55話 旅行ガイドがいると、より楽しい
王様に会うことを了承すると、グラースさんは、そうと決まれば、さっそく行きましょうのテンションで、グイグイと話も行動も進めていった。
メルも、先ほど作った三品と材料を、深めのバスケットの中に入れ準備万端。
グラースさん宅を出て、自然エリアを抜け、再びお菓子エリア、チョコレートの森に戻ってきたのである。
のどかな風景からガラッと変わり、あたりはチョコレートの木が生い茂っていた。
これが、宝飴の石の魔力と植物を交じり合わせた木か。
ミシュティの話を聞いて、よりロマンを感じる。
このチョコレートの木も成長しているってことでしょ?
はらはらと落ちるチョコレートの葉っぱを捕まえた。
魔力の影響が薄くなった葉っぱ。
見た目がチョコレートってこと以外、ほんとに葉っぱなんだよね。
葉脈だっけ?
ちゃんとあるし。
「それ、食べられますよ」
「そうなんですか?」
そういわれると食べたくなる。
「いままで魔力でコーティングされていましたから、外部からの汚染もありませんし、今は、その葉の魔力の力も弱まっていますからね。」
お菓子の植物にとって、魔力は生命力と同等であり、魔力を流す本体、木でいうところの、幹の部分から離れてしまうと魔力が受け取れなくなって、次第に枯れていくということかな。
改めて聞くと、ほんとに生きているんだな、このチョコレートの木。
魔力が弱まると触れられる。
魔力は外界から守るためにも、使われているってことね。
そして、食べることができる。
実際に、目にしながら説明してもらうと分かりやすいかも。
葉っぱを眺め、そして口へと運ぶ。
口の中に入れると蕩けだすチョコレート。
うん、おいしいや。
思わず笑みがこぼれる。
甘いものってやっぱり偉大。
ほどほどは大事だけど。
ネロも、木から降ってくる葉っぱを捕まえては、もぐもぐと食べていた。
チョコレートの森を歩き、抜けると、今度はカラフルなお菓子の世界。
マシュマロと砂糖の道を通り、綿菓子の並木道を抜け、噴水広場の方へ。
噴水を覗き込むと、キラキラした宝石が底に沈んでいる。
これが、カラメオ。
宝飴の石で、魔力を抽出し終わったものね。
これが、お菓子の国を作っていると思うと、すごいな。
こんなに小さな宝石なのに。
そういえば、これも食べられるんだっけ?
「そこにあるものは、魔力が切れてから、結構外気に触れているので食べない方がいいですよ。」
なるほど。
魔力は食材の質にも影響しているのね。
もしかしたら、冷蔵庫いらずになるんじゃないか?
それにしても、現地の案内ができる人と一緒だと、より楽しめるからいいな。
旅行ガイド大事。
噴水広場の奥、城エリアに入る。
ケーキの邸宅を抜け、見えるのは、お城の城壁。
城壁を抜け、お城の庭へと入る。
結局、私とネロは、観光のとき、ごった返した人が嫌で、ここまでしか見れていない。
時間的に、まだ明るいのか、言い伝えの場所も、そこまで混んでいなかった。
やっぱり、夜の方がロマンティックでいいのだろうか?
お昼でも、お互いの顔がよく見えるし、ここまで落ち着いているなら、愛をささやき合うのも成功するんじゃないかな。
夜は、見れたもんじゃなかったし。
「大丈夫ですか?」
階段の上の方に気を取られていると、グラースさんに声をかけられる。
「すみません。平気です。」
グラースさんに案内されるまま、私とネロはついていき、一般開放されていないお城の中へ。
王族が暮らす場所
お菓子の城、クレーム・アラ・シャンティの立ち入り禁止区域に入っていくのであった。
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