470話 好きな人に迎えに来てもらえれば、それはお姫様ってことでしょ?
リカちゃんとリオ君がクヴェレ殿下の所へ走って行った。
「相変わらず、販売上手だね。」
「口がうまいとも言う。」
…ブラーさんとクラト公子。
リカちゃんとリオ君といる所、見られていたのか。
ついでに、話もしっかり聞かれていたらしい。
「販売上手というよりも、今、あの二人の想像したものを壊すのはどうかと思いました。」
それに、二人の願いが本当に叶うのだとすれば、私とネロは二人の魔法使いのままだしね。
「私は、願いを叶える魔法使いではありませんが、願いを叶えるために、ほんの少しだけ背中を押すことはできます。ちょっとだけ踏み出す手助けができます。それって、本当に魔法みたいでしょ?」
踏み出すことが出来なかったあと一歩を、私が作ったミサンガやブラーさんが作ったボトルから得て貰えればいいなと思う。
それを見たら、勇気を貰える…願掛けってそういう物でしょ?
「あくまで願いを叶えるのは、自分だということか。」
「そりゃ、そうですよ。いつの間にか叶ってしまった夢よりも、必死になって掴み取った夢の方が、大切にできる気がしませんか?」
まぁ、その必死になるという行為自体が難しいんだけどね。
その願いが不確かなものであればあるほど、必死になんてやってられないだろう。
「なるほどな。チヒロの考えは、分かった。それで?」
「ん?」
さっきまでの空気から一転。
ちょっとあたりが寒くなったような?
「それでとは?」
「さっき見たぞ。ルアルの手の甲にキスをしているの。」
「い…」
そこを今、ツッコんでくるの?
「あれは、なんだ?」
「…あれは、ですね。」
「ルアルが王子様にエスコートされたいとチヒロに言ったから、チヒロはルアルの願いを叶えた。ルアルもお姫様気分を味わえたと大満足だったみたいだな。」
ネロさん?
何を言っているのかな?
「ルアルはお姫様になりたいのか?」
いや、どうだろう?
クラト公子が暴走しないといいけど。
この公子、格好つけたがりだから。
「俺も王子様になればいいのか。」
絶対に違う。
「あの、大切な相手から迎えに来てもらえれば、それはお姫様なのでは?別に何とも思っていない相手から、お姫様扱いされたところで、何とも思わないと思うんですけど。」
「でも、チヒロに対しては、満足していたのだろう?」
おバカさんか?
「あれは、流れの一環ですよ。ルアルさんは、お姫様の気分を味わえた。私が本気でルアルさんをお姫様扱いしても、喜びませんって。」
だって、ルアルさんがお姫様扱いしてほしい人は、私じゃないんだし。
この公子は、なんでショックを受けているんだか。
「そんなに気になるなら、クラト公子がルアルさんのことをお姫様として扱ってあげればいいのでは?クラト公子は、本気で王子様になれるんだし。」
「な、何を言っているんだ。」
クラト公子は、本当に恋愛が絡むとポンコツを発揮する。
その他は、頼りがいのある人なのに。
あ、でも、最初に会った時は、凄くチャラそうと思っていたんだっけ?
実際に会ってみて、しっかりしていて、真面目だということが分かったんだ。
なんだかんだ言って、プティテーラ滞在中に一番一緒に居たのは、クラト公子かもしれない。
一週間の滞在を延長した時もしかり、プティテーラの案内しかり。
火の街に行ったときに、クラト公子の人柄に触れて、この人は人に好かれる人だと思った。
まぁ、火の街の人たちが、あれだけ会うたびに、クラト公子に声をかけるんだから、そう思うしかないんだけど。
「クラト公子には、ブラーさんから貰ったボトルが背中を押してくれますよ。」
「他人事みたいに言って。」
「まぁ、他人事だろ?」
ネロ、容赦ないな。
その通りだけど。
「他人事だが、うまくいって欲しいとは思っている。」
そして、落としてあげる天才かもね。
クラト公子は、ネロを捕まえてよしよしと頭を撫でていた。
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