54話 王様との謁見?そんなのお断りです。
評価、ブックマークいただきました。
ありがとうございます!
絶対ヤダ!
絶対に無理!
私は、全力で否定を繰り返した。
遡ること、少し前。
「今作った三品が、私が考えた箸休め料理なんですが、どうでしょう?」
「新しい料理というのがいいですね。甘さの中に違う味を感じることができる。」
「それに、とても食べやすいわ。」
そう。
食べ歩きができるように、食べやすい物を考えてみたのだ。
フライドポテトやじゃがバターは、お祭りの屋台の定番だし、野菜スティックは、何かしながら片手間で齧ることができるし。
割といいんじゃないかな。
お店を一店舗構えるというより、気軽に寄れる屋台の方が、ミシュティに合ってると思う。
食べ歩きがお行儀悪いとか、そんなの知らん。
あ、でも所々にゴミ箱は設置した方がいいだろうな。
ポイ捨てする人たちが出てくると、せっかくの、夢のようなお菓子の世界から覚めてしまう。
どうやって売るのか、そういう方面は、グラースさん達に任せよう。
私の仕事は、ここまででしょ。
私は一人、ホクホク、満足感と達成感に浸っていた。
「ありがとうございます。それで、もう一つ力を貸していただけると嬉しいのですが」
「はい、何でも言ってください」
なんだね、言ってみるがいいよ。
今の私は、機嫌がいいから、大抵のことはやるよ。
「この料理をミシュティに広めるために、会っていただきたい人がいるんです」
……。
会ってほしい人?
商業ギルドみたいなところの、お偉いさんとか?
それで、販売許可書とか発行して貰うやつかな?
販売許可書もなにも、販売するのは、私じゃないしなぁ。
思わず、顔がにやけてくる。
そんなニヤついた私を、ネロは、野菜スティックをくわえながら、ギョッとしていた。
失礼な奴め。
というか、まだ食べてるんかい。
食いしん坊なの?
ネロの食べっぷりに気を取られてしまったけど、今の展開、少し転生物の物語っぽくなったんじゃない?と、調子に乗ったのが悪かった。
「ミシュティの現王に会ってもらおうかと」
「お断りします」
………。
私の、間髪入れない返答に空気が凍る。
私は、思わず脊髄反射で答えてしまったのだけど、王様に会うのはちょっと荷が重くないかい?
ミシュティの王様って、このお菓子の国を支えている人でしょ。
すごい人じゃん。
いやぁ、いいよ…
大丈夫、私は、一観光客として、何事もなく帰るんだから。
「先ほど何でも言ってくださいと」
……はぁ。
なぜ、いつも最後まで読む、最後まで聞くができないのかなぁ、私は。
答えは、調子に乗ったり、浮かれたりするからなんですけど。
分かってますけど。
「お願いします。」
「会って何をするのでしょうか」
「会って、今の料理を作っていただきたいのです。」
絶対イヤ。
絶対に無理。
いまここ。
えぇ、嫌だけども?
「いやいや、レシピ教えるので、そこは、グラースさん達にお願いしたいんですけど。」
「王が食べるものに、妥協は許せませんし」
なら、なおさら、私じゃダメでしょ。
なんなのだろう、この妙な信頼のされ方。
もしかして、餌付けか?
「私が作るよりプロの方に作ってもらった方が…」
「観光部の方に是非お会いしたいと言ってましたよ」
あぁ…なるほどね。
ということは、料理はついでで、そちらがメイン?
観光部の肩書すごすぎでしょ。
「観光部は王様にまで会えちゃうんですか?」
「そんな訳あるか」
ネロにこっそりと聞くと、はっきりと否定された。
違うのね。
「会ってもらえますよね?」
「…はい」
結局、グラースさんの圧に負けて、ミシュティの王に会うことになったのである。
是非、何事も起こりませんように。
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