかった。
こんなのを見て、生きていられるのだろうか。
え?
可愛いんだけど。
小さいんだけど。
目がくりくりしているんだけど。
そして、さらに、ゴールデンレトリバーがアンジュ君とアンヘル君に身を寄せて、ティーカッププードルと戯れている姿が目の前にある。
『どうしよう、ネロ。目の前が眩しすぎて、目があけられない。』
『お前の目は、かっぴらいているから、何も心配ないぞ。むしろ、その真顔をやめろ。』
そっか。
私の目は、開いているか。
そうだよね。
目の前の天使とわんこの戯れを、この目に映しているのだから。
『どうしよう、ネロ。』
『今度はなんだ。』
『私もあの場所に混じりたい。』
ゴールデンレトリバーにモフモフと顔を埋めながら、アンジュ君とアンヘル君に囲まれ、ティーカッププードルを愛でたい。
『お前は、今、冷静じゃない。そんな状態で混ざりに行ったら、大変なことになるからやめておけ。』
『分かった。』
『…そうか。本気で大丈夫か?』
ネロがやめておけと言ったから、素直にやめたのに、止めると言ったら、そのちょっと引いた声を出すのは、やめて貰っても?
『その代わり、俺が混じってきてやるよ。』
『分かった。任せるよ。』
ネロは、私の肩から飛び降りて、目の前の天使たちの戯れに混じりに行った。
…ん?
ちょっと待って。
なんで、ネロが混じりに行くの?
いや、別にいいけどさ。
私にはダメと言っておいて、ネロは混ざりに行くのかい。
「あ、ネロ。」
「ネロも。もふもふ?」
ネロもゴールデンレトリバーのモフモフが気になっていたらしく、ティーカッププードルと同じように、ゴールデンレトリバーの背中に乗り、その場で丸まった。
ティーカッププードルは、その様子をじっと見て、ネロの横にチョコンと座る。
うわ、ズルい。
というか、やっぱり、ネロとティーカッププードル、いい勝負じゃん。
「ちょっとネロ。ズルいって。」
『気持ちいいぞ。』
そんなの見てれば、分かるから。
ゴールデンレトリバー君の毛並み、明らかにいいじゃん。
モフモフじゃん。
フワフワじゃん。
押し倒されたときに、モフっとしたもの。
「ゴールデンレトリバー君。君の背中に乗っている小さいワンちゃんを私に抱かせてもらうことは、できないだろうか?」
ワンワン。
いいの?
ねぇ、いいの?
私は、恐る恐る手の平をティーカッププードルの前に出す。
すると、私の手のひらの匂いを嗅ぎ、手をチョンと乗せてくれた。
私は、その場で固まる。
すると、手の平をフニフニと押す様に、ワンちゃんは私の手の平で遊びだした。
あ、ありがとうございます…
『もう手の平、洗えない。』
『いや、汚いから洗えよ。』
そして、最終的に、ティーカッププードルは、私の手の平に移動して来てくれたので、私はそっと手の平を持ち上げる。
そして、お互いに、じっと目が合い、小さいわんこは、私の手の平の中でクルっと横になった。
私は、ようやくティーカッププードルと戯れられたことに、感動し、でもスリスリと顔を寄せたい欲望をジッと抑えることとなった。
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