58話 ポイ捨て問題解決法
「それで、こちらの三品をミシュティで販売すればどうかということですね」
あ、そうです。
そうなんですけど…
この状況で話し進めるの?
ビスクート王は、フライドポテトを食べながらだし、王の了承を得て騎士の人たちにも勧めたんだけど、騎士の人たちもひたすら食べてるし。
新しいものって、食いつきがいいな。
「いいと思いますよ」
え、ほんとに?
グラースさん、私、やりましたよ。
ビスクート王の言葉を聞き、グラースさんの方に振り返る。
グラースさんは、優しく微笑んで、親指を立て、グッドポーズを送ってくれた。
これであとは、グラースさん達に、
「ただし、販売方法までお任せしますね。」
おっと…
任せるだけではなくなった。
「販売方法、この食べ物たちを効果的に売るには、どのように売るのが一番ですか?」
それは、もちろん。
「屋台販売ですね。フライドポテト、じゃがバター醤油、野菜スティックの出店をエリア1から6の入り口あたりに置き、ふらっと立ち寄ってもらえるようにするんです。食べ歩きをしながら、次のエリアに向かってもらうことも可能なので、箸休めに時間を取られることもありません。」
私は、食べ歩き最高って本気で思ってるから。
だって、ご飯食べるのに時間を取られるの、嫌だし。
その思いからか、どうしても熱弁になってしまうんだけど。
「それからいくつか注意なんですが、野菜スティックはともかく、フライドポテトと、じゃがバターは意外とおなかにたまりやすいので、量は調節した方がいいです。」
そして、これが最大の難敵になるだろう、ごみのポイ捨て。
「あと、食べ歩きをよしとすると、フライドポテトを入れていた容器などのゴミが出てしまいます。容器回収ボックスを作るなど、とにかく、ここを対策した方がいいです。」
道を歩けば、ごみに当たるくらい、ポイ捨てが多いから、ここの対策はしっかりしたい。
「そこについては、ミシュティ独自のゴミ処理法があるので」
「独自のゴミ処理法?」
私の問いかけに、王が一人の騎士に合図を送り、その騎士は部屋を出て行った。
なんだ?
戻ってきた騎士の手に握られていたのは、一つの小さい容器。
「はい。アミューズメントエリアでは、すでに食べ歩きを良しとしていまして、この容器は、そこで採用しているものなのですが、容器に魔力操作で風化の刻印を打ってあるんです。食べ終わった容器を折ったり、握ったりの衝撃を与えてもらえれば、風化するようになってるんです。」
ポイ捨て問題、すでに解決してたんだ。
というか、アミューズメントエリアってそんなことしてたんだ。
これは、行列に並んででも行くべきだった。
他にも、ミシュティ独自の技術があったかもしれないのに。
「これは、すごいな。」
ネロが容器を見ながら、呟く。
「すごいって?」
「この容器のことだ。お菓子の建造物や、植物を見て思ってはいたが、ミシュティの人たちは、魔力操作の達人だな。」
「達人?」
「あぁ。俺が見る限り、魔力の量がとびぬけて多いというわけではなく、戦闘が強いというわけでもないが、自分自身が持っている魔力と他の物をつなぐ共鳴、そして共鳴したものを操作するのがうまい。魔力操作をよく知っているという感じだな。」
「とびぬけたものがあるわけでもなく、達人なの?」
「あぁ。達人は天才とは違う。あの王は、簡単そうに言っていたが、これの容器を作るのに必要なのは、技術者のやるような職人芸だ。それを観光客分、作っているなら、それはもう達人だろ」
魔法だからって、簡単なわけじゃないんだ。
お菓子の国という夢には、積み上げられてきたものがあるんだと思った。
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