482話 笑顔でお出迎えされました
シン王子やアルビナ令嬢が見えなくなったかと思うと、私たちはコスモスへと着いていた。
さっきまで見えていた、水の都は姿を消して、コスモスの機械だらけの異世界転送装置が置かれている場所が目に入る。
本当にコスモスに帰ってきました。
「お、帰って来たのか?」
装置から出ると、後ろから声がかかり、声の方へと振り向く。
「お帰り。元気そうだな。」
「オーロックさん、お久しぶりです。」
「お前も相変わらず元気そうだな。」
ネロの言う通り、オーロックさんは、とても元気そうに見えた。
前髪を上にあげて、おでこを出し、サイドが外にはねたスタイルが、よりそう見えるのかもしれないけど。
「あったり前だろ?コスモスから異世界に出発する奴も、異世界から帰ってくる奴も、必ずここに来るんだぜ?渡航課の課長として、元気よく見送って、元気よく迎えてやりたいだろ?」
あまりにも何でもないようなことのように言うオーロックさんに、ネロはキョトンとした後に、ニヤリと笑った。
「お前、言うことカッコいいな。」
「な、なんだよ。お前たちも元気に明るく見送ってもらって、楽しそうにお出迎えしてもらった方が、良いだろ?」
そして、ネロに褒められたオーロックさんは、先ほどとは、うって変わり、顔を真っ赤にして、バツの悪そうな顔をしている。
オーロックさんにとっては、笑顔での見送りもお出迎えも、どちらも普通で、指摘されるようなものでもないのだろう。
そして、普通だと思っていたけれど、普段の滅多に褒めないネロが、ボソリと誉め言葉らしきものを零すから、オーロックさんの心にグサッと刺さったんだろう。
ネロに褒められると嬉しいもんね。
オーロックさんの気持ちも分からなくはないよ。
そして、私的には、元気な見た目、美少年が笑顔でお出迎えをしてくれた後に、本気のテレ顔が見れたことが、大満足なんですけどね。
こんなことを言ったら、オーロックさんは顔を隠してしまうだろうから、絶対に口に出しては言わない。
私は、微笑ましそうにネロとオーロックさんを見つめていればいいんだ。
「あーもう。俺のことは、もういいんだよ。早く企画宣伝課の奴らに顔を見せてやりなよ。二人とも、今回はミシュティの時よりも、長期滞在だろ?きっと二人の顔を見たいと思うよ?前回よりも帰ってくる時間も早い訳だし、顔を出すくらい出来るだろ?」
もちろん、その予定だ。
旅行帰りは、直帰でいいよって言われているんだけど、どうしても企画宣伝課のみんなの顔を見たくなっちゃうんだよね。
「あ、アスガルから聞いたぞ?」
「何をですか?」
「チヒロとネロが、無事に任務を達成していて驚いたって。」
任務?
首を傾げると、オーロックさんはニヤリと笑う。
「プティテーラの王族とも仲良くなったって聞いたけど?ミシュティの時といい、今回の事といい…お前たちは、王族を寄せ付ける香りでも出ているのか?」
出ているわけがない。
そんなものが出ていたら、怖すぎるでしょ…
「それならば、チヒロが大立ち回りをして、今回も無事いろいろと巻き込まれ、結果仲良くなったという感じだな。」
「お、やっぱり、チヒロかぁ。」
違う。
大立ち回りなんてしていないし、まぁ、いろいろ巻き込まれた結果、仲良くなったのは本当だけど、決して私のせいではない。
「ミシュティの時も、今回もたまたまです。私のせいじゃないですよ。」
「たまたまで王族と仲良くなってくるんだから、チヒロもやるよな。コスモスの上層部も度肝を抜かれているだろうな。そうしたら、交渉役とか任されることになったりして。」
いやいやいや…
もう、いいよ。
楽しかったけど、大変だったし。
もし任されるんだとしても、しばらくはいい。
「あはは…その時も運がいいことを願いますよ…」
「企画宣伝課でも同じような事を聞かれるだろうな。頑張れよ。」
え、まって?
やっぱり、今日はそのまま帰ろうかな…
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