475話 コスモスにぜひ来てください
「それで、シン王子とアルビナ令嬢は、ミサンガを貰ってくれるんですか?」
「おいおい、もしかして、俺らはもらえない予定だったのか?ここにいる奴らがもらえて、俺らが貰えないとは、どういうことだ?」
いや、顔が怖いって。
貰ってくれるなら、嬉しいよ。
「もちろん、チヒロ達の手作りが欲しいわ。」
「貰ってもらえるなら、嬉しいです。」
シン王子とアルビナ令嬢に、ミサンガを手渡す。
「コロロヴァードね。」
「はい。プティテーラでよく採れると聞いたので。」
「そうね。でも、こんなに複雑で綺麗な色、見たことない。」
やっぱりそうなんだ。
さすがアピさん。
ベテランの職人さんもいいけれど、若い職人さんの若さだって立派な売りでしょ。
思春期ならではの気持ちの変化がコロロヴァードにも影響するんだって、きっと。
そして、アピさんの心の動きは、複雑だけど、ここまでキレイだなってことなんだ。
「私たちが火の街でお世話になった職人さんです。今日もここに会いに来てくれたんですよ。」
「ほら、あそこ。」
アピさんは、言っていた通り、ファイさんと一緒にセレーネギアのご飯を美味しそうに食べている。
ブラーさんとクラト公子も合流したみたい。
本当に、火の街の人たちって、仲が良いなぁ。
「あれは、フレーブの店の女性店員じゃないのか?」
「そうか。シンは、アピに会ったことがあるんだったな。」
一番初めに火の街をクラト公子に案内してもらった時、シン王子もいたよね。
「アピさんは、フレーブのお店の手伝いをしているんです。アピさんのお店は、繊維を扱っているお店で、このコロロヴァードもアピさんの所で手に入れたものなんですよ。相談したら、一緒に選んでくれました。」
「そうだったのか。」
それにしても、シン王子、よくアピさんのことを覚えていたなぁ。
一回、会っただけだよね?
「クラトが、じっと見ていたからな。ルアルに似ているなとも思ったし、まぁ、それがなくても、プティテーラの民については、できるだけ覚えておきたいだろ?」
いや、私は一世界おろか、一国を背負ったこともないので、出来るだけ覚えておきたいなどという感情は、全く思わないけれど、もし、立場を背負ったとしても、覚えるぞという気持ちはあっても、覚えられるかどうかは、別ではないか?
プティテーラの人口って、そんなに少なくないよね?
「でも、覚えておいて正解だったという事だろう?」
それは、本当にそう。
「ちょっと、シンったら、ズルいわ。私に内緒でチヒロたちと火の街に行ったなんて。」
「え、いや。あれは、材料調達に行かなくてはいけなかったんだよ。そこで、チヒロとネロがフレーブを食べたら、四大料理が制覇できると言っていたから、クラトの案内で、食べに行っただけだ。」
「それだけじゃないわ。シンは、チヒロ達の宿泊施設に何度も訪問していたんでしょ。」
あぁ、それは、そんなこともあったね。
シン王子には、何度ネロを連れていかれたことか…
朝起きたら、ネロがいない…シン王子が来たのかなという方程式が出来上がるくらいには、慣れたものだった。
「ずるいわ。ずるい。それにクラト公子も。ずるいと思うわ。」
グイっと顔を近づけてくるアルビナ令嬢。
え?え?
「ブラー公子も、クラト公子も。チヒロにコスモスに来てと誘われるくらいに、仲良くなっていたのね。私も、シンにうつつを抜かしていないで、二人ともっと親睦を深めればよかったわ。朝に呼び鈴を鳴らして、プティテーラの観光を一緒にしたかったわ。」
いやいや、貴方がシン王子に必死になってくれないと、私たちがプティテーラに長く滞在する理由もなく、既に私たちは、帰界済みだったって。
アルビナ令嬢が、裏でシン王子との関係を引っ掻き回したから、今があるんですって。
あ、あと、シン王子のように、朝に呼び鈴を鳴らすのは、大変迷惑だから、絶対にやめてください。
「そんなふうに言わなくても、令嬢もコスモスに来ればいい。コスモスはきっと歓迎するさ。アスガルたち上層部の仕事は増えるだろうが、上層部は少し仕事をした方がいいしな。」
アスガルさんは、仕事のし過ぎで死んじゃうよ。
追い込まないで上げて。
「いいの…かしら?」
「あぁ、いいだろ。コスモスに観光客が来ることは、観光の世界として、嬉しい限りだしな。どうせなら、シンと令嬢が、プティテーラを治めるようになる前…そうだな。婚前旅行にコスモスに来ればいい。チヒロが案内するさ。」
さっきの仕返しかな?
別にいいけど、さらっと巻き込みやがって。
「婚前旅行…いいな。せっかくゲートを繋いだんだ。」
「まぁ、それならいいわ。チヒロ、よろしくね。」
あ、いや。
私も観光部の職員で旅行者なので、前もって伝えて貰っていないと、コスモスに居ない可能性があるんですけど…
まぁ、いいか。
「はい。ぜひ、お二人のことも案内させてください。」
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