467話 あくまで願掛け、補助アイテム
「ネロ君に聞いても、何も答えてくれなくて。」
「ちなみに、ネロは何と?」
「お礼を渡していただけだ…って。」
いや、それが正解です。
特に深い意味があって、跪いていたわけではないんです。
そうか…
足元にしゃがむ行為って、こんなにも目を惹く行為だったのか。
普通に足元に落ちた物を拾ったりするときの感覚があるから、気にしてなかったけど…
公爵という立場は、目の前に跪かれる立場の人達か…
元居た世界で読んだ、令嬢物も跪いて何かを報告している人たちいたなぁ、そういえば。
それに、王様への挨拶のための謁見も跪いていた気がするわ。
「プティテーラでは、人の前に跪く行為って、何か特別なんですか?」
「いいえ?」
違うんかい。
「でも、そうそうする行為でもないでしょ?だから、何をやっていたのか気になる訳よ。」
あはは…
この後もこの説明をし続けるのだろうか?
でも、ミサンガを説明するきっかけになっている訳だから、悪いことばかりではない。
ロゼ夫人が話のターゲットを私に変えたことにより、ネロがロゼ夫人の元を抜け出し、私の肩の上まで飛んできて乗った。
おつかれ、ネロ。
「本当に、お礼の品を渡していただけなんです。これなんですけど…」
袋からミサンガを取り出して、ロゼ夫人とバルドル公爵に見せ、説明する。
「皆さん、足首に付けると言っていたので、私とネロが仮結びをするために、足元にしゃがんでいただけなんです。ちなみに、王子様や騎士の真似をしていたのは、こういうモノって憧れるよね…という話の延長でやらせていただいた事です。」
私がロゼ夫人に説明をすると、ネロが横で首を縦に振っている。
そんなに振っていると、首取れるよ?
「そうなんだ。お礼の品…いままでの人たちは、全員、受け取っているの?」
「はい、貰っていただきました。」
「ねぇ、私も欲しいって言ったらくれる?」
貰ってくれるの?
「ロゼ夫人も貰ってくれるんですか?」
「いや、私はチヒロちゃんたちにお礼をしてもらえるほど、何かしたわけではないじゃない?でも、チヒロちゃんたちが、作った物をみんなが受け取っているのが羨ましくて。」
羨ましいって言われるほど、高価なものでもないけれど…
気持ちはたくさん詰まっていますよ。
なにせ、糸はそれぞれの人たちをイメージして、しっかりと選びましたから。
「実は…材料を選んでいる時にですね。ロゼ夫人とバルドル公爵のイメージにぴったりの糸を見つけてしまいまして、作ってあるんです。このまま持ち帰るのも嫌だから、どうやって話を切り出そうか悩んでいたんですけど…ロゼ夫人にそう言ってもらえて、きっかけが出来ました。」
「貰う。貰いたい。うわぁ、いいわね。こういうプレゼント。」
ロゼ夫人が、はしゃいでいらっしゃる?
「嬉しいんだろうな。ロゼは。」
そんなに喜んでもらえるのであれば、作って良かったと思うけれど。
「もしかして、ここにいる全員分あるのか?」
「…内緒にしてくださいね。」
「トリウェアやクヴェレに手作りのプレゼントを持ってくる者がいるとはな。」
ですよねぇ。
私もどうかと思いました。
ネロにも言われたし。
「でも、いいんじゃないか。」
「ちなみに、バルドル公爵は、貰っていただけますか…?」
「あぁ。ありがとう。」
う、受け取ってもらえました。
やりました。
「これは、どこに付けてもいいのか?」
「はい。ご自由にどうぞ。邪魔にならないようなところに付けて貰えれば。あ、でも、付けていて邪魔になるようでしたら、切っちゃっても大丈夫なので。」
「それでは、願いが叶わなくないか?」
まぁ、ミサンガに願うことは、あくまで願掛けみたいなものだし…
生活に支障が出るくらいなら、ミサンガを切ってもいいと思う。
「願いを叶える補助アイテムだと思っていただければ、大丈夫だと思います。」
「そうか。分かった。」
そうして、バルドル公爵は足首に、ロゼ夫人は手首にミサンガを結んでいた。
なんか、みんなお揃いでミサンガを付けているみたいになってきたな…
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