65話 都合が悪いことは、話をそらそう
ミシュティの人たちに渡すお礼の品も完成したため、私とネロは、借りたキッチンの片付けをしている。
ネロがすんなり手伝ってくれたことが、意外だったんだけど、それをネロに言うと、すごく不機嫌そうな顔をして私を見てきた。
「食べさせてもらって、何もしないのは、ルール違反だろ」
ごもっとも、なんだけどね。
やっぱり素直じゃないんだよな、ネロって。
仕方がないから、話題を変えよう。
「ネロは、改めてミシュティ観光どうだった?」
「俺よりお前だろ。初めてだったんだ。どうだったんだ?」
私かぁ、そうだな。
「こんなに寂しいものなのかと。そんなに長い時間、一緒にいたわけじゃないのに、同じ目的を共有していたからかな。すごく、親しくなれた気がするんだよね。だから、離れるのが寂しいかも。観光職員って、こんな感じなの?」
「そんなわけあるか。そもそも、現地でまったく人と関わらない事すらあるんだぞ。今回、が稀なんだ。」
そっか。
言われてみると、確かにメルと関わったのも偶然だったし、そこからグラースさん、ビスクート王に関わることになったのも、メルがいたからだし。
今回、ミシュティで、これだけの人と関わったのって、割と奇跡だったのではないか?
うわぁ、出会えてよかったぁ。
一つでもかみ合ってなかったらと思う、恐怖で鳥肌が立ちそうだよ。
「じゃあ、良かった。出会いも経験も。初めての旅行がミシュティで良かったし、ミシュティで人と関われたことも、そう。」
「…なら、良かったんじゃないか?」
そういいながら、ネロがやさしく微笑んでくれた。
ん…照れるなぁ。
「じゃあ、そんな稀な体験をした、ネロは今回の旅行どうだったの?」
「文化もそうだが、何より今回はミシュティの技術を知ることができたのがデカい。」
「ふーん…で、結局、どう思ったの?」
ネロは一瞬、言い淀んだが、私がジッとネロのほうを見ていると、小さく口を開いた。
「まぁ…、良かったんじゃないか?」
「だよねぇ」
片付けが一通り終わったので、ネロを抱き上げて、よしよしと撫でる。
素直ネロ、いただきました。
「や、やめろ」
「もう、素直になっちゃって」
「はぁ?なんのことだよ。撫でんな。」
ネロは、私の腕から抜け出して、キッっと睨んでくる。
あれ、やり過ぎたか?
「ごめんね」
「お前のその謝罪は、あてにならない。」
確かに…。
何度言われても、ネロを抱きあげるわ、撫でまわすわ、これに関して反省する気がゼロといっても過言ではないな。
「もうそんなこと言わずに、部屋もどろ?」
「当たり前だ、俺は寝る。」
あらら…
秘儀、話し逸らしの術。
「明日は、朝一でアミューズメントエリアに行こうか。」
「職人芸でも見に行くのか?」
「当然でしょ。異世界の技術を放っておけるわけないでしょ。まさか、ポイ捨て問題が、解決済みなんてさぁ、想像しなかった。でも言われてみれば、来た時から、ミシュティって、落ちているゴミなんて、全然見なかったもんな。」
刻印入りのカップ、ぜひとも見てみたい。
他にも、何か技術があればみたいし。
アミューズメントなんて、技術の宝庫でしょ。
行くのをあきらめようとしていた時もあったけど、好奇心が行くしかないって言ってる。
館内見学できればいいんだし、多少は、混んでても平気でしょ、多分。
ネロと二人で明日の予定を立てる。
明日は早く起きて、行列に耐えなくてはいけないかもしれないし、早く寝よう。
そうこうしているうちに、部屋につく。
私は、ネロを捕まえて、ベッドに沈みこんだ。
「お前な…」
「いいじゃん、ネロ、温かいんだもん」
「おい…」
「ネロも寝なよ。お休み。」
ネロの温かさに触れながら、私は眠りにつくのだった。
読んでいただき、ありがとうございました!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!




