60話 秘密を知るのは、命がけ?
「見てみたいですか?」
ビスクート王の言葉に、私とネロは頷いた。
さすがにこの後、行くのは難しいし、騎士の人たちも待たせてしまっているから、また後日、日を改めていくことにした。
そして、約束をした翌日。
ビスクート王から、私たちがお世話になっている宿舎に連絡が届いた。
そして、私とネロは、クレーム・アラ・シャンティへと向かった。
「お待たせして、申し訳ありません」
「いえ、急な連絡でしたから。さて、行きましょうか」
ビスクート王に案内されたのは、一般立ち入りができない城の裏側。
城の裏側は、外側を守る城壁と、城の壁に挟まれ細い空間が出来ていた。
裏側って、庭みたいになってるのかと思ったけど、城壁とお城がこんなに近かったんだ。
こんなところに、ミシュティ始まりの石があるのかな?
「こっちです」
ビスクート王の声の方に行くと、城壁の部分に、人一人分くらいのチョコレートの扉が付いていた。
そこを開け中に入ると、また目の前は、壁。
これは、ミシュティの外壁かな。
城壁と外壁に挟まれて、なんだか路地裏みたい。
しばらく歩くと、また扉。
今回は、ホワイトチョコレートの扉。
外壁の白いチョコレートブロックに隠すようにして、ホワイトチョコレートの扉がつけられていた。
城壁から、外壁に出る扉の方は、チョコレートで分かりやすかったのに。
白い壁に、白い扉。
しかもどちらもチョコレート。
扉の存在がバレないように、カモフラージュしてるのかな?
「ここから入ります」
ビスクート王が、示したのはチョコレートの扉ではなく、地面。
あれ、そっち?
「そちらの扉は、自然エリアに続く扉です。そういう作りにしておくと、いかにもそちらに何かありそうでしょ?」
た、確かに…。
私も、普通にホワイトチョコレートの扉の方に、目がいったな。
「ここから、下に行きます。」
ビスクート王が、地面に置いてあるチョコレートの木の箱をどかし、指をさす。
そこには、ぽっかりと穴が開いていた。
「私が声をかけたら、入ってきてください。それと、気を付けてくださいね」
念を押すように言うビスクート王を不思議に思ったけど、気を引き締めた方がいいってことだよね。
少し待つと、ビスクート王のいいですよ、の声が聞こえた。
よし。
気合十分で、ビスクート王の後に続き、穴の中に入った。
ズリッ
え?
「ちょ、えぇぇぇぇぇ!?」
思いっきり、足を取られる。
ヤバい、これは、落ちる…
「気を付けろと言われただろうが。なんで勢いよく、穴の中に入っていくんだよ」
ネロ!
ネロが私のことを落ちないように、服の首元を引いてくれていた。
…ありがとうネロ…でも、首が閉まりそうだよ
相変わらず、その小さい体のどこに、そのパワーを持ち合わせているのか、全然わからないんだけど、ほんとに助かる。
…首が閉まってるけど
「ネロ…苦しいです」
「掴むところなかったんだ。仕方ないだろ」
私が掴むところを見つけると、ネロは首元を離してくれた。
「うぇ…ありがとう」
「気を付けろと言われたんだから、慎重になれよ」
「何か出るかもしれないから、気合入れろよって意味かと思ったんだよ。」
はいはい。
ネロのジト目いただきました。
くそぉ、分かったよ。
気を付けるって…
それにしても、何ここ。
入ってきた穴から、ほぼ垂直に道が続いている。
道…?
崖でボルダリングみたいな感じ?
救いなのは、そこまで高くないということ。
建物、2.5階くらいかな。
そこまで高くないといっても、落ちたら普通に怪我はすると思うけどね。
命綱をください…。
「大丈夫ですか?」
下の方から、ビスクート王の声。
ビスクート王は、ケロッとした顔で、この穴を下りきり、私たちを見上げていた。
アクティブすぎる王様だな。
そして、私の横には、穴の高さなんて関係ない、ふよふよと浮かんだネロ。
二人に見守られながら、この穴を下りていく。
ズリ
ズリリ
ズリリリ
滑り落ちながら。
えっと…
怖すぎでは?
何より、壁の方を向いてるため、あとどのくらい下りればいいのか分からない。
「ネロ、あと、どのくらい?」
「あと少しだな」
さっきから、ずっと、あと少しなんだけど。
こいつ…。
「おつかれ様でした」
私は、なんとか穴を下りきり、体育座りを崩したような体制で、地面に座り込んでいる。
上の方を見ると、下りてきた穴が見えた。
上から見ると、あんなに怖く見えたのに、下から見るとそうでもないな。
不思議。
そんなことを考えていると、ふんわりと香る甘いにおい。
あ…ミシュティの匂いより甘さを濃くした感じ。
「この先が、目的地です。」
やっぱりそうか…
匂いで分かる。
「甘い匂いが強いので、こちらをどうぞ。」
ビスクート王から渡されたのは、マスクだった。
マスクをつけてみると、匂いが弱くなる。
このマスク、すごいな。
「ありがとうございます」
「いえいえ、さて。行きましょうか。」
「はい!」
いざ、カラメオの洞窟へ。
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