53話 ポリポリポリポリ
野菜スティック。
はっきり言って、料理といっていいのか分からないくらい簡単である。
野菜、大根、ニンジン、きゅうりを洗う。
大根、ニンジン、きゅうりを切る。
以上。
食べてみようかな。
きゅうりを一本取って口に運ぶ。
……
ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ
ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ
野菜特有の甘みがすごい…
ニンジンも大根も食べてみたが、甘いね。
ミシュティの食べ物は、甘いことをベースにできてるのかも。
もちろん、お菓子のような甘さではないよ。
このままでも、普通に売れる気がする。
でも、念願の味噌。
みそ汁を飲みたかったけどあきらめた味噌。
味噌を使うしかなくない?
そのまま野菜スティックに味噌をつけて食べてもらってもいいと思うけど、味噌もしょっぱいし。
ということで、味噌マヨを添えてのマヨを作ろう。
マヨの材料は、
卵の黄身と油、それからお土産の塩とお酢。
まずは、卵、塩、酢を入れて混ぜる。
油を入れて、混ぜる。
確か、マヨが固まる理由って、卵がいてくれるからって聞いたことがあるな。
油とお酢だとめちゃくちゃ仲悪くて、混ざらないけど、卵が間に入るとしっかりと混ざり、仲良くしてくれるらしい。
卵も苦労してるんだね。
ご苦労様です。
だって、人間関係というか恋愛関係に例えたら最悪よ?
間に挟まれるのがどれほど大変か。
そして、面倒くさいかってこと。
私を挟んで、混ざりあうなって感じじゃない?
「おい…」
「何」
「手に持ってるもの降ろしたらどうだ…?」
そんなことを考えていたら、ネロに声をかけられて、そちらを向く。
ネロは、顔を引きつらせながら、私の手元を指さしていた。
手に持っているもの?
自分の手元に目線を持っていくと、そこにはポッキリと折れたきゅうりさん。
いつの間に私は、きゅうりを握っていたの?
もしかして、そこら辺に置いてあったものを無意識につかんだとかかな。
ちゃんとしてるのか、してないのか、分からないけど、残しておいたまま、まだ切っていないきゅうりを握っているあたり、なんかへし折りたいという執念を感じるけど。
それに、きゅうりを片手でへし折るほどマヨの人間関係(食材)にイラついていたのか。
ごめんね、きゅうりさん。
ちゃんと食べるからね。
私は、きゅうりにしっかりと謝罪をして、横に置く。
先に、味噌マヨを仕上げちゃおう。
味噌に、先ほど作ったマヨネーズを入れて混ぜるだけ。
一口食べて、味を確認。
マヨネーズ入れると味噌のしょっぱさがマイルドになるよね。
マヨネーズ単体だと食材関係がドロドロなのに、他の材料の時は、ちゃんと角が取れるんだから、やっぱり、マヨづくりの時の卵さんの苦労は計り知れないな。
味噌にマヨが嫁いだ感じ?
マヨも大人になったんだね。
先ほど握ってしまった、きゅうりに味噌マヨをつけて一口。
うまぁ…
卵さんありがとう。
あなたのおかげで、マヨはおいしくなることができました。
これは披露宴だわ。
頭の中では、そんなこと考えつつも、ネロの口に差し出す作業も慣れてきて、ペシペシされる前にスタンバイ完了。
ネロは、口を開き、ポリポリと頬張る。
よく考えたら、ネロって、野菜スティック持てるんじゃないか?と思わなくもないけど、食べさせる作業を要求されるので、口元に定期的に運んであげるのだった。
食べるのが、面倒くさいだけでしょ、まったく。
おいしそうで何よりです。
文句の一つや二つ言いたくなるが、メインはネロじゃなくて、グラースさんとメルだし。
二人の方にも、野菜スティックと味噌マヨを載せたお皿を差し出す。
「これも森で採れた食材ですよね」
「はい。白色が大根、赤色がニンジン、緑色がきゅうりです。」
「この横の物はなに?」
「味噌マヨって言うんだけど、この食材たちにお好みでつけて食べるものかな。つけすぎ注意で。」
二人はまた、おそるおそる口の中に運んだ。
「この食材たち、食感が楽しいです。」
「この、味噌マヨというものおいしい。味噌のときは、ピリッとした感じが強かったけど、味噌マヨになると甘くなるのね。」
ポリポリ食感、平気だったか。
青臭いとか、生っぽいものが苦手なら、最悪、湯通ししちゃおうかなと思っていた。
味噌マヨは、味噌より馴染みがよさそうって思ったけど、正解だったね。
「こちらの料理はどうでしょう?」
私の問いかけに、グラースさんとメルは、にっこりと笑ってくれた。
高評価はもらえたけどさぁ。
比較的、簡単でコストも時間もあまりかからないものでチョイスしたけど、ジャガイモ料理のほうはともかく、転移先で料理するのが、野菜スティックって、どうなんだろう。
せめてもの抵抗で、味噌マヨをつけたけど。
私が読んできた異世界物の料理は、もっとオシャレなはずだったんだけど。
私も、何か凝ったもの作りたかった。
まぁ、作れないんですけどね。
転移先でも、ままなりませんな。
ポリポリ
私はきゅうりを齧りながら、そんなことを考えるのであった。
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