56話 初・王様との謁見
城の内部は、外部より派手に作られていた。
外観は、ブロックレンガ状のケーキのスポンジ生地を、一つ一つ生クリームで塗り、積み上げられていて、装飾も生クリームと、シンプルだったけど、内部から見ると、窓には色付きの飴細工のステンドグラスや、壁に飾られたお菓子のドットアートなど、ゴテゴテした雰囲気である。
頭上には、大きいシャンデリア。
あれはいったい何で作られているんだろう。
ガラスみたいなものは、飴細工だから、シャンデリアも飴細工で出来てるのかな。;
足元には、赤い絨毯が引かれており、しゃがんで触ってみると、ふわふわ、もふもふのマシュマロ絨毯だった。
お菓子の建造物は、植物と違って触れることができる。
一応、壊れないように魔力でコーティングしているみたい。
「こっちですよ」
グラースさんに促されて、どんどん奥へと進んでいく。
するといかにも、この先、王様がいますと言いたげな、両開きのクッキーの扉が現れる。
ドアの目の前には、鎧を着て腰に剣を携えている騎士が二人、ドアの両端に立っていた。
騎士の人たちは、私を見て、伺うように頭を下げた。
私も、しっかりお辞儀を返すが、なんだかとてもいたたまれない。
なんでこんな所に、こんな人がいるんだろうって、思われてるんだろうなぁ
分かるよ。
場違いな雰囲気、出てるし。
戸惑うのもわかる。
私も、この扉を目の前にして、正直戸惑っているから。
グラースさんは、騎士の人たちに声をかけ、扉を開けてもらう。
心の準備をさせてください。
私の叫びは、聞き入れられることはなく、扉は開いた。
扉が開くと、コンサートホールのような広い空間。
足元は、まっすぐに伸びた赤いマシュマロ絨毯が敷いてあり、その先に玉座が一つ。
そこに、人が座っていた。
「お連れしました、観光部の方たちです」
グラースさんが、王様に向かい、胸に手を当て軽くお辞儀をした。
ミシュティの王様は、その様子に軽く眉間にしわを寄せ、ため息をつく。
私も慌てて、グラースさんの真似をしたんだけど、これで合ってるのかな?
せめて、最低限のマナーくらい、初めに教えてもらっておくんだった…。
知らなかったです、で済まないのが世の中の理…。
これで、不敬罪だって言われるのは、嫌すぎる。
それにしても、グラースさんは、いったい何者なのでしょうか…
お城という、雰囲気が全く違うところに来ても、グラースさんはいつも通り。
メルもこの空間に何も感じていないみたいだし。
メンタル強いな。
そして、私の横を、ふよふよと浮かんでいる猫ちゃんも。
緊張している私が、バカみたいじゃないか。
え、こういうところって緊張しないの?
不本意すぎる。
「よく、来てくれましたね。顔を上げてください。そして、そんなに緊張しないでください」
王様から言われた通り、顔を上げる。
やっぱり緊張しているように見えたか。
だって、心臓バクバクだもん。
指摘されて、少し落ち着くことができ、先ほどまで、全然頭に入ってこなかった、王様の顔を改めて認識した。
大分、失礼なことを言ってる自覚はあります。
緊張による内心パニックで、新しい情報が全然頭に入って来なかったの。
許してください。
改めて、王様をしっかりと認識する。
髪型は、明るい茶色のくせ毛ショートヘアで、襟足を下の方で束ねており、目はダークブラウンのつり目。
見た目の印象は、少し幼い気もするが、丁寧な口調が大人っぽく見える。
王様というより、王子様というイメージがあるな。
絶対に口に出して言えないけど…。
「申し訳ありません。こういう場所が初めてなので、ご挨拶もしっかりできず。」
「お気遣いなく」
気は使わせてくれよ。
失礼がないか、気が気じゃないよ…。
こういうの、ホントになれないなぁ。
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