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471話 いい物には人が集まるってことです


「それで先ほどから、配っている紐みたいなものは、なんだ?」

「ミサンガですよ。私とネロから、お世話になった人たちにお礼として、お渡ししているんです。この紐を結ぶときに、願い事をすると、ミサンガが切れた時に願いが叶うと。」


まぁ、運動部とかで死ぬほど練習したりすると、ミサンガが磨り減って切れる。

頑丈なミサンガが磨り減って切れるほど練習したのであれば、願いはかなうだろう…って感じなので、結局は自分の努力だよ…ってことなんだけどね。


「チヒロの世界は、本当にそういう物が好きだよね。」

「そうですね。やるだけやったら、最後は気持ち…というくらいですからね。」


恋愛におけるアクセサリーと一緒で、目に見える物は安心するから。

気持ちという不確かなものを、可視化するには、ちょうどいい物なんだろうね。


「売れそうだね。」


ブラーさんは、ミサンガを見つめながらニヤリと笑う。

本当に根っからの商人なんだから。


「そうですね。でも、この糸、アピさんの所で仕入れているので、もしこのまま売るのでしたら、アピさんに話をしに行かないとダメですけど。」

「アピの?」

「はい。より効果があると思いますよ。気持ち次第でいくらでも変化する、コロロヴァードですから。」


コロロヴァードという糸は、火の街でも売っているみたいだけど、この繊細な色の種類は、アピさんならではの物だと思う。


「なるほどね。」


この後、アピさんの所にでも行くのかな?


「それでさ、僕らにも、そのミサンガくれるの?」

「はい。お二人には、押し付けてでも帰ろうかと思っていました。」

「なんでだよ。」


プティテーラで生活していくうえで、ブラーさんとクラト公子には、遠慮という気持ちが小さくなった気がする。

そんなことを思いながら、ミサンガを二人に手渡した。

そして、二人はミサンガをじっと観察し始めた。

その様子に、フフッと笑ってしまう。

火の街の職人さん達って、本当に面白いよね。

ブラーさんは、プティテーラでの出会いは遅いけど、密度の濃い関わりをしたと思う。

なぜなら、商品開発を一緒にやったくらいだしね。

ブラーさんは、ツンツンツンツンとひたすらツンとした性格だけど、モノづくりに対しては真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐ。

ガラスと向き合うブラーさんは、カッコよかったな。

もちろん、職人さんたちを支えるクラト公子も。


「プレゼントした物なので、好きに使ってください。もちろん、解体してもいいですよ。」


私がそう言うと、クラト公子とブラーさんは、ぎくりと体を震わした。

まぁ、作り方を知るには、それを解体するのが手っ取り早いからね。


「ちなみになんですけど、クラト公子。ルアルさんにもミサンガを渡してあるので、もしかしたら、お揃いかもしれませんね。」

「え?あ、いや。」

「ルアルさんは、何をお願いしながら、ミサンガを結んだんですかね?」

「いや…あぁ、そうだな。」


作り方くらいメモを置いていってもいいのに。


「このミサンガは、ありがたく貰うよ。」

「僕もチヒロとネロが作った物を壊す訳がないだろ?」


いや、本当にそれはどっちでもいいんだけどね。


「ブラーさんのお店は順調ですか?」

「あぁ。前にも言った通り、単体売りも好評だからね。それに、謎の大口から注文が入ったりもしたんだ。今見て、気が付いたけど、リカ様とリオ様もミルキーウェイを持っていた。その影響もあったのかもしれないな。」

「リカちゃんとリオ君、ボトルを大切に持ち歩いてくれているみたいですしね。本当に良かった。」


すると、ブラーさんがじっと私の方を見てきた。


「なんですか?」

「これを狙っていたの?」


これ?

あぁ、リオ君とリカちゃんの事だろうか。


「リオ君とリカちゃんのことを言っているのであれば、たまたまですよ。たまたま会って、リカちゃんとリオ君の目にあのボトルが留まった。いろんな人の目に入るように、ボトルを身に着けていましたが、あの二人の目に留まったのは、運が良かったというより外にありません。」

「確かに、ボトルを渡したときは、殿下の甥っ子姪っ子ということを知らなかったしな。あくまで、夫人の知り合い程度の認識だった。二人の恰好から、良いところの坊ちゃん嬢ちゃんだとしか思わなかったな。」


それに、ここまで二人があのボトルを気に入っていることも知らなかったし。


「もしいい方向に転んでいるのだとすれば、あのボトルがいいボトルだからですよ。」


いい出会いをしても、いい物を売っていなければ、人はつかないだろう。


「そう。」


少し照れたように顔を背け、ミサンガを握りしめるブラーさんはとても可愛かった。

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