677話 大きいワンちゃんに襲われています
「チヒロ、すごいよ。」
な、なにが?
とにかく、身動きが取れないので、アンジュ君、アンヘル君。
どっちか、助けて貰えると嬉しいな…という、願いも空しく、二人は大喜びだ。
「アンジュ君、アンヘル君?」
重い。
苦しいぞ…
「チヒロの背中にね、大きいワンちゃんが乗っているの。」
「わ、ワンちゃん…?」
あ、この重さは、犬の重さか。
でも私の目の前にいる、ミニチュアダックスフンドさんサイズだと、この重さにはならない。
何とか首を動かし、後ろに乗っかっている子を確認する。
そして、体をひねるタイミングで、ワンちゃんがさらに体重をかけてきたおかげで、私はワンちゃんに押し倒され、床に背中から倒れこんだ。
…まさか、ワンちゃんに押し倒される日が来るとは。
『おい。何をやっているんだ?』
『私は、何もしてなくない?むしろ、ワンちゃんに襲われていない?』
まさに、見た通りの状況だと思うんだけど。
あぁぁぁぁ。
ペロペロと顔をなめられて、顔はべちょべちょになっている。
『良かったな。モテているじゃないか。』
いや、どっちかというと、小さいワンちゃんに手を出さない様に、牽制されていませんか?
しかも私は、ぺろぺろと押し倒されて舐められるより、抱きしめてナデナデしたい派なんだけど。
『私が舐められるより、私が撫でたい。』
『その考えがダメなんじゃないか?』
『なんでよ。犬カフェに来て、ワンちゃんを撫でちゃいけないとか、どんな拷問ですか。』
『お前、そこまで犬が好きだったのか?』
犬も好きだが、私はモフモフが好きなの。
『どうせなら、モフモフに埋もれたい。』
『埋もれているじゃないか。』
『これは、埋もれているんじゃなくて、埋まっているの。』
自発的にモフモフするのと、強制的にモフモフするのとでは、全く意味が違う訳。
「チヒロ。このワンちゃん、ゴールデンレトリバーって言うんだって。」
「大きいワンちゃんの種類だって。」
なるほど。
それでこの重さか。
「君は大きいね。」
ワン。
いいお返事だ。
「取りあえず、私を起こして貰えると…そしたら一緒に遊ぼう。」
ワンワン。
うんうん。
とてもいいお返事だけど、どいてくれる感じではない…と。
うーむ。
ガジガジ、ペロペロ。
食われる。
「チヒロ、このワンちゃん、チヒロと遊びたいみたいだよ。」
「チヒロ、ワンちゃん、また来た。」
また来た?
そして、もう一匹大きいワンちゃんが、私の頭の上に顔を出す。
わお。
目の前に大きいワンちゃんが二匹。
『お前な。いつまで犬に倒されているんだ?』
『いや、いつまでだろう?』
すると、突然ワンちゃんが私からどいて、私の横にお座りをした。
え?
なんで?
もしかして、私の下心は許された?
起き上がり、座って、ワンちゃんに手を伸ばす。
すると、手をクンクンと匂いを嗅ぎ、そしてぺろりと舐めて、手のひらにスリスリと顔を寄せてくる。
んんんんん。
可愛いんだけど。
大きいワンちゃんも可愛い。
「おやつ食べる?」
『お菓子を与えようとするな。』
いや、だって、この可愛さは、貢ぐしかなくない?
ほら、見てよ。
この可愛いお目目が、お菓子を買ってくれと言っている。
『俺にも菓子をよこせ。』
『ん?ネロもお菓子、食べたいの?』
さっき、おにぎり食べたよね?
またお腹が空いたのかな?
『あれ?それとも、私がワンちゃんと遊んでいるから、寂しいとか?』
まさかねぇ。
『あほなのか。』
相変わらずの辛辣だなぁ。
『だから、ここでのネロのお菓子は、猫ちゃんお菓子だってば。』
『やめろ。』
やめろと言われてもねぇ。
私は、肩に乗っていたネロの頭を撫でる。
すると、ぎこちなく、私の手のひらに頭をすり寄せた。
うん。
ネロは、やっぱり可愛い。
「僕たちは?」
「俺たちは?」
アンジュ君?
アンヘル君?
「もちろん、アンジュ君とアンヘル君は、可愛いよ。」
そして、アンジュ君とアンヘル君の頭を撫でると、二人も私の手にスリスリと顔を寄せた。
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