458話 トリウェア女王のイタズラに翻弄されて
女王様を先頭に、食堂へと向かう。
私は、取りあえず、案内されるがまま、一番後ろからついて行くことにした。
「大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫。驚いたけどね。」
「お前、カエルは平気だったのか?」
手には、まだあのカエルさんの感覚が。
「カエルは別に嫌いではないけど、最近は触る機会なんて全くなかったからね。」
小さい頃は、跳ね回るカエルを追いかけて、田んぼ道を駆け回ったものだ。
もちろん、カエルだけではなくて、トンボやセミなんかも。
大量にオタマジャクシを捕まえて、虫取りカゴが真っ黒になったことも。
そして、今日の収穫として見せに行くと、少しこわばった声が聞こえたものだ。
今思うと、気持ち悪かったのかなって感じた。
私も、今じゃカエルは触ることすらしないし、トンボとセミを見ると、背筋がゾッとする。
いつの間にか、虫が苦手になっているみたいだった。
何をされたわけでもないのにね。
「…いや、カエルでよかった…」
「いや、その顔は良かったという顔ではないよな。」
いや、カエルでよかったと思う。
トリウェア女王が言ったように、蜘蛛が自分の手についていたら、私はゾッとしたまま動けなくなっていただろうから。
「トリウェアが、すまないね。」
「クヴェレ殿下。」
さっきの出来事を振り返っていると、私たちのことを気にして、クヴェレ殿下が歩くスピードを遅くし、私たちの方へと来てくれた。
「いえ、驚きましたけど、大丈夫ですよ。」
「いや、ああいうイタズラは、生理的に無理な人もいるだろ?」
あぁ。
そりゃあ、いるでしょうね。
「君たちにトリウェアと会ってほしいと言ったのは、私とシンだからね。トリウェアのせいで、嫌な思いをさせてしまったら、申し訳ないだろう?」
「私は、驚きすぎて、あのタイミングの事をいまいち覚えてなくて…」
さっきの事だというのに、本当に驚いて記憶が飛んだというか…
「ただ、悪意のある行動である…とは、感じなかったし、あのトリウェア女王の行動を見ていると、本当にイタズラだということが分かります。それに、仲間外れ…と言っている女王様は、なんだか可愛らしかったからですかね…?絆されてしまいました。」
まぁ、これが、どこぞのよく分からないやつが、同じようなことをしたら、睨みつける案件だということは、間違いないんだろうけど。
女王様の性格や、振る舞いに、無邪気な人だなぁ…と思ってしまったのだ。
「本当に大丈夫かい?」
「はい。ここで嘘をつく理由がありません。あ、でも、驚いたし、今でも感覚は鳥肌物なので、二度目は勘弁願いたいですけどね。」
「はは。それは私が、トリウェアの行動を責任もって、止めさせてもらおう。」
そう言ってもらえると、ありがたい。
「ありがとう。」
すると、クヴェレ殿下の方からも、お礼の言葉が聞こえる。
一体、何に対するお礼なのだろう。
私は、分からなかったけれど、クヴェレ殿下があまりにも優しく微笑むから、お礼の意味を聞くタイミングを逃してしまった。
「さて、私が君たちを独り占めする訳に行かないからね。それじゃあ。」
クヴェレ殿下が私たちの元を離れ、また前方を歩きだした。
クヴェレ殿下の背中を見つつ、首を傾げる。
「最後のあれ、何のお礼だったんだろう?」
「女王を嫌わないでくれて、ありがとう…とかか?」
「クヴェレ殿下が、なんでトリウェア女王に対しての好き嫌いにお礼を言うのさ。」
「そんなことは、知らない。」
そんなバッサリと切らなくてもよくない?
今、私の話を聞いてくれる流れじゃなかった?
「チヒロ。」
「シン王子。」
そして、入れ替わり立ち代わり、私の所に来てくれる人たち。
「どうかされました?」
「いや、すまん。」
謝罪…
トリウェア女王の事だろうか?
「あの、なぜそんなに謝罪を?」
「普通の女性は、ああいう歓迎を好まないだろう?母は、もしかしたら、チヒロ達にもやるかもしれないと思っていたが、本当にやるとは…」
まぁ女性に限らず、カエルや蜘蛛は、苦手な人たちは多々いると思うけど。
「面白い歓迎をしてもらったと、思っているので大丈夫です。」
と、私はシン王子に向かって笑いかけた。
気にすることないと、伝えたかったのだけれど、目の前にいるシン王子の顔が引きつっているため、何か失敗したのだろう。
「すまん。」
「あの、本当に大丈夫なので。」
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