67話 お土産選びは、旅行の醍醐味(だいごみ)
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商業エリア。
そこには、アイシングをしたクッキーの家が立ち並んでいた。
パステルカラー調のアイシングクッキー。
かわいいエリアだ。
「お土産って、何を買うか迷うよね」
「いままで、お土産を買って帰るなんて考えたことない。」
うそでしょ。
旅行行ったら、お土産買って帰るって、常識じゃないの?
もしかしてこれが、今まで地球で刷り込まれた、生き方ってやつ。
そうだとしたら、複雑なんだけど。
「いいの。私が買って帰りたいんだし。初めての異世界旅行なんだから、細かいところまで楽しまないと。旅行は、家に帰るまでが旅行なんだ。」
「お前何言ってるんだ?」
「だから、家に帰るまで、旅行を楽しみましょうねってこと」
ん?
あれって。
私は気になるものを見つけ、駆け寄る。
「これって、花の庭園の飴細工じゃない?」
「正解だよ」
気前のいい店主のおばさんが答えてくれる。
「瓶に入っているのは何?」
「花の庭園特製、花飴のシロップ漬けさ。」
瓶の中には、花びらが詰められており、ふわふわと浮いている。
私が手に持っているのは、バラの花の瓶。
飴のシロップや花のシロップは、聞いたことあったけど、どんな感じなんだろう。
花の庭園特製ということは、宝飴の石の魔力を抽出した、飴細工の花シロップってことでしょ?
「これ、食べられるの?」
「もちろんさ。食べられる宝石で作られているからね。」
これ、かわいいな。
どこもいい思い出だけど、花の庭園は特に思い出深い。
コスモスの人たちにも、こんな素敵な場所があったよって知らせたい。
そして、なによりレビュー。
花の庭園と絡めて書くなら、このお土産はいいんじゃないか?
「どうやって使うの?」
「スイーツに垂らしたり、飲み物に入れたりだね。炭酸水に入れると、甘みがふんわりとしておいしいよ。」
お菓子の国ならではの使い方って感じ。
コスモスでは、お茶に入れてみるのもよさそう。
「ネロはどう思う?」
「企画宣伝課の奴らは好きそうだな。あいつらは、甘いものも、おしゃれなものも好きなんだよ。」
意外だ…
デートに行って、「これどう思う?」って聞いたとき、「いいんじゃないか?」って答える系猫だと思ったのに。
意外とやりますな。
「じゃあ、これをいくつか買っていこう。あとは…」
「まだ選ぶのか?」
「私がここに来るまでに、いろんな人にお世話になってるからね。」
「あぁ…なるほどな」
企画宣伝課の人たちもそうだけど、アスガルさんやオーロックさん、ジェフティさんもそうだし。
あと、ユオにもあげたいな。
小分けが出来て、日持ちがするものがいいんだけど…。
特にユオとか、いつ会えるか全然わからないし。
「これ、いいんじゃないか?」
ネロが指をさしたのは、ドロップの詰め合わせ。
小分けしてあるドロップを袋や瓶に詰めて、オリジナルのプレゼントができるんだね。
販売ポップに何か書いてある。
なになに。
「宝飴の石…。魔力が宿ったドロップです…。ということは、魔力抽出前の宝飴の石ってこと?」
「カラメオの鉱石の時よりは、魔力の量が落ちているが、しっかり宿っているな。続きが書いてある。」
知る人ぞ知る、おすすめお土産
宝飴の石。
魔力が宿ったドロップです。
贈り物にぴったりの品。
魔力にあなたの思いを込めて、誰かに送ってみませんか?
めっちゃ、いいじゃん。
ほんとに、何でここまでいい世界なのに、観光客が減るの?
お土産文句とかサイコーじゃん。
なぜこういうものが、知る人ぞ知るお土産なんだ…。
もったいない。
これにしよう。
これにして、ミシュティの良さをもっと知ってもらおう。
「魔力の量を少なくしているのって、偏った願いだった場合、抑えられるからかな?」
「だろうな。カップルに人気な世界だから、宝飴の石を惚れ薬にされかねない。」
「じゃあ、あくまでも、お守りって感じかな。」
それぞれのイメージカラーの宝飴の石を3個ずつ袋に詰めていく。
これ、袋詰めのタイミングで、願い事するのかな?
それとも渡すタイミング?
どっちだろう…。
どっちでもいいか。
両方、思いを込めとけば。
健康でいられますように。
楽しく過ごせますように。
…守ってくれますように。
「ネロもいる?」
「俺?」
「そう、ネロにもお土産。」
「俺は、ミシュティに来ているが?」
「そういう細かいところ気にしちゃうのは、よくないと思いまーす」
怪訝そうな顔をするネロを無視して、袋をもう一つとって、宝飴の石を詰めていく。
自分で選んで詰めると、満足感が違う。
これで、コスモスの人たちに渡す、お土産完成。
お土産を選び終わり、お店を出ようとしたとき、ふと目に留まる。
「氷砂糖?」
透明の氷砂糖と、カラメオ鉱石と同じ色の、琥珀色の氷砂糖。
私は、その瓶から目が離せなくなり、自分用のお土産として買うのだった。
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