672話 猫と戯れる企画宣伝課
私は、今、皆が猫と戯れる様子を、ネロを抱きながら見ている訳だけど。
いやぁ、ここの猫ちゃんたちは面食いさんだったか。
「見て。私の所にたくさん寄って来たわよ。」
「俺の所も。」
「いっぱい、もふもふ。」
「ふわふわ、いっぱい。」
この部屋の中に、こんなに猫ちゃんがいたのかというほど、企画宣伝課の皆の周りにもふもふ、ふわふわと寄って来て、スリスリとすり寄っていた。
「おぉ、あいつらすごいな。」
「そうですね。」
それは貴方たちもですよ。
私の目の前に座っている、アルバートさんとフェリシアさんも膝の上に三匹の猫を乗せ、アルバートさんの頭には猫が一匹、肩に一匹ぶら下がっている。
フェリシアさんはともかく、アルバートさんは猫のアスレチックと化していた。
他のお客さんたちの方に、猫ちゃんが寄り付かなくなっていますけど、猫を寄せ付けるフェロモンでも身に付けているのだろうか?
正直、この状況には苦笑いである。
それと一つ不思議なことがあって、なぜか私の足元に猫がちょこんと座り、私を見上げてくる猫が何匹かいる。
…私というよりも、ネロを見ているのか?
そして、どっちかというと、私は猫ちゃんたちに威嚇でもされているのか?
私には寄ってこないのに、私の膝上にいるネロには近寄りたい…そんな感じか?
そんなことを考えていたら、いい子にちょこんと座っていた猫ちゃんたちは、なぜか私の足に猫パンチをし始めた。
私の足は、猫ちゃんたちに攻撃され、いじめられているというのに、私の膝の上で呑気に寛いでいるネロは、我関せず。
「ねぇ、ネロと遊びたいみたいだけど。遊んで来たら?」
『いや、いい。』
ネロが良くても、私があまり良くないかな。
いや、私の足があまり良くない。
このままだと、私の足で爪を研がれかねません。
『大げさだな。』
『いやいや、猫ちゃん同士、波長が合っているんじゃないの?』
『虎なんだが?』
向こうからしたら、どっからどう見ても猫だって。
きっと、毛並みのいい猫に見えるんだよ。
『ほっとけば、そのうちやめるだろ。』
いやぁ、止めてくれるかな。
猫ちゃんの嫉妬は、もしかしたら、怖いかもしれないよ。
誤解だと伝えておいた方がいいだろうか?
ネロと私の関係は、いい感じの相棒ですよ…みたいな?
『何、ぶつぶつ言っているんだ?』
『いや、何でもありません。』
はぁ、私の足よ。
どうか無事であれ。
そう思っていると、突然、猫ちゃんたちは動きを止めて、その場にぺたりと座り込んだ。
…どういう状況?
「チヒロの周りも、猫がいっぱいいるな。」
「しかも、ちゃんと座っている。いい子たちばかりじゃない。」
なんで?
さっきまで、私の足を容赦なくパンチしてきて、遊んでいたというのに。
急に大人しくなるなんて、どうかしたのだろうか?
そう言えば、こういう状況、以前にもどっかであったような。
プティテーラにいる時だっけ?
クラト公子と、ネロと最後のナトゥラ観光に出た時に会った、動物たち。
『ねぇ、やっぱり同じ動物同士で、何か心が通じ合っている…とかない?』
『だから、誰が動物だ。』
猫も虎も動物でしょ。
『ネロは動物にモテモテなんだねぇ。』
『何を言っているんだ?俺には何も近づいてきていないだろ。』
『あれ、そう?なら、試してみる?』
私は、ネロを抱え上げて、ネロを床に降ろしてみた。
その過程で、ネロはとても暴れたけれど。
すると猫ちゃんたちは、ネロを見て、背筋をのばし、姿勢よく座りなおした。
アルバートさんやフェリシアさんの所に居た猫ちゃんたちも床にぺたんと座っている。
『ねぇ、ネロ。なんか、動物の世界で、恐怖政治でもやっているの?』
『やっている訳ないだろ。』
「あら?猫ちゃんたち、ネロにとられちゃったわね。」
「やるなぁ。」
いやいや。
やるなぁ…どころじゃ無いって。
なんで、ネロに向かって、猫ちゃんたちが姿勢を正すのか?
『やっぱり、ただならぬ、空気感に猫ちゃんたちは整列するしかなかったの…』
『お前、ふざけんなよ。』
この光景は、あまりにも異様だったので、私はもう一度ネロを抱き上げ、膝の上に回収した。
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