48話 まさか、ここにあるなんて
やると決めたからには、まず状況を整理したいよね。
「私とネロが、感じた食文化の違いについてなんですが、お二人の意見はどうですか?」
「そうですね、ミシュティでは、甘いお菓子以外を食べる文化がありません。外部との交流もほとんどないので、気が付きませんでした。」
「私も、チヒロをここに案内するまでに、水辺や森に食べられるものがあると聞いて驚いた。」
来てもらうことはあっても、他の世界に行くことはほぼないって、確かメルは、言ってた。
「メルに少し聞いたのですが、他の世界に行かないのは、帰ってくる人が少ないからでしょうか。」
「そうですね。帰って来ないんです。だから、ミシュティの住民たちは、異世界には、危険があるのかもしれないという意識があるみたいで。」
「それでも、異世界の人は受け入れているんですよね。」
「観光者ライセンスという身分を証明するものがありますから」
なるほど。
だから、メルに観光者ライセンスを見せたとき、あそこまで警戒心が解けたんだね。
観光者ライセンス様様ですね。
「そういえば、メル。確か、異世界に行った人とは、帰って来ないだけで連絡は取れているし、無事の確認も取れているんだよね?」
「えぇ。」
「ネロにも確認したいことがあったんだけど。ミシュティは、コスモスの異世界転生装置を通るしかなかったよね?」
「あぁ。」
「異世界転送装置を通るということは、ライセンスが必要であり、ステータスも守る必要があるよね。」
「そうだ。ステータス以上の世界には行けないようになっている。上級魔物がでたりするような危険のある国に関しては、ステータス上級者で無ければ、基本行くことが出来ない。それに、ライセンスを持っているのであれば、どの世界にいるかの追跡が可能だ。異世界転送装置には、渡航履歴が残るからな。」
だとしたら、やっぱり思った通りなのかな。
「異世界に行ったきり、帰ってきていない件なのですが、ミシュティから異世界に行った人たちは、他の世界の文化に触れて、戻ってきていないだけなのでは、と思います。」
「それは、自分の意志で帰ってきていないと。」
グラースさんの顔が曇り、ゆがむ。
うぉぉ…迫力
「そうです。全員がそうとは思いませんけど。」
「ミシュティより魅力があるということですか?」
「いいえ。どちらの文化が魅力的でいいとか、そういうのではないです。ただ、今までミシュティ以外の文化に触れてきていないのなら、異世界の文化は、さぞかし新しく興味をそそられる物だったのではないかと。私も、ミシュティに来て、お菓子の建造物や、生きた飴細工を見たとき、初めて見る物ばかりで楽しかったですし。」
グラースさんって、ほんとミシュティが好きなんだね。
というか、ミシュティの人たちって、自分の世界が好きな人多いのかな?
ベニエさんも、ニコニコしながらミシュティについて話してくれたし。
メルも、真剣に何とかしたいって感じで、私に頼んできてたし。
ここまで、市民に愛される世界なら観光職員の立場から見ても、観光客の立場から見てもいい世界だって分かる。
メルが、新しく飲み物を持って来ようとしてくれる。
グラースさんは、考えているみたいだし、休憩がてら、私もメルの手伝いでもしようかな。
私は、ネロを抱き、立ち上がる。
「メル、私も手伝う」
「えぇ?いいの」
「うん、ミシュティの食文化、気になってたんだよね。良ければ見せて」
「なるほど。調査する気満々じゃない」
「もしかしたら、新たな発見があるかもしれないでしょ?ネロも見せてもらおう」
やっぱり、ミシュティの台所事情が気になるよね。
「ここが、台所ね。」
おぉぉ…
やっぱりお菓子エリアと違って、普通の台所って感じだ。
材料とかは、お菓子を作るものが多いね、やっぱり。
台所でどんなものがあるのか、調査目的で見せてもらった。
普通は、人の家に来てさすがに絶対にやらないけどね。
ん?
台所の隅に大きいツボがある。
中を覗き込んでみると、懐かしい見た目。
ん?
んん?
「ちょ、メ、メル?これ、何!」
私は、慌ててメルの方を向き、ツボを指さしながら聞いた。
「あぁ、それは、異世界に行ったお母さんからのお土産」
ちょっと、待って。
メルのお母さんって。
だから、グラースさんも、メルも頑なに、連絡は取れてるけど、帰って来ないって言っていたのか。
そりゃあ、奥さんが、他の世界の文化に惹かれて、帰ってきていないって、言われたらショックだわ。
うわぁ…、言い方もっとあったかも。
そんな身近な人の話をしているだなんて、思わないじゃん。
すみません…、グラースさん。
それにこのお土産…
どうみても、味噌だよね。
私は、ツボいっぱいの味噌を見て、ニヤニヤが止まらないのであった。
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