68話 これは、どこに行くのでしょうか
商業エリアでお土産を買い、宿舎へと向かう。
なんだかんだ言いつつ、全部のエリアを回ることが出来て、隠しエリアともいえる自然エリアにも行けた。
「あ、チヒロさん。ネロさーん」
「ベニエさん?」
「なんだ?」
宿舎前で、ベニエさんが手を振っている。
なんだろう。
「どうされたんですか?」
「今日の予定を聞くのを忘れていまして、この後、なにかありますか?」
この後は、やることもないので、明日の帰る準備でもしようかなと思っていたところだ。
「特に予定はありません。」
「よかったです。ご案内したいところがあって」
案内?
どこだろう。
まだ行っていないところに、案内してもらえるのだろうか?
「お願いしてもいいですか?」
「もちろんです。」
私とネロは、帰ってきた道を戻り、ベニエさんについていくことにした。
「今日は、何をされてたんですか?」
「アミューズメントエリアに行った後に、観光部の人たちにお土産を選んできました。」
「アミューズメントエリア、行かれたんですね。何か乗られました?」
「ミシュティの風化の刻印が気になって、それを見に行ってきました。」
私が、そういうと、ベニエさんは少し驚いた顔をした。
「変わった楽しみ方ですね。」
「異世界の技術は、私にとってアトラクションと同じくらい楽しいものです」
「なるほど。では、お土産は、商業エリアですか?」
「はい、かわいいお店がたくさん並んでて、楽しかったです。」
歩きながら、今日あったことをベニエさんに話す。
ベニエさんって、聞き上手というか、つい話しちゃうんだよね。
「何を買われたんですか?」
「飴細工の花シロップと宝飴の石のドロップです。あとは、カラメオの氷砂糖ですかね。」
「氷砂糖ですか?」
「はい。透明の氷砂糖と、琥珀色の氷砂糖。瓶に詰められていたんですけど、なんかきれいで、つい買っちゃいました。」
「ミシュティの物を気に入ってもらえてよかったです。」
ベニエさん、ミシュティの話になるとまぶしいくらい笑顔が輝くよね。
そういえば、これはどこに向かっているんだろう?
「今からどこに行くんですか?」
「着いてからのお楽しみです」
ベニエさんが、笑うので、私とネロは、顔を見合わせて首をかしげる。
え?
なんだろう?
しばらく歩くと、城エリアに到着する。
…なぜ、城エリア?
「あの…、ほんとにどちらに?」
「もうすぐ着きますよ。」
城エリアに着いて、もうすぐ目的地というのであれば、目指しているのは…
目の前には、お菓子のお城、クレーム・アラ・シャンティ…
ベニエさんは、私の戸惑いに異を介さず、そのままお城の中に入っていった。
ベニエさん
そこ、立ち入り禁止区域じゃ…。
どんどんお城の中に入っていき、立ち止まる。
「ここですね。」
チョコレートの両開きの扉。
この向こうに何が?
ベニエさんが扉を開くと、メルやグラースさん、ビスクート王や騎士の人たちが笑っていた。
メルの手元には、大きいパイ。
メルが、パイにナイフを入れると、パンと大きな破裂音がして思わず目をつむる。
「チヒロ、見て」
メルの声に恐る恐る、目を開けると、パイの中から飛び出したものが宙に舞っている。
グラースさんや騎士の人たちも、それに続き、パイにナイフで切れ込みを入れると、破裂音がパンパンと連鎖した。
「ようこそ、お菓子の国流、お礼パーティへ」
音が鳴り終え、メルはにこやかに私とネロに告げるのだった。
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