456話 女王様はやっぱり美しいんだよなぁ…
な、な、な、なに?
手がぬるって…むにゅって…
にゅめにゅめって…
女王様の手を慌てて離したら、なんか手の平にくっ付いているし。
そしたら、カエルが…
ううぅ…
「あははははははは」
うへぇ…?
手の感触が忘れなくて、そこを見つめていると、頭の上の方から笑い声が聞こえてきた。
とても愉快そうに笑う声が…
「あの…」
「あははははははは」
「えぇ…?」
そこにいるのはもちろん、先ほど私が手を振り払った女王様がいるわけで…
そんなに笑われるようなことしましたか?
爆笑していています、この女王様。
あまりにも緊張していて、周りが見えていなかったが、今は分かる。
女王様の爆笑につられるようにして、周りの空気が和み、クヴェレ殿下やロゼ夫人は、バレない様にクスクスと笑っていて、シン王子やバルドル公爵は、やれやれといった風に私と女王様を見つめている。
私は、もう一度、少し湿った自分の手を見た。
カエル…
私の手にくっついたカエル…
握手した時に感じたわけだから、まさかだけど、いや、それしか可能性がないのだけれど、もしかして、この女王様の手の中にカエルがいたってことだよね?
「最近は、そんな反応をしてくれる奴がいなくてな。いやぁ、新鮮だった。いい反応をしてくれるなぁ。」
もしかして、カエルの握手は、故意…?
なんてことをしてくれるんだ。
心臓が飛び出るかと思ったんですが?
「こら、トリウェア。チヒロさんが困っているよ。」
そして、いまいち状況が掴み切れていない私に助け舟を出すかのように、クヴェレ殿下が私たちの方へ歩いて来てくれた。
「あの…?」
「あぁ、すまないね。トリウェアって、こういう所があるんだ。」
いやいや、こういう所があるんだ…で片づけていい問題ですか?
「いやぁ、本当にすまないね。あそこまでの絶叫を聞くのが久しぶりなものでな。クラトにもやったのだが、それ以来警戒されてしまうし。」
「当たり前でしょう。どれだけ驚いたと思っているんですか?」
「クラトも一番初めの頃は、良い反応だったのだがな。」
「勘弁してください。」
クラト公子もやられたんだ、これ。
「シンやナンナルは、もう慣れてしまったし、アルビナ嬢はそもそもカエルが好きだからな。」
カエルが好きだとしても、この状況は驚くでしょ…
いきなり手にぬめっとした感覚が来るんだよ。
シン王子とナンナル王子の慣れって、どれだけやられればそうなるの?
「昔は、バルドルがいいカモだったんだが…」
「だれが、カモだ!」
バルドル公爵がカモられていたんだ…
「今じゃ、相手にしてくれる人がいなくてな。助かったよ。」
なんだろう。
お礼を言われたと思うんだけど、なんだか不本意だ。
「トリウェア女王は、イタズラ好き…それにしても、なぜカエル?」
「なんだ?蜘蛛の方が良かったか?」
想像しただけでも、鳥肌が立つ。
「いえ、カエルでよかったと心から、思っているところです。」
「そうか。驚き大作戦成功だな。」
違う意味で、驚いたんですけどね。
あの凛々しい女王様は、一体どこに行ったんだ。
女王様の顔をちらりと見る。
「なんだ?」
いや、でも…
カッコいいんだよなぁ…
私は、心の中で、今の状況とトリウェア女王の存在に葛藤する。
ギャップ萌えとは、よく言うけれど、これってある意味ギャップ萌え?
そして、今の女王様なら、拗ねるわがままを言う、などなどクヴェレ殿下やシン王子たちが言い残した謎の言葉たちに納得が出来そうだ。
この女王なら、拗ねるだろうなぁ。
さっき、イタズラが相手にされないと拗ねていたから。
「さて、改めて。クヴェレから聞いていたと思うが、」
さっきと同じ言葉に、体が反応する。
「ふふ…」
そして、体がびくついたことが女王様にバレた。
恥ずかしい。
「会いに来てくれて嬉しい。チヒロ、そしてネロ。」
あぁぁぁぁ…
全てがなかったことになるような、この存在に私は心の中でため息をついた。
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