479話 また会えるから、寂しくないです
「それでは、私たちは、これでコスモスに帰ることにします。長い間、お世話になりました。」
「それでは、私も観光案内所に戻ります。お二人を送り出さないといけないので。」
「ルアルさん、よろしくお願いします。」
観光案内所では、ルアルさんがお見送りしてくれるってことだ。
「シン、アルビナ嬢、二人を観光案内所まで送りなさい。」
トリウェア女王の声にシン王子とアルビナ令嬢が驚いている。
「俺たちでいいんですか?」
「ここにいる全員で、ゲートの傍まで行くことなどできないだろう。それに、お前たちが一番、世話をかけたんだろ?誠心誠意、見送りをして、また来てもらえるように頼み込んで来ればいいさ。」
これは、トリウェア女王の気遣い再び…かな?
「シン王子、アルビナ令嬢、お願いしてもいいですか?」
「ふ…あぁ、もちろんだ。」
「送っていくわ。」
話もまとまったことだし、さぁ、セレーネギアを出よう。
「本当にありがとうございました。」
私とネロは、食堂内を見渡し、深々と礼をする。
顔を上げて、みんなの顔を見る。
あぁ、慣れない。
なんだか泣けそうになってくるけど、こんな所で泣いてもね。
たくさん笑った顔を見てきたから、私も最後は笑顔で別れて、笑顔の私を覚えておいてもらいたい。
最後見た顔が、泣いた顔なんて、もったいないもの。
「大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫。また会える。そう思えば、寂しいけど、寂しくない。」
「そうかよ。」
ネロが私の肩に乗り、セレーネギアを出る。
すると舟が二隻用意してあった。
「なんで?」
「ルアル、シン、私。それから、チヒロとネロじゃ、舟がきついでしょ?だから、チヒロとネロは、前の舟に乗って、私たちは後ろからついて行くわ。」
そう言われ、私たちは舟へと押し込まれ、舟は出発する。
後ろを見ると、三人も乗り込んで、言っていた通り後ろをついて来ている。
「四人乗り、きつくないよね?」
前もやった気がするんだけど、なんで急に舟の乗車人数を気にする?
「四人じゃない。俺もいるから、五人だろ。」
「そうだけど、ネロは、一人分の幅を取らないじゃない?だから、別にきつくないよなぁって思うんだけど。」
「もしかして、チヒロが大きくなったのかもな。食べ過ぎて。」
ちょっと。
言葉を柔らかくしたところで、言っていることは、お前太っただろ?ってことだよね。
食べ過ぎて…って言葉を付け足した時点で、それは太ったってことでしょうが。
「チヒロ。お前、旅行のたびに食べまくっているだろう?観光職員として、旅行太りをしていたら、今後大変だぞ?」
今度は、はっきりと太ったと言った。
でも、待って。
そんなに目に見えるほど、太った?
プティテーラに来て、体重計なんて乗ってなかったもんね。
というかさ、ネロに食べ過ぎを指摘されたくないんだけど。
なんで、あんなに食べておいて、この猫ちゃんは、サイズ感が変わらないんだ?
ネロの大きさが変わったら、猫にしか見えないネロが、もしかしたら、虎に見えなくもないかも…?くらいに変われるかもしれないのに。
ネロは、一生、子猫のままなのかもしれない。
私は、ネロの肩をポンと叩いた。
「大丈夫だよ。ネロも大きくなれるって。」
「何か不本意なことを想われた気がする。」
ムッとしたネロに、頬をつねられた。
あたたたたた…
「ほら、ネロ。プティテーラの景色を見ないと。」
「そうだな。」
こら、ネロ。
景色を見なさい。
プティテーラとは、しばらくお別れなんだから。
私の頬は、いつでも摘まめるでしょ。
「ネロさーん?」
「なんだ?」
そんなこんなで、私とネロのセレーネギアからの道のりは、賑やかに過ぎていった。
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