461話 私にはネロの、ネロには私の…
「そうだ…これ。私たちからです。」
アピさんとファイさんから、手渡されたもの。
編みぐるみ…しかも猫?
ネロの方は、女の子。
「チヒロさんには、ネロ君を。ネロ君にはチヒロさんをモデルに作らせてもらいました。」
「首元についている刻印は、俺の手作りです。明かりの刻印を首元に付けさせてもらいました。」
すげぇ…
ネロの再現度高いな。
「あれ?でも、私たちが帰ること、ここに来てから知ったんですよね?どうして?」
「チヒロさん達に、私たちも何かお礼がしたくて、コツコツと作っていたんです。」
「それで、ちょうど、さっき完成したんですよ。そういった意味ではタイミングがバッチリでしたね。渡せてよかったです。」
いやいや…
これ、受け取れて、本当に良かった…
嬉しいなぁ…
「なぁ、チヒロはもっと間抜け面じゃないか?」
どういう意味よ。
「ネロだって、ずいぶん可愛く作ってもらったよね。」
「あぁ、確かに可愛いな。」
褒めている訳じゃないんだけど?
「本当に仲が良いですよね。」
「二人に何かを渡すなら絶対にお互いの人形って、アピと二人で即決しましたよ。」
そんなに、でしょうか?
「さて…」
アピさんは、周りを気にしつつ、私たちの方を見た。
どうかしたのかな?
「このままでは、お二人をずっと、独占してしまうことになりますね。」
ファイさんも、苦笑いをする。
「周りの視線も痛くなってきたので、僕たちは、何か食べてくることにします。せっかくセレーネギアに来たので。」
周りの視線…
あはは、アピさんとファイさんに跪いていたのも、見られていたかな?
「ちなみに、お二人が私たちの前にしゃがみ込んだときが一番、見られていましたよ。」
やっぱりか。
「女性の前に跪くことなんて、そうそうにないのでいい経験でした。」
「やめてくだいよ。」
「ファイは、俺ですまなかったな。」
「いや、ネロ君でよかったです。女性が目の前にしゃがむなんて、耐えられません…」
ファイさん、ガチテレじゃないですか。
これならば、ファイさんが私でもよかったかもしれない。
「俺がアピの足首に触れることなんて、出来ないからな?」
あぁ…完全にセクハラだわ。
うん、無理だね。
これで正解。
「私も耐えられなかったので、チヒロさんで良かったです…」
そして、アピさんも真っ赤と…
二人とも照れ屋だねぇ。
可愛いです。
「きっと、この後、しゃがんでいた理由を、たくさん聞かれちゃいますよ?」
「頑張ってくださいね。」
どうせ、みんなにミサンガを配る予定だから、聞かれて困ることもないけど…
「それじゃあ、ご飯食べてきますね。」
「本当に、ありがとうございました!」
アピさんとファイさんが、私たちから離れていく。
こうやって、どんどんお別れが済んでいくんだろうな。
皆に挨拶ができると喜んだ反面、寂しい気持ちがどんどんと出て来てしまう。
それに、トリウェア女王たちが、本当に挨拶の場を用意してくれて、みんなを呼んでくれると思わなかった。
「私たちも、貰っちゃったね。」
「そうだな。」
ネロの人形か…
アピさんが編んでくれたんだろうな。
首元の刻印は、明かりだと言っていた。
ベッドの傍に置いたら、ベッドランプになるんじゃない?
「私のモデルの人形、大事にしてよね。」
「うるさい。アピやファイがお礼でくれた物を粗末に扱う訳がないだろ…」
私にネロ人形はともかく、ネロに私モデルの人形を渡すとは、思わなかった。
「コスモスに帰ったら、デスクの上に置いておいてもいいよ?」
「ふざけんな。そんなことする訳ないだろ。」
アルバートさんやフェリシアさんが、とても面白がりそう。
そのことを想像しているのか、若干、ネロはゲンナリ気味である。
でも、ギュッと私モデルの人形を握っている様子に、ちょっと驚いてしまったけど。
私があげたわけでもないんだけど…なんか照れくさくない?
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!