460話 ミサンガは簡単に切れないんですよ
「チヒロさん!」
一番後ろからついて行き、食堂に着くとそこには私がプティテーラで知り合った人たちがいた。
「アピさん!ファイさん!」
「チヒロさん、会えてよかったです。」
アピさんとファイさんも来てくれたんだ。
「私もお二人に会えてよかったです。来ていただけて本当に嬉しいです。」
「私たちもチヒロさんと、ネロ君に会えて嬉しいです。」
「とは言っても、…私たち突然ここに案内してもらって。」
え?そうなの?
「ここに来てから、チヒロさんとネロ君がコスモスに帰るので、最後の挨拶を…という話を伺って…」
えぇ?
本当によく来てくれたな…
「セレーネギアに招待されることなんて、なかなかないので…驚きました。」
ですよね。
そりゃ怖いわ。
私もセレーネギアに来るとき、ドキドキだもん。
突然、お呼ばれしたら驚きもするわ。
「でも、呼んでもらえてよかったです。」
「僕もです。チヒロさんと、ネロ君に挨拶ができるので。」
アピさんとファイさんには、火の街で本当にお世話になった。
それに、婚約パーティ時のドレスも。
ファイさんは、知り合って間もない私たちのために、火の街を案内してくれた。
ファイさんが、火の街を案内してくれたことで、火の街の人たちともたくさん出会うことが出来た。
それに、ファイさんのお店の刻印は、ナトゥラ探検で重宝したんだよなぁ。
あれがなかったら、ナトゥラの洞窟内で飢えていたし、暗闇で前に進むこともできなかっただろう。
アピさんは、美味しいフレーブにコロロヴァード、火の街の物を教えて貰った。
文化や名産を知りたかった私たちにとって、助かる存在だった。
コロロヴァードは、お礼の品にも選ばせてもらったしね。
「チヒロさん達、帰ってしまわれるんですね。」
「もっと、いろんなお話がしたかったです。」
私も。
私も、もっとお二人と話をして、もっとプティテーラのことを教えてもらいたかった。
アピさんが作ったフレーブを食べて、火の街散策。
ファイさんのお店に行って、刻印を見て、その後にアピさんのお店に行って、お店のお手伝いなんていうのも、いいかもしれない。
「チヒロ。」
「うん、分かっている。」
大丈夫。
ネロ、ちゃんと分かっているよ。
「アピさん、ファイさん、足を出してもらってもいいですか?」
「足…ですか?」
「これでいいですかね?」
私の訳の分からない言葉にも、戸惑いながら頷いてくれる。
そして、私がアピさん、ネロがファイさんの足の前にしゃがみ、滞在中にコツコツと作ったミサンガを巻いた。
足首に巻いている時は、周りを気にして、立ってくださいと二人は言っていた。
「これは?」
「紐ですか?」
まだ完全に縛りきっていないミサンガが付いた足を見つめながら、首を傾げた。
「ミサンガって言うんです。これ、私とネロからのお礼なので、受け取ってもらえると嬉しいです。」
「え?」
「貰ってもいいんですか?それに、この、みさんが…私のお店の…」
さすが、お店の店員さん。
是非、貰ってほしい。
一生懸命に作ったしね?
「はい。コロロヴァードを使って作らせてもらいました。アピさんのお店で買ったものをアピさんにプレゼントするって…なんかおかしい感じがするかもしれませんが。」
「いえ、嬉しいです。こういう風に使ってもらえるなんて、本当に嬉しい。」
しゃがみこみ、足首を見つめるアピさんは、喜んでくれているみたいだった。
「途中まで結んだんですけど、最後はぜひご自身の手で結んでほしくて。」
「なんでですか?」
「ミサンガは、私の故郷にあるアクセサリーなんですけど、縛るときに願いを込めてミサンガを結ぶんです。そして、それが切れたとき、願いが叶うと言われているんですよ。」
アピさんの疑問に答えると、アピさんは目をキラキラさせながら、ミサンガを見つめてくれた。
「もちろん、作るときに私とネロの気持ちは、たくさん込めておきましたので、きっと叶うはずです。」
「そんなこと言っていいのか?」
ネロ君。
なんで、水を差すようなことを言うのかな?
「まぁ、でもそう簡単に切れない様に、ミサンガを編むときに固く編んだからな。ミサンガが切れそうもないくらいに。」
…そんなことは、言わなくてもよくない?
「だから、それが切れた時は、確かに願いが叶いそうではあるな。とびっきりの願い事をすればいいさ。」
素直じゃないねぇ。
「ふふ。ありがとうございます。大切にしますね。」
「そうですよね。簡単に叶うようなことを願ってもしょうがないですよね。とびっきり大きいお願い事をしますよ!」
このミサンガで、二人の願いが叶いますように。
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