478話 プレゼントを選ぶ時間は、贅沢な時間
「それで、チヒロが女王と殿下に、ミサンガという装飾を作ったのだが、ひとついかがだろうか?」
えぇ?
いやいや、この流れで女王様とクヴェレ殿下にミサンガを薦めるの?
しかも、薦め方が店の店員みたいで…しかも今の流れのせいで、悪徳の店員みたいで良くないよ?
「ほう…私たちにもくれるという事か。」
「もしかして、手錠?」
ゴホッ…
「違います。違いますよ?そんな意味で渡したかったわけではありませんから。別にミサンガは、体に身に付けなくてもいいんですよ?よく持ち歩くカバンとかに付けている人もいましたし…そもそも、女王様とクヴェレ殿下に渡すにあたって、体に身に着けてもらうのは、なんか申し訳ない気もしましたし…なので、手錠やら、足枷やら、首輪やら…なんて思って渡す訳では本当にないんですよ?」
女王様に首輪付けるって、どんなよ…
落ち着け…落ち着こう。
「ふーん。」
疑いの目が痛い…
「だからですね…私も貰っていただいた方に、どこにつけたいかしっかりと聞かせてもらいましたし、それに最終的にご自身に付けてもらうようにしているので…私がどうこうできるわけでは、ありません。」
「必死だな。」
誰のせいだ、誰の。
「あははは。」
笑い事じゃないよ?
こんなに私が必死になっているのに、笑っているとは…
「そんなに言わなくても、心配していないさ。誤解なんてしていないさ。」
うわぁ、そのフォロー。
でも、もういい。
「トリウェア、君も揶揄うのが好きだね。」
「クヴェレ、お前も私にのったよな?私のせいにするなよ。まったく。」
「女王も殿下も、ノリが良くて助かる。」
ちょっと?
「それで、チヒロと俺が作ったミサンガを女王と殿下は、貰ってくれるのだろうか?」
「もちろん。貰わせてくれ。」
「しっかり願い事もさせて貰うよ。」
「だとよ。よかったな、チヒロ。」
そうか。
トリウェア女王とクヴェレ殿下も、ミサンガを貰ってくれるのか…
嬉しいかも…
だけど、私の元居た世界の印象を引き換えにしましたけどね。
そして私は、三人がかりで遊ばれたみたいですけどね。
私は、少し不貞腐れながら、袋の中に入ったミサンガを二人に手渡す。
袋の中は、全て空。
無事、作った分を渡し終えることが出来た。
渡し切れるとは、思わなかったな。
トリウェア女王は、渡したミサンガをじっと見つめていた。
「どうかされましたか?」
「いや、これは私のことを考えて作られたものなんだろうと思ってな。」
それは、もちろん。
ミサンガを作るために使った糸の色、編み方、模様に至るまで、トリウェア女王を想像して作りましたから。
「作っている途中から、白熱してしまいまして。女王様の雰囲気は、こうとか…色合いは、こうとか…」
「そうか。やはりいい物だな。」
ん?
「私のために考えられたプレゼントを受け取るというのは、いい物だな。手作り品を貰うとは思わなかったが、悪くない。」
「そうですね。私も何かを貰うのって、くすぐったくなるんですけど、好きなんです。」
だって、手作りの物を作っている時間、それを考えている時間は、その人があげる人の事を考えている時間ということだ。
時間の独り占め、なんて贅沢だろうか。
「そうか、ならばお揃いだな。」
「そうですね。お揃いです。」
さて、ミサンガも渡し終わって、挨拶も済ませた。
「そろそろ、お暇しようか。」
「そうだな。」
「トリウェアのわがままに付き合ってくれて、本当にありがとう。」
「また来い。プティテーラは、お前たち二人を歓迎する。」
そう言ってもらえることは、やっぱり嬉しい。
絶対にまた、プティテーラに来よう。
今度は休暇で。
もちろんネロも連れて。
「ありがとうございました。」
「またな。」
ここは、セレーネギア。
セレーネギアから、異世界転送装置までの道のり。
そこで、しっかりと景色を目に焼けつけておかないとな。
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