678話 推しを探索中
大きいワンちゃん達に、ようやく会話が通じ、ワンちゃん達が私を押し倒すのもやめてくれた。
アンジュ君とアンヘル君、さらにはネロのかわいいところも見られたので、私の目的である、小型犬とのコミュニケーションをとりたいと思った。
トイプードルさんには、撫でさせてもらえなかったけれど、ティーカッププードルさんには、ぜひとも撫でさせてもらいたい。
そして、あわよくば手に乗せて、モフモフさせてほしい。
この部屋のどこかには、いるみたいなんだけど。
どこにいるんだ?
ちなみに、ここまで会いたい、撫でたいと熱望していてなんだが、私は、ティーカッププードルを実際に一度も見たことがない。
写真では見たことがあるんだけどね。
ティーカップの中に納まっているワンちゃんの写真。
だから、実際に見て見たいんだけど。
本当に、どこにいるんだ?
部屋をグルっと見回してみても、見当たらない。
まぁ、そりゃそうか。
ティーカップに入るサイズならば、座ったまま部屋を見回したところで、見つかる訳がない。
私は、その場に立ち上がり、目線をあげて部屋の中を見回してみる。
分からん。
「ねぇ。私、会いたい子がいるんだけど、一緒に探してくれない?」
さっき、私の上に乗っていたワンちゃん達に、声をかけてみる。
ワンと返事をして、私の方をじっと見ていた。
『何を探しているんだ?』
『なんか、このくらい小さいワンちゃんがいるらしいんだけど、その子と会ってみたくて。』
両掌を合わせ、水をくむときのように少し丸めて、サイズを表現してみる。
ティーカップなら、このくらいのサイズでしょ。
ワンちゃんをびっくりさせないようにしつつ、部屋の中を探してみようかな。
意外と、人見知りをしていて、部屋の隅やタンスの隙間に挟まっている可能性もあるんじゃない?
『手のひらサイズの犬なのか?』
『そう。手のひらサイズの犬。』
私は、出来るだけ怪しく見えない様に、チラチラッと部屋の隅を覗いてみたり、棚の下を覗いてみたりしてみた。
もしくは、本当にティーカップの中に納まっているとか?
棚の上に置かれている、玩具を眺めながら、ティーカップを探してみる。
ワンちゃん用のアスレチック、ワンちゃん用のトイレ。
い、いない。
ねぇ、本当に、ここの部屋の中に、ティーカッププードルはいるのか?
私の肩には、ネロがぶら下がり、私の後ろには大きいワンちゃんが二匹、ついて回る。
『は。もしかして、大きいワンちゃんに驚いて、出てこないとか?』
『もし俺なら、お前の存在が驚きで、出てきたくないがな。』
どういう意味だ、こら。
『なんだよ、その顔。当たり前だろ。第一、動きが不審過ぎて、近寄りたくないだろ。』
『ちょっと、こっそりと、いろんなところを覗いているだけでしょ?』
『それが怪しいんだよ。』
はぁ。
怪しくない様に、意識していたのに、怪しいと言われてしまった。
まぁ、コソコソと小さいワンちゃんを嗅ぎまわっている様子は、怪しいか。
はぁーあ。
このまま、ワンちゃんは見つからないのだろうか。
私の服の裾を大きいワンちゃん二匹がクイクイと引っ張る。
「ごめんね。私、いまワンちゃんを探しているの。遊びなら後でいっぱい遊ぼう。」
あぁ、見られないと思うと、余計見たくなるもので。
私の頭の中は、ティーカッププードルによって、占領された。
それでも諦めず、私の服の裾を引くワンちゃん達。
え、ちょおっ…なんか、さっきより引っ張る力が強くないか。
「分かった。分かった。一緒に遊ぼう。」
そんなに遊びたいと言ってくれるのであれば、一緒に遊ぼう。
どこにいるか分からない推しと、身近にいる可愛い子。
うん。
可愛い子と遊ぼう。
私がワンちゃんの頭を撫でると、ゴールデンレトリバーは、ワンと吠えて嬉しそうにしっぽを振ってくれる。
すると、ゴールデンレトリバーが、突然、床に寝そべり始めた。
「え?」
ちょっと?
一緒に遊ぶんじゃないの?
遊ぶ気になっている、このテンションは、一体どうすればいいの。
ん?
背中に何かいる…
いま、モゾッと動いた。
すると、ゴールデンレトリバーの背中から、ひょこっと顔が飛び出してくる。
んんんんん?
「あれ?もしかして…」
『さっきから、この大型犬が、お前に伝えようとしていたがな。』
ええぇぇぇ?
さっきの裾をクイクイする仕草は、一緒に遊んで…じゃないの?
ごめん。
疑ってごめん。
私のために探してくれていたゴールデンレトリバーと、コテンと首を傾げて、私を見上げている小さきワンちゃんを見て、私はその場に崩れ落ちた。
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