660話 花火は安心安全に
移動した先は、出来るだけ家に近く、そして広い場所。
さらに、花火が出来る場所。
家の近くにした理由は、花火で遊び終わった後に、すぐに家に帰れるように。
花火が出来て、尚且つ家から近い場所…
結構探すのが大変だったけど、この短時間でよく見つけたわ。
企画宣伝課の皆に公園で待っていてもらい、私は必要な物の買い出しに出た。
近くのスーパーで花火セットと水入れバケツに代わるものを買えばいい。
やっぱり安心安全でやってこその、楽しい遊びだからね。
周辺を燃やしたとか、正直シャレにならないから、そういう所はしっかりしないと。
『なんだ、これ?』
『後でのお楽しみ。』
私が持っている物には、思いっきり花火と書かれているんだけど…
バレていないみたいだ。
やっぱり花火のイメージは、球体で固まったのだろうか?
私とネロは、花火セットをいくつか買って、皆が待ってくれている場所へと戻る。
「あ、チヒロ。」
「戻って来た。」
辺りはもう暗くなってきて、皆がいる場所を探すのも大変だけど、ネロの気配探りのおかげで、今回はスムーズに皆と合流。
初めは渋っていたネロだが、今度何か美味しい物でも食べたいね…とさりげなく言ってみたら、不満そうながらも、私に乗せられてくれた訳だ。
美味しい物と、私の見え見えの魂胆の間で葛藤したんだろうな。
「随分、大荷物ね。」
買い物から帰って来た私は、花火の入った袋の他に、小さいながらも燃えない金属製の水筒のような容器をいくつかと、火をつける道具が入った袋を地面に降ろす。
大半は、花火なんですけどね。
選んでいるうちに、いろんな花火を試してみたくなって、カゴにバンバンと花火を入れてしまった。
そして、この大荷物に…
こんな事なら、誰かについて来てもらえばよかったと、ここに向かう途中で思った。
「ねぇ、チヒロ。待っている時に、ここには何もなかったのよ。ここで何をするというの?」
「ちょっと待ってくださいね。」
大分待たせているけど、もうちょっと待って。
今、準備をしてくるので。
容器を持って、周囲を見渡す。
公園だったら、水道と思ったけど…
あたりをキョロキョロ見回しても、暗すぎて何も見えない…
「何か探しているのかい?」
「あ、はい。水が欲しくて。」
「なるほど。」
すると、いきなり手に伝わる重み。
「えっと?」
容器の方を確認すると、水がタプタプと入っていた。
…えっと?
アルバートさん?
「もしかして、使いました?」
「チヒロとの約束だと、誰も見ていなければいいんだろう?こんなに暗ければ、至近距離でもない限り、俺のやった事なんて分からないさ。」
アルバートさんのしてやったりの顔。
いや、うーん。
「それに、水がないとはじめられないんだろう?」
確かに、水がないとはじめられなかったから、助かった。
ここは素直にお礼を言うべきだな。
「アルバートさん、ありがとうございます。」
「いいえ。チヒロが何か考えてくれているみたいだし、水を差したくないだけさ。」
ほう。
アルバートさんは、水を差し入れしてくれましたけどね。
…あははははは。
感謝です。
「さて、準備は整いました。じゃあ、これを持ってください。」
私は、皆に手持ち花火を一本ずつ渡す。
そして、持ち方を説明する。
驚いて、火傷させちゃったら、申し訳なさすぎるから。
まぁ、どんなことが起きるかは、もちろん内緒だけど。
「持てました?じゃあ、火をつけていきますね。」
まずは、一番近くに居たリリスさんから。
リリスさんは、私が持っている物に興味があるのか、花火を持ちながら、私の手元を覗き込んでいる。
「ちゃんと持っていてくださいね。危ないので。」
「ちょ、ちょっと。危ないって、何をするのよ?」
「ちゃんと持っていれば、危なくないので。じゃあ、いきますよ。」
私は、リリスさんの持っている手持ちの花火に火をつけた。
「それでは、花火大会、第二部開始です。」
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