454話 ネロのおかげで…?
本当にこの格好で大丈夫なのだろうか…?
なんか、セレーネギアに入るのって、ただでさえ緊張するからさ。
ドレスや化粧で、自分の気合を…とか考えていたことを思い出す。
そんな心配をよそに、舟はセレーネギアまで私たちを運び、そして、目の前で降ろされた。
うむむむ…
「なに、変な顔をしているの?トリウェア女王をこれ以上待たせると、申し訳ないからね。チヒロ、行くわよ。」
私の心配をよそに、アルビナ令嬢は、私を容赦なくセレーネギアの方へと引っ張っていった。
あぁ…
「いい加減、覚悟を決めろって。」
クラト公子も引きずられる私を見て、笑いながら先に進んでいく。
いや、もうこの際この格好でもいいよ。
この向こうに女王様がいると思うと、足が重くなるんです。
「チヒロの王族ビビり症は何とかなったんじゃないのか?」
何とかなる訳がない。
「あら、チヒロは、王族が苦手なの?」
「意外だな。そんなふうには見えなかった。」
そんなふうに見せていたら、小物だと思われてしまうでしょ。
頑張って意地を張っていたんです。
「普通、見ず知らずの土地で、苦手なものを苦手ですって、アピールはしないですよね…」
「苦手なものは隠そうとしても、案外分かるものよ?」
「それに、苦手というより、今までそういう人たちと関わることがなかったので、慣れていないんです。だから、緊張してしまって。」
日本人、平凡な大学二年生。
魔法もなければ、戦いもない。
そして、王女様も女王様も縁がない、ただの人。
それがさぁ、いきなり異世界に飛んで、王族の人たちと交流を持つなんて、緊張しない方がおかしい。
「それにしても、コスモスに来たときは、馴染んでいたよな。」
「いやいや。あれは、完全にキャパオーバーだったよ。そして、怒涛の日々によって、緊張する暇もなかった…ってだけでしょ。」
でも、あわあわとして何もできない…なんてことは、なかったなぁ。
…いや、泣いたか?
でも、割とすぐに復活したかも。
なんでだろ?
見知らぬ土地だったのに。
あの時、私のことを誰も知らない土地に行きたいって思って、その願いが叶った。
叶うと思わなかったことが、叶った。
だからかな?
あ、でも、一番初めに思った事は、ネロの目が綺麗だったってこと。
そして、寂しくなった時も、ネロが力を貸してくれた。
…うーん。
私はネロの方をチラリと見た。
「なんだよ。」
うーん。
ネロのおかげかなぁ…
ネロのおかげで、緊張も異世界に対する恐怖も薄くなったんだろうな…
今は、恥ずかしいから、ネロに言わないだろうけど、今度、何か言うきっかけがあったら、ネロに言おうかな。
だから今は、内緒。
「なんでもない。」
「え?今絶対に、心当たりがあったという顔をしていたわ。」
「そうだ。何か思い浮かんだだろ?」
「き、気のせいです。」
私は、アルビナ令嬢の手から抜け出し、自分で歩き出す。
「やっと、ちゃんと歩いてくれる気になりました?」
「歩きます。はぁ、緊張する…」
パーティの時に会った、トリウェア女王のことを思い出す。
目を離すことが出来ないほどの美しさと存在感。
威厳ある佇まいに、凛とした立ち姿。
そして、何よりも…全てをはいと言ってしまいそうな、芯のある声。
いや、マジで…
女の私から見てもカッコが良いんだよな。
そう言った意味でも、緊張します。
「そんなに緊張しなくても…って言っても無理でしょうね。でも、そんなに緊張していると、トリウェア女王が面白がるわよ?」
面白がる…とは?
「あー…あれはなぁ。いや、むしろ新鮮な反応が見られるかもしれない。存分に緊張していけばいいさ。」
「それは、一体どういう意味ですかね…」
そう言えば、クヴェレ殿下もシン王子も、よく分からないことを言っていたな。
拗ねるとか…?
面倒くさいとか…?
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